Volume eating is a slippery slope
Insatiable

「Slippery Slop」の意味

slippery」はちょっと馴染みがない単語かもしれないけど、「滑りやすい」と言う意味の形容詞です。冬道路が凍ってツルツルとか、アイススケートリンクとかがまさにそう。海外ドラマでは、スーパーの床が濡れたままになって、そこを買い物客が・・・のパターンも多いですね。

これは、動詞slip(滑る)から派生していることを考えたらガッテンできるんじゃないかな。なので、発音もスリパリって感じ。

その次の「slope」は、スロープというようにもう既に日本語になってますよね。「坂・斜面」の意味。

だから、2つをまとめると、slippery slopeの字句通りの意味は滑りやすい斜面。スキーのゲレンデとか、真冬の富士山(笑)とかそんな感じです。

道が凍ってる標識サイン
Image by Thomas H. from Pixabay

ただ、海外ドラマでは「slippery slope」って比喩的に使われることがほとんどなんですよね。その意味はというと・・・

皆さんがslippery slopeに立っているところを想像してみて下さい。一度バランスを崩したが最後、奈落の底まで滑って行っちゃいますよね。途中で止まることなんて不可能。なんたって、ツルッツルなんですから。

だから比喩的に、そんな歯止めが効かない行為に対して、このslippery slopeは使われるんです。悪い方悪い方へと向かってしまう感じ。日本語訳は何でしょうね? 一度手を出したが最後、悪化の一途を辿る的なニュアンスを一言で言えればいいんですが・・・

Urban Dictionaryの「Slippery Slope」定義

実際、Web辞書のUrban Dictionaryにも同じようなことが書いてあります:

Slippery Slope

小さな出来事、それは連鎖反応を起こして意図しない結果をもたらす、最初の時は全く予期できなかった。

A small event that leads to a chain reaction of events with unintended consequences that were unforeseen at the time of the inciting event.

小さい出来事が連鎖していき予期せぬ大事態に発展って感じですね。

海外ドラマでの「Slippery Slope」の例

それでは、海外ドラマではどんなことがslippery slopeとされているのか、具体例を見てこのニュアンスを確認してみたいと思います。

『ビッグバン★セオリー』から

シェルドンが大学の駐車場スペースを巡ってハワードと争う回から。レナードは駐車場なんて let it go(放って置け)と諭しますが、シェルドンはlet it goはslippery slopeと考えます。というのも、一度甘受すると、駐車場をlet it goするだけに留まらず、ありとあらゆるものまでlet it goしなくちゃいけなくなると信じているんですね。こんな感じで、slippery slopeは一度悪い方へ転がり出したら止まらないことに使われます。

レナード: Sheldon, let it go. It’s not a big deal.
シェルドン: No. No, this is a slippery slope, Leonard. See, it starts with a parking space. Where does it end?
『ビッグバン★セオリー』で、駐車場をハワードに譲るのを拒否るシェルドン
The Big Bang Theory [Credit: CBS]

『アーチャー』から

アニメの『アーチャー』からは、コカインをslippery slopeとしていますね。中毒になったら引き返せませんから、これはメッチャ納得(笑)

アーチャー: Pam, any cocaine is a slippery slope! It’s the world’s most addictive drug!
『アーチャー』で、アーチャーはパムにコカイン中毒を注意する
Archer [Credit: FX]

『SEX AND THE CITY』から

キャリーはshrink(精神科医)に掛かることを勧められます。しかし、彼女に言わせれば、それはslippery slopeなんだそうです。週に一度が二度三度になり、気付いたときには「私の精神科医が・・・」と会話を始めるようになるんだとか(笑) これは面白い例えですね。ちなみに、ここのnext thing you knowは「気づけば〜してる」を意味する英会話で必須の表現。考えてみれば、slippery slopeと相性は良さそうですね。だって、slippery slopeは気づけば奈落の底ですから(笑)

It’s a slippery slope. First you go once a week, then three times a week and next thing you know you start sentences, “My shrink says….”
『SEX AND THE CITY』で、キャリーは友達とオープンカフェで会話
Sex and the City [Credit: HBO]

『レモニー・スニケットの世にも不幸なできごと』から

実は、『世にも不幸なできごと』のシーズン3エピソード1のタイトルがまさにこの「Slippery Slope」ですね。slippery slopeの意味を踏まえてこのエピソードを見ると面白いです。実際の凍った山道のslippery slopeの意味もありますし、比喩的にボードレール三姉弟妹の運命も暗示しているんです。

『レモニー・スニケットの世にも不幸なできごと』で、ボードレール三姉弟妹を載せた馬車が谷底へ落ちる
A Series of Unfortunate Events [Credit: Netflix]

最後に

今回紹介したslippery slopeの後戻りできない感じ、分かっていただけたでしょうか?(笑) さっきからずっと日本語訳を考えているんですけど、なかなかうまいのが思いつかないです。「破滅への道を進む」が一番近いでしょうか?

まあ、この日本語で考えようとしてしまうのが、英語学習上のslippery slopeなんですけどね(笑) いつまで経っても英語を英語のまま処理できないでいる。そして、全部の英文に日本語訳を付けないと気がすまなくなってしまう。自戒したいものです。

ちなみに、ポテチなんかもslippery slopeと言って差し支えないと思うんですけど、いかがでしょう? ファミリーパックとか買ってしまうと、袋を開けたが最後、The next thing I know、全部食べてしまうのです。そして、ポテチ袋の裏のカロリーの数字を見て後悔するという(笑) こちらも気をつけたいものですね。それでは〜


slipつながりで、スリッパの語源を調べました↓