full of curiosity,

she hurried across the field after it,

and was just in time to see it pop down

a large rabbit-hole under the hedge.

Alice's Adventures Under Ground by Lewis Carroll

文字通りの意味「ウサギの巣穴」

まず、普通rabbit holeと言ったらウサギの巣穴のことですね。

『ヒルダの冒険』では、フリーダがウサギの巣穴にハマりました。

Well, that’s what you get for using an old rabbit hole instead of a proper vittra tunnel.
アニメ『ヒルダの冒険』で、フリーダがウサギの巣穴にハマる
Hilda [Credit: Netflix]

『不思議の国のアリス』の意味での「Rabbit Hole」

更に、ここで是非思い出してもらいたいのは、もちろん『不思議の国のアリス』ですよね。一般教養として。

アリスに関しては、以前文法的に不思議なcuriouser and curiouserというのを記事にしましたので、そちらもどうぞ。

『不思議の国のアリス』のアリスといかれ帽子屋
Image by Prawny from Pixabay

そんな児童文学『不思議の国のアリス』では、アリスが時計を持って急いでいる不思議なうさぎを追い掛けていたら、いつの間にかrabbit holeに入り込み、そこを落下していって不思議の国にたどり着いたのでした。

そんなわけで、英語でrabbit holeは、比喩的に日常(こちら)と非日常(あちら)を結ぶトンネル的に使われることがよくあります。そこを落下するといつの間にか現実ではない不思議の国の世界にいる感じですね。

例えば、次の『ダッシュ&リリー』では、リリーがジャズクラブに降りていくシーン。クラブの門番ことバウンサーが、地下への入り口を開けて「Down the rabbit hole」です。ここでは、違う世界へというニュアンスを出していますね。

バウンサー: Down the rabbit hole.
『ダッシュ&リリー』で、リリーはジャズクラブへ降りていく
Dash & Lily [Credit: Netflix]

他にも、『ビッグバン★セオリー』では、シェルドンとエイミーの(肉体)関係を問い詰めるペニー。最初、親友のレナードはそんな質問するなと抵抗してますが、最後は折れて「we’re down the rabbit hole」と言って、ペニーと一緒になって問い詰めるんですね。レナードにしてみれば、シェルドンに性的なことを問うなんてことは、現実的にありえないこと。rabbit holeを通り抜けて別世界に行くくらいの出来事なんです。

ペニー: She would clearly like to have a physical relationship with you. So, what are you doing?
レナード: All right, we’re down the rabbit hole. What are you doing?
『ビッグバン★セオリー』で、ペニーとレナードはシェルドンにエイミーとの肉体関係を問い詰める
The Big Bang Theory [Credit: CBS]

行けども行けども終わりがない「Rabbit Hole」

さてこんな感じで、『不思議の国のアリス』と同様、rabbit holeは比喩で違う世界に行く扉的な使われ方をしますが、実はもう一つ興味深い使われ方があるんです。

以下たとえ話で説明してみます。皆さんがWikipediaで、とある項目の記事を読んでいるとして下さい。かなり面白い記事ですが、その途中に興味がそそられるリンクがあったとします。もちろん、皆さんはそのリンクをクリックし、リンク先の記事を読み始めますよね。すると、そこにも興味深いリンクがあって、・・・以下Wikipediaの記事間を永遠とそうやって彷徨うんです。この底なし沼Wikipedia地獄にハマったことがある人も多いのではないでしょうか?(笑) 実は、rabbit holeのもう一つの意味がこの迷い込んだら抜け出せない底なし沼なんです。行けども行けども終わりがなく、さまよい続ける感じ。でもさ、『不思議の国のアリス』のrabbit holeってそんなニュアンスでしたっけ?とも思うんですよね。ディズニー版はすぐ着地した記憶だし、小説は穴を落ちてる途中で寝ちゃったんでしたっけ。

いずれにせよ、この底なし沼・終わりのないトンネルの意味のrabbit holeの使用例を数例見てましょう。

最初のドラマはみんな大好き『コブラ会』からです。ミゲルはカラテの師匠ジョニーから80年代ロックを教えてもらい、虜になってしまいます。そして、次のセリフでその80年代ロックを超巨大なrabbit holeに例えていますね。ガンズ・アンド・ローゼズを起点に、いろんなロックバンドを聴けども聴けども終わりがないニュアンスです。

ミゲル: I went online and looked up Guns N’ Roses and ended up going on this whole ’80s rock rabbit hole
『コブラ会』で、ミゲルが80年代音楽に嵌ったことをジョニーに話す
Cobra Kai [Credit: YouTube Premium]

次は『エミリー、パリへ行く』から。エミリーの友達ミンディーは、一晩中寝ずにパリのジャズ・クラブをググりまくったのでした。検索すれどもすれでも次々出てくる感じをrabbit holeで言ってます。

ミンディー: I went down a drunk rabbit hole of googling jazz clubs in Paris.
『エミリー、パリへ行く』で、ミンディーはパリのジャズクラブをグーグルしまくる
Emily in Paris [Credit: Netflix]

あなたの知らない卑語の歴史』でも、行けども終わりがないrabbit holeの使用例がありました。辞書編纂者コーリー・スタンバーは、ある時「bitch」という単語に「侮辱的」というラベルが付いていないのを辞書に発見します。そこで不思議に思い、「bitch」の一大調査が始まるんですね。そして、その様子をrabbit holeを下っていくことに例えるのです。最初は単に「雌犬」の意味だった「bitch」から、時代とともに様々な意味が派生し、それを調べて行く感じが出てますね。

So that really is kind of what sent me down the rabbit hole of… of “bitch,” and how did it end up not having a label in the dictionary?
『あなたの知らない卑語の歴史』で、辞書編纂者の学者はbitchという単語のrabbit holeを
History of Swear Words [Credit: Netflix]

なお、面白いことに、このコーリー・スタンパーさんの著書『Word by Word(ウェブスター辞書あるいは英語を巡る冒険)』の翻訳で、rabbit holeを使っている箇所があります。日本語訳は・・・ありゃ、そのままの「ウサギの穴」でした(笑) でも、今回紹介した意味でrabbit holeを使っているのが分かります。翻訳書に唐突に「ウサギの穴」が出てきたら、十中八九この意味でしょうか。

私はウサギの穴に落ちただけで
コーリー・スタンパー (著)『ウェブスター辞書あるいは英語を巡る冒険』
コーリー・スタンパー (著), 鴻巣 友季子 (翻訳), 竹内 要江 (翻訳), 木下 眞穂 (翻訳), & 3 その他: 左右社

最後に

以上、今回は「rabbit hole」が日常会話でどういった感じで使われるのかを見てみました。『不思議の国のアリス』からの類推で「別世界へ行く」的にも使われますし、「底なし沼・終わりのないトンネル」的にも使われるようです。

でも、よく考えたら、海外ドラマって何か特殊な事が起こって主人公の生活が一変するのがかなり多いですよね。『ブレイキング・バッド』とか高校の先生からメス作りだし。そういう意味では、多かれ少なかれ、みんなrabbit holeを落下したと言えるかもしれませんね(笑) それでは〜


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