イタリア系「Fredo」 vs. 黒人「N-word」で大論争【CNNクオモ】
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今回は時事ネタを肴に『ゴッド・ファーザー』のフレドについて見ていきます。
事の始まりはクリス・クオモ
CNNはアメリカの報道機関(news outlet)の一つですよね。日本でもかなり知名度があります。
そんなCNNでキャスター(アンカー)をやってるクリス・クオモさんが今回の当事者。彼が家族とバカンスの最中に、変な奴(a-hole)に絡まれたのが事の発端。有名人ならありがちな展開ですね。彼だってそんなことは今まで幾度となく経験済み。そこで今まで通り適当にあしらえばよかったのですが、彼は言い争いの末その男に言われたある一言を見逃すわけにはいきませんでした。それが「フレド(Fredo)」だったんです。
![Chris Cuomo [Credit: THAT'S THE POINT with Brandon] クリス・クオモ(Chris Cuomo)が男に難詰を付けられる](chris-cuomo.webp)
クリス・クオモ(Chris Cuomo)って誰?
その前に、当事者のクリスについて説明したいと思います。それを理解しないことには、この話を理解するのは難しいので。
彼の父親はマリオ・クオモ、前ニューヨーク州知事なんです。そして、彼の兄アンドリュー・クオモは現在のニューヨーク州知事。そう、この家族、政治家系なんですね。そして、父の名前から分かるように、イタリア系のアメリカ人でもあります。そんな家系の中で、クリスだけはCNNのキャスターなんです。つまり、誤解を恐れずに例えると、日本で言うところの石原良純ポジなんですね。政治家一家の中で、一人お天気キャスター。いや、CNNのアンカーだってすごいんだけど、周囲を見渡すとちょっと見劣りするって感じ。
![Cuomo Prime Time [Credit: CNN] 『Cuomo Prime Time』でニュースを報道するクリス・クオモ](cnn-chris-cuomo.webp)
『ゴッド・ファーザー』のフレド(Fredo)
次に、フレド(Fredo)についても軽く触れておきましょう。これは名作映画『ゴッド・ファーザー』に出てくるキャラの名で、この人、コルレオーネ家の次男なんですが、性格的にマフィアに全然向いてないんです(笑) それで、お客の接待など重要でない仕事を任されています。
![The Godfather [Credit: Paramount Pictures] 『ゴッド・ファーザー』の次男フレド](the-godfather-fredo.webp)
クリスの激怒と差別大論争
さて、ここまでくれば何故男がクリスのことを「Fredo」と呼んだのかも分かるでしょうし、クリスが呼ばれて激怒したわけが分かると思います。つまり、「クリスはクオモ家のフレド、二流・女々しいやつ」と暗に言ってるわけで、ものすごい嫌味なんですよ、これ。そしてクリスにとってはイタリア人の血が流れていることもあって(男は当然それを前提にしている)、これは看過できないものだったんです。
しかし、事態は意外な方向へ展開します。クリスはその「Fredo」にただ怒ったんじゃないんです。
イタリア人にとってFredoは黒人にとってのN-word(ニガーのこと)と同じ
とぶち上げてしまったんです。もちろん、変な男に絡まれてフレド呼ばわりされて感情も高ぶっていた状況を考えると、その場での枝葉末節はどうでもいい気もするんですけど、その発言を聞き逃すわけにはいかない人たちが居たんです。しかも、ネット上にいっぱい(笑)
ちなみに、この男とクリスのやり取りは動画に収められて、YouTubeに上げられていたんですね。既にオリジナルは削除されていますが、即座にバイラルとなって多くの人の知るところとなったのでした。
それでは、彼の発言の一体何が問題だったのでしょうか?
多くの人にとってクリスの発言が聞き捨てならなかったのは、黒人にとってのN-wordを極端に矮小化してしまっているからですね。イタリア人末裔にFredoと呼ぶのと黒人をN-wordで呼ぶのとでは天地の差があるんです。というのも、N-wordは黒人差別の歴史でもあるからです。
As Oprah always reminds us, the n-word is the last thing black men heard before they were strung up from a tree or when black women were raped. Nothing is comparable to the n-word.
— Yashar Ali 🐘 (@yashar) August 13, 2019
それで終日、海の向こうでは大論争を巻き起こしているのでした。
海外番組での「Fredo」の使用例
差別の問題など複雑に絡んでくるので、この件にこれ以上踏み込むのはやめますが(気になる人は各自追ってみて下さい)、一つ気になるのはこの「Fredo」というレッテル。自分は今回初めて知ったぐらいですので、海外ドラマで実際出てくるものなのか最後に確認してみましょう。
『ギルモア・ガールズ』から
ローレライは母親を守ります。それを男に指摘されると、ローレライは「どんな家にも一人はフレドがいる」とします。ここでは、母親=フレドってわけで、自分が守ってあげないといけない弱者という感じで、差別では使ってはいません。
ローレライ: You just insulted my mother.
男: It’s interesting, I didn’t know you and your mother were so close.
ローレライ: We’re not.
男: You’re being awfully protective of her.
ローレライ: Well, every family has a Fredo.
『ハイっ、こちらIT課!』から
ジェンは会社の顧客エンタメ担当になります。というのも、前任のゲリーが心臓発作になったため。ジェンは顧客を適当に楽しませれば良いという認識で、会議の後ウェスト・エンド・ショーにでも連れて行けばいいと考えていますが、ロイはジェンが新しいフレド役と言ってから、それ以上のものを求められるとします。ここでは性風俗接待まで入ってる感じですね。ゴッド・ファーザーでのフレドの役割を説明してるだけです、ちなみに、このエピソードのタイトルは「Jen the Fredo」とそのものになってます(笑) この二つ名のパターンはGon the Foxで記事にしました。
ロイ: Gerry was the… He was the company Fredo. You’re the new Fredo.
ジェン: I don’t know what you’re talking about.
ロイ: Fredo, from the Godfather.
ジェン: Who’s Fredo again? Who’s he in it?ロイ: He’s the brother, whose job it is to take out-of-town businessmen and…
ジェン: Show them a good time, yeah, that’s what I have to do. I was thinking West End show…
ロイ: No, no, Jen, I don’t think you understand. These men are going to expect a lot more than a West End show.
最後に
今回はCNNのクリス・クオモの発言が茶の間を沸かしているので、それの背景説明と、「フレド(Fredo)」の使われ方を海外ドラマの中でみてみました。見て分かるように、Fredoを差別で使うパターンは皆無ですね。だからこそ、世論が騒いでいるといったところでしょうか。
個人的には、このクリスの件は、善悪はともかくとして、多くの人に取って良い教訓になると思うんですけどね。自分に降り掛かった瑣末なことをより大きく見せるために、別の大きなことを持ち出すのは自己防衛メカニズムとしてよくあるし、無意識のうちにやっていまいがちです。でも、それをすることで、逆に別のこと自体を矮小化させてしまうこともあるって、結構見落としがちなポイントですからね。自戒を込めて気を付けたいものです。それでは〜
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