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文化的背景を知らないと意味が取れない英語表現って色々あると思うんですけど、今回のchurch mouseもそんな中の一つかもしれません。だって、「教会のネズミ」にあるイメージなんて日本人には分かりませんからね(笑)

試しにダメ元で推測してみると、教会に居るんだから「信心深い(pious)」とか、あるいは門前の小僧習わぬ経を読む的に「聖書の一節でも諳んじれるようになる」とかでしょうか?

しかし、これがぜんぜん違うんです。なんと「貧乏」のイメージらしいんです。なんでだ?(笑)

実際、Wiktionaryを紐解くと

poor as a church mouse

poor as a church mouse - Wiktionary

という直喩(simile)が出てくるくらい。

問題はどうして「貧乏」の意味が出てきたかですが、上記記事に語源が載ってました:

Etymology:

Alteration of earlier hungry as a church mouse, from the fact that Catholic (and Orthodox) priests are called to scrupulously prevent any crumb of the sacrament of Eucharist (the bread which is understood to be Christ's body) from falling on the altar or to the ground, meaning that church mice had no crumbs to feed on.

つまり、こういうこと。教会では儀式でパンを信者に配るんだけど、神父さんはパンくずを床に落とさないよう細心の注意を払うんだとか。だから、ありつけるパンくずがない教会のネズミは貧乏なんですって(笑) なるほど、ですね。

そして、この「貧乏」から転じて、「静か」の意味も付与されてるみたいですね。お腹減って貧乏なんだから、動き回る力も残ってないって感じかな?(笑)

それでは、海外ドラマのシーンで実際どう使われるか見てみましょう。

ギルモア・ガールズ

ルークの家にやってきた妹の夫(義兄)はどうやら自宅に帰りたくないようです。「ここでchurch mouseにしてるからお願い」とルークに頼み込みます(笑)

義兄: Right in here, in the corner. Very quiet. You won't notice me at all. Church mouse, buddy.

Gilmore Girls/Season 5/Episode 8

キャッスル 〜ミステリー作家は事件がお好き

次の台詞では、電話が鳴らないことをchurch mouseと比較して例えるのですが、ここでは貧乏じゃなく静か。deadを付けているのが面白いですね。死んでる教会のネズミより静かなうちの電話って、もう何年も鳴ってない感じ?(笑)

My phone was quieter than a dead church mouse.

Castle/Season 7/Episode 12

デスパレートな妻たち

次は、私は一文無し(broke)という台詞受けて、church mouse statusと返す場面。ここなんかは、直接的な言い方を嫌った婉曲的な言い回しですね。他人に直接「貧乏」と言うと失礼に当たりそうな時にchurch mouse。なるほど、こういったニュアンスを知れるのって海外ドラマを見る利点の一つかも。

-OK, now, remember, I'm broke.

-I'm well aware of your church mouse status.

Desperate Housewives/Season 2/Episode 18

最後に

今回紹介したchurch mouseは「貧乏」、「静か」のニュアンスがあるようですね。字幕をざっと見てみると、どちらも半々の割合で使われていました。婉曲表現で使えるのは是非覚えておきたいですね。

それにしても、日本語でこれに対応する動物や表現は一体何でしょうかね? しかもこの場合は、自ら選択した清貧でなく、結果的になってしまう状況。私は30分考えてみましたが、何も出てきません。翻訳作業って、意外とこういうところで時間を使うんですよね。なんかうまい訳はあるはずと思って泥沼にハマるという(笑)