「Spoil」の意味

今回のお題は「spoiler alert」。と、メインディッシュの前に、まずは前菜として動詞「spoil」の意味について触れておきます。

spoilは「台無しにする」という意味で、物が持ってる本来の能力を発揮させられないときに使われます:

spoil

(他動詞)台無しにする、使用に適しないよう損害を与える。

(transitive) To ruin; to damage (something) in some way making it unfit for use.

例えば、買ってきた食料品を放置して、気づいたときにはカビが生えて食べられないならそれがまさにspoilですし、これは意外に響くかもしれませんが、子供を甘やかして性格ひん曲がった子に育ててしまったのなら、それもspoilなんです。つまり、文字通りにも比喩的にも「腐らせる」って感じですね。

『ゲーム・オブ・スローンズ』の「Spoil」

海外ドラマの例だと、『ゲーム・オブ・スローンズ』の初期エピソードで、ジョフリーとアリアが争うシーンでこのspoilが使われていました。自分の婚約者であるジョフリーに歯向かうアリアに「You’re spoiling everything!」と声を荒げるサンサ。これは、自分とジョフリーの結婚だけではありません。王の子供に敵対するということは、スターク家の未来をもspoilする可能性があるからですね。ruinとも言えそうです。

サンサ: No no, stop it, stop it, both of you. You’re spoiling it. You’re spoiling everything!
『ゲーム・オブ・スローンズ』で、王子ジョフリーに歯向かうアリア
Game of Thrones [Credit: HBO]

さらに、そこから転じて、ストーリーの結末などをバラすのにも、このspoilは使われます。例えば、探偵小説読んでる人に「犯人は○○だよ」とか、新作映画を観るのを楽しみにしてる人に「悪役が主人公の生き別れの父親なんだ」と話の筋をバラすとか。だって、彼らが本来楽しめたはずのことをネタバレすることによって台無し(spoil)にしてますからね(笑)

従ってspoilerとerを付ければ、それは「spoilするもの」のこと。だから、子供に甘い親の意味だったり、物語を読む楽しみを台無しにする「ネタバレ」の意味になるのは分かるかと思います。

ここまでが基本です。

「Spoiler Alert」の意味(文字通り)

そして「alert」が「アラート」と日本語になってるように警告の意味であることを合わせると、結局、Spoiler Alertはネタバレ警報・注意報なわけですね。

このSpoiler Alertはネットのコメント、特にレビューなどの前置きでよく見かけます。そのレビューにはネタバレが含まれているので注意しろと読者に事前に警告しているわけです。

spoiler alert

ドラマの筋が明かされつつあることを意味して文章に置かれる表示。

An indication, placed in a text, that the plot of a drama is about to be exposed

『ビッグバン★セオリー』での「Spoiler Alert」

この意味での海外番組での使用例は、『ビッグバン★セオリー』に見られました。次の場面はレナードとペニーが映画を見るところ。二人は水力発電に関するドキュメンタリーを見ることになりますが、「水力発電は君が考えるような環境配慮のお買い得品じゃないかもしれない」とドキュメンタリーの内容に触れてしまい、直後spoiler alertと謝ります。ここは意図的にネタバレしてる感じ。

レナード: So let’s go learn why hydroelectric power might not be the environmental bargain you think it is. Sorry, spoiler alert.
『ビッグバン★セオリー』で、ペニーに映画の結末をネタバレするレナード
The Big Bang Theory [Credit: CBS]

「Spoiler Alert」の意味(比喩的)

さて、ここからが面白いんですが、この「Spoiler Alert」は単なる物語のネタバレだけじゃなく、もっと幅広いことに対しても使われるんです。相手が後でたどり着くものならなんでもOK。

spoiler alert

話者が予期しない不愉快なことを明らかにする前の合図。

Indicates that the speaker is about to reveal something unanticipated or unpleasant

例えば、

Spoiler Alert: 人生は最悪だぜ

と子供に対して言えば、それはまさしくSpoiler Alertなんですね。だって、子供のときはバラ色の未来しか見えないので気づけないかもしれませんが、大人になればMy life sucks(俺の人生最悪)と分かるのですから(笑)

海外ドラマからこのパターンを拾ってみると、

次の『9-1-1: LA救命最前線』では、同僚の夫がゲイであることをSpoiler alertしています。これなんか、ゆくゆく気づくんだろうけど、私がネタバレして教えてあげてる感じになります。

Spoiler alert: your husband likes boys

9-1-1

また、次の『モダン・ファミリー』では、マニーがデート中の年上女性にI love youをSpoiler alertです。あとで分かると思うけど前もって言っちゃった(笑)

マニー: Spoiler alert: I love you.

Modern Family

最後に

今回はネットなんかでよく見かける「Spoiler Alert」について見てみました。元々の「ネタバレ」の意味から派生して、いろんなことをSpoiler Alertできるようになっているのが分かります。

個人的に今思いついたのが

Spoiler Alert: TOEICの点数だけ高くても英語は話せません

とかどうでしょう?(笑) 結構自虐入ってるかも・・・

ここはポジティブに

Spoiler Alert: 海外ドラマ視聴も結構英語勉強になるよ

のほうがいいかな。

「Spoiler Alert」の不思議

ところで、個人的な疑問が一つありまして、会話中に「Spoiler Alert」されても、聞き手側に聞かないっていう選択肢はほぼ無い気がするんですよね。だって、上の『ビッグバン★セオリー』の例で見たように、Spoiler Alertの直後に即その内容が来てしまうので。だから、Spoiler Alertじゃなく、

それって単なるSpoilerじゃね?

といつも思うんですけど、どうでしょう?(笑) 全然alertになってない感じ。

いずれにせよ、ネット上でSpoiler Alertという文字を見つけたら、その先を読むのは注意したほうがいいかもしれませんね。特に、新作映画見る前日は(笑) それでは〜