カミングアウトの2つの意味

日本語のカミングアウトって、よくよく考えると意味がすごく変わってますよね。今では自分が秘密にしていたことを周囲に公表するという一般的な意味になってますが、昔は英語と同じ同性愛者の公表だったわけです。

実際、国語辞典のデジタル大辞泉でも

カミングアウト(coming-out)

  1. 人に知られたくないことを告白すること
  2. 同性愛者であることを公言すること

というように、1番目が一般的な方の意味になってます。うーん、こういうのを見ると、やはり言葉は生きているんだなと感じずにはいられません。

ゲイカップルが手をつないで歩く
Image by StockSnap from Pixabay

「カミングアウト」の使われ方調査開始🎵

こうなると気になるのが、いつ頃からカミングアウトが同性愛者から離れていったかですよね。

そこで、ちょっと調べてみました。いや、これがちょっとどころではなく、ものすごく大変だったのです(笑) でも、調べたらなんとかまとまりましたので公開します。

まず見つけたのが、テレビ番組「カミングアウトバラエティ!! 秘密のケンミンSHOW」。

秘密のケンミンSHOW - Wikipedia⤴️

2007年10月11日から放映開始で、内容は各都道府県の住人が自分たち独自の奇妙な慣習・風習を紹介(カミングアウト)するもの。この時点で既に同性愛では無くなってますね。ということは、変化は更に前に遡ることになります・・・

それじゃあということで、グーグルの日付指定検索で年ごとに遡って検索してみました。信頼がおけるニュースカテゴリで、カミングアウトという文字が出てくる最も古いニュースは・・・

「“オタク像”は5タイプに分類できる」~NRIマニア消費者層調査

複数のこだわり分野を持つ傾向がある「情報好感度マルチオタク」は、オタク層の22%。若年層が中心で、男女に偏りがない。インターネット活用度が高く、趣味活動への消費時間が多い。オタクであることをカミングアウトする割合が高く、「ネットオークション、コミュニティサイトが大好きで、2ちゃんねるのライトユーザーであるネット住人」を典型例に挙げている。

2005/10/06 21:51

なんと、2005年の古いのニュースでも、同性愛者の方ではなくオタクのカミングアウトでした。

ということで、乗りかかった船なので、全てのWebサイトを対象にして、2004年から1年間ごとに区切ってグーグルで「カミングアウト」を検索し、どの辺りで変化が現れるか目視で検索して行ったのが下記テーブル。より詳しい条件は・・・

  1. X年1月1日〜X年12月31日の日時指定+「“カミングアウト”」で検索
  2. 検索結果に出てきたサイトを適当に30個くらい開く
  3. 目視でそれがX年当時書かれたものであることを確認(当時を回顧するパターンは除外)
  4. カミングアウトの内容が同性愛か、それ以外の告白かで分類(カミングアウトを他の意味で使ってるパターンは除外)

です。

結果は・・・

同性愛のカミングアウト割合
200110%
200020%
199940%
199860%
199750%

1998-1999年あたりで割合が逆転してるようです。

(注)上記数字は乱数も使ってないので統計的価値はなく、また、カミングアウトした著名人が出た年や、同性愛者カミングアウトがテーマの映画などがあるとそれについて話題にする人増えるので、信用しないほうが良いです。あくまでもボールパークな目安です。

ランニングするカップルのイラスト
Image by mohamed Hassan from Pixabay

「カミングアウト」の使用例

ちなみに、どんな感じで使われていたかを少し見てみましょう

2000年

ウエストサイズ言う時に5cmサバ読んでたり パンツを履く時にフトモモのところで止まったり 「バイバイ」って手を振ると二の腕がプルプルしたり することをカミングアウトする女性達が登場して 一斉にイッちゃった顔して踊り狂う 某エステサロンのCMが大好きです。

女性向けの掲示板?から。サバ読みをカミングアウト。

1999年

それぞれの家庭環境の違いを思い知ったのは、 私の実家ではおならをしたら「しっつれい~」とか 謝りつつカミングアウトしたのですけれど、 ダンナは放屁してもそしらぬ顔。謝らないのです。

ほぼ日刊イトイ新聞なので、信用度は抜群です。おならのカミングアウトですね。かわいい(笑)

1998年

教壇でカミングアウトした池田久美子さん

雑誌「婦人公論」の記事。レズビアンであることをカミングアウト。

1996年

このドキュメンタリーはゲイである監督自身の親へのカミングアウトがテーマの一つになっている。

「ダイス」1996年7月号に掲載された記事みたいです。「大阪ストーリー」という映画自体のテーマが同性愛みたいですね。

最後に

目視で追っていった感じだと、当初は英語と同じように「カミングアウト」だけで同性愛者の告白の意味だったのが、途中から「○○をカミングアウト」というように目的語を取るようになって一般化され、そのため同性愛者の告白も「ゲイをカミングアウト」と目的語を取る必要が出たっぽいですね。こういう言語の変遷ってめっちゃ面白い(笑)

こうなったら、本家本元英語のカミングアウトも取り上げたいですね。それでは〜


(追記)英語版カミングアウトも調べてみました↓