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『グッド・ドクター 名医の条件』は自閉症でサヴァン症候群の天才的頭脳を持つ若者ショーンが外科医になったらを描いた医療ドラマだ。ドラマの中のBased on...という注意書きや字幕サイトのThe Good Doctor(US)というカテゴリを見ると分かる通り、原作ドラマが他にある作品。多分韓流ドラマを米国でアレンジしたんだと思う。ストーリーは自閉症でコミュ障のショーンがとある病院に招かれるところから始まる。当日理事会では院長がこの若者を雇うという決定をしたことに対する疑義が他の委員から出て喧々諤々。自閉症に手術させるなんて、何かあったら病院の評判に傷がつくというお馴染みのやつだ。ショーンは当然のごとく、病院へ向かう途中急病の患者を助けて、病院のお歴々を納得させる。しかし、配属されたチームメイトや患者とのコミュニケーションがうまく取れないため、騒動を引き起こし続ける。そんな彼が人間として成長する軌跡を追うのと共に、タイトルにもなっている通り、良い医者とは何か?全知的能力があるだけでいいのかを追う作品だ。

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一言で言えば、ビッグバン★セオリーのシェルドンが医者になり、コメディでなくシリアスな人命に関わるドラマに出ていると思えばOK。ついでに、This Is Usのフラッシュバックが所々に入って、彼の過去が浮き彫りにされていく設定だ。現に、病院院長とは14歳の時に個人的な付き合いがあったことが示唆される。さて、このフラッシュバックが曲者だ。なにせ手術の前など重要場面に入るため、そしてフラッシュバック中はショーンが上の空になるため、人命がかかっているのにぼーっとしてる描写になってしまう。つまり視聴者はヒヤヒヤ、ドキドキする。そしてフラッシュバックの描写が下手くそなため、実際は数十秒のぼんやりなのだろうが、数分にも感じてしまう。例えば、臓器移植で別の病院に肝臓を受け取りに行く描写が典型的だ。ヘリで往復するのだが一難あって帰りはパトカーで先導してもらうことになる。当然一刻を争う事態なので即帰るべきなのだが、あろうことか乗車する前にフラッシュバックが発生する。視聴者一同はよ乗れと画面の前でツッコミを入れたくなるシーンになってしまう。またシェルドン的な彼が人命を預かることになるため、彼の自閉症由来の欠点が相当視聴者をいらつかせてくれる。皮肉が全く通じなかったり、天才的推察力で患者の腫瘍が悪玉であることを患者の前で大声で指摘するなど、コメディでは笑えてOKなことがここでははっきり裏目に出てしまっている。見せ方をうまくすることでなんとかなるはずだが、最初の方のエピソードを見る限りそこに希望は見られない。ただし、この2つの欠点を大目に見れば、このドラマは十分及第点が付けられる良質のドラマだ。当然のごとく、病院理事会内での権力闘争や病院スタッフの浮いた話、毎エピソードスゴイ特殊な患者が2人出て来てこの病院の医者達を悩ます。ショーンは持ち前の観察力と知識で本当の原因を推察したりうまい代案を提案したりすることで貢献する。この時使われるCG描写(本から取ってきた臓器の絵や病状の一節などがショーンの目前に浮かび上がる)がちょっと陳腐に感じられるが、彼が持ち前の知識を引き出し、ソリューションを考え出しているシンキングタイムと思えばなんとかなる。またショーン自身も病院での経験を踏まえて急速に成長していくので、苛つくのは最初だけかもしれない。ちなみに手術の描写がかなりリアルで、血はもちろんお腹をメスで切ったり臓器を取り出したり、出産前の胎児まで出て来る。これにはグロ耐性がないと視聴はキツイかもしれない。多分将来的にはシェーンの不器用な色恋沙汰も描かれるであろう。実際、アパートの隣人の女性とは何か起こりそうな展開になっている。色々不満を書いてしまったが、期待の裏返しと思ってもらえばいいかな。いずれにせよ、自閉症を描いた映画アカウンタントなんかが好きな人には間違いなく面白く見れると思う。IMDbで★8.5なのも納得の出来だ。英語はさすがに医療関係の専門用語は全く分からないが、毎回すごい手術をしていることは伝わってくる。だいたいハッピーエンドだが、アメリカの医療費のべら棒さを思うと、手術後請求書の0の数に驚く患者を想像してしまう(笑)