ハタコトレイン騒動

今週、阪急電鉄の企画「ハタコトレイン」が炎上しました。

詳しくは上記記事を読んで頂くとして、一行にまとめると、

はたらく言葉たちから精選した言葉を使って車両広告をジャックをしたら、その内容があまりにもお花畑で炎上した

ということらしいです。確かに、ハタコトレインの広告に使われていた”言葉”は、ネタなのかマジなのか微妙な線を彷徨ってる感じです。「毎月50万円もらって生きがいのない生活、30万円だけど仕事が楽しい生活、どっちがいいか」、なんてカチンと来る人は多そうですね。

そんな本家サイト はたらく言葉たち⤴️に行くと、”言葉”という名のフレーズが毎回トップにランダムに現れます。ここで驚くべきことに、これに必ず英語が付いているんです!! しかも、かなりしっかり訳されている感じ。

ということで個人的に、「英語から元の日本語を想像するという遊び」をしてみました(笑) 例えば、

Changing jobs isn’t something to be afraid of. It’s like you’re being transferred to a different department within Japan.

が出てきたなら、

仕事を変えることは恐れることじゃないよ。ある意味、日本国内で配置転換するようなもんじゃん」 と拙訳して・・・正解の日本語と見合わせます。

転職や再就職も恐れることなんてないんですよ。 日本の中で、ちょっと人事異動しただけなんです。

お、結構いい線いってるけど、語尾を「ですよ」にして読者をイラツカせないと、まだまだ 「はたらく言葉たち」初段は難しいようです(笑) 

って感じ。ネタか本気か微妙なフレーズが出てきて、これが結構面白い。

「Make the World a Better Place」との邂逅

さて、そんな遊びをしてふとサイト全体に目をやると、このサイトって全体が日英が併記されている形式なんですね。そこで、英語部分を読んでいくと、「About “Words that Work”」で味わい深い説明がなされていました:

The inspiration behind this book is that people are impressed by someone who works hard, and makes the world a better place.

出ましたよ!

「makes the world a better place」、この世界をより良い場所にする(笑)

これ見た瞬間、このサイトってやっぱ壮大なネタなんじゃ・・・と思うのでした。

というのも、この英語フレーズ「make the world a better place」って本当に、マジで、超、みんなによって使われるんですけど、よく使われすぎて逆にネタになってるレベルなんです。英語だとclicheとかcheesyとかcornyって感じ。日本語で言うところの「コテコテ」(笑)。

『シリコンバレー』でのMake the World a Better Place

この「Make the world a better place」ネタが使われている海外ドラマと言って思い出すのが『シリコンバレー』です。これはシリコンバレーのとあるスタートアップを扱ったドラマですが、その中にこの表現がお笑いネタとして何度も登場します。

次のシーンでは、様々な有名スタートアップのアイコンが飛び交う中、「Making the world a better place」をマントラのように唱えながらイッてしまうアーリック。

アーリック: Making the world a better place. Making the world a better place.
『シリコンバレー』で、アーリックがトリップで見てる幻覚
Silicon Valley [Credit: HBO]

他にも、ドラマ内のTechCrunchのスタートアップのコンペティションで、登壇者の決まり文句が一様に「making the world a better place」になってたりして、かなり皮肉ってたりします(笑)

スタートアップA: We’re making the world a better place, through Paxos algorithms for consensus protocols.

スタートアップB: we’re making the world a better place through software-defined data centers for cloud computing.

スタートアップC: HumanHeater is a microwave technology that can heat the surface of a person’s skin instead, potentially saving millions in heating costs and helping the environment, thereby making the world a better place.

Silicon Valley

we’re making the world a better place through software-defined data centers for cloud computing.
『シリコンバレー』で、スタートアップがテッククランチで自社商品の紹介をする
Silicon Valley [Credit: HBO]

最後に、FooliのCEOギャビンが友人ピーターの葬式でスピーチをしてる場面。もちろん、死者への弔辞でも「make the world a better place」は欠かせないセンテンスです。

ギャビン: Where we come together as dreamers, all of us, to truly make the world a better place.
『シリコンバレー』で、ピーターの送別会でスピーチするFooliのCEOギャビン
Silicon Valley [Credit: HBO]

という感じで、意識高い系が使う「make the world a better place」をこのドラマ『シリコンバレー』はめっちゃ皮肉ってるんですね(笑)

最後に

今回は「ハタコトレイン」から『シリコンバレー』までの「make the world a better place」ネタの使われ方を見てみました。おっと失礼、「ハタコトレイン」ではネタじゃありませんでしたね。

冗談はさておき、「make the world a better place(世界をより良い場所にする)」は、海の向こうの意識高い系スタートアップの人々によって頻繁に使われる表現。でも具体性に著しく欠けているので、小学生が「世界を平和にしたい」って言ってるレベルなんですよね(笑) そしてみんな使うから、逆に鼻につくんです。そこを海外ドラマ『シリコンバレー』は逆用して、笑いに昇華してるんですね。

ちなみに、これだけ手垢が付いてしまっているので、

相手: こっちは毎日頑張ってるんだよ

あなた: To make the world a better place, huh?

というセリフが辛辣に響くのも納得できるのではないでしょうか? そして、私が途中で、サイト「はたらく言葉たち」を壮大なネタと感じた理由も・・・(笑)

以上、「make the world a better place」のため、日々英語ネタを発信している『海外ドラマの中の英語』からの報告でした。それでは〜