出会いは『マーベラス・ミセス・メイゼル』

週末、シーズン3の予習にとアマゾンの『マーベラス・ミセス・メイゼル』のシーズン1、2を見ていたんです。すると、シーズン2の冒頭で面白いシーンが飛び込んできました。 場面は、メイゼル夫人(ミッジ)一家が旅行に出かけた後のシーン。ミッジのコメディエンヌとしての能力を見抜いてマネージャーになるスージーは、ミッジ家でお留守番をさせられます。これ幸いと、上流家庭の家の中を物色するスージー。そして、子供部屋で見つけた本を読んで泣くのです。

『マーベラス・ミセス・メイゼル』で、お留守番をするスージーは『シャーロットのおくりもの(Charlotte's Web)』を読んで泣く』
The Marvelous Mrs. Maisel [Credit: Amazon Prime Video]

ここは、彼女スージーというキャラを知る上で重要なシーン。というのも、彼女(とミッジ)は完全な超男社会のお笑い業界に女二人で立ち向かっているので、ライバル芸人・マネージャー、観客、興行主の前では常に気丈に全くスキを見せないよう振る舞います。男勝り・度胸がある(ballsy)という名状がピッタリ。しかし、一人になると涙する心優しい女性的一面も持ってると、この場面は暗に述べているわけなのです・・・。

しかし、私の注目は別のところにありました。

一体何の本を読んで泣いているの?

です(笑) そこで、イメージを拡大してみると・・・

『マーベラス・ミセス・メイゼル』で、お留守番をするスージーが読んでいる『シャーロットのおくりもの(Charlotte's Web)』
The Marvelous Mrs. Maisel [Credit: Amazon Prime Video]

『Charlotte's Web(邦題:シャーロットのおくりもの)』という子供向けの本。

自分はこの本のことは全く知らなかったのですが、調べると、めちゃくちゃ有名な児童文学みたいで、ベストセラーにもなっているんだとか。

自分の好きな『ギルモア・ガールズ』のローリーも好きなことが判明。ローレライは「蜘蛛が豚に話すなんて最高じゃん」と混ぜっ返してますけど(笑)

ローリー: “Charlotte’s web” is one of my favorite books.
ローレライ: Spiders talking to pigs. What could be better?
『ギルモア・ガールズ』で、ローリーとローレライは『シャーロットのおくりもの(Charlotte's Web)』について子供に話す
Gilmore Girls [Credit: The WB]

もうこうなったら読むしかないじゃないですか(笑)

ということで、『マーベラス・ミセス・メイゼル』復習は一旦横に置いて、アマゾンでキンドル版をポチって読み始めてみたんです。

E. B. White (著), Garth Williams (イラスト): Puffin Classics

『シャーロットのおくりもの』あらすじ

さて、物語は女の子ファーン(Fern)の家で子豚が生まれるところから始まります。彼女は子豚にウィルバー(Wilbur)と名付けて飼おうとしますが、両親が許してくれません。そこで、親戚の農場の家にウィルバーを預けることで妥協します。

ウィルバーは農場で他の家畜とともに生活し始めますが、かなり抜けてる性格のため、あまり馴染めません。そんなある日、子豚ウィルバーに友だちができます。それが題名にもなっているクモのシャーロット(Charlotte)。彼女は知的で賢く、二人はすぐ仲良くなります。シャーロットは物知りで、難しい語彙を子豚に教えたりもします。彼ら二人が交わす会話も面白く、女の子ファーンも放課後に通ってきては、農場の動物たちの、特にクモのシャーロットの話す不思議な話に耳を傾けます。もちろん、子供はいつだって動物の会話を聞けるのです(笑) ちなみに、ファーンの母親は、娘が農場から帰ってきて話す「動物たちの会話」のことで娘のことが心配になり、医者に相談したりするんですけどね。子供の頃、母親自身も動物の会話を聞けたことなどすっかり忘れて・・・。

そんなこんなで季節は初夏になり、子豚のウィルバーはすくすくと成長します。自分の成長ぶりを周囲の動物に誇るウィルバーは、ある時、他の動物から衝撃的な事実を告げられます。曰く「夏が終わって寒くなる頃に、ウィルバーは人間の食料になってしまう」と。「ハム・ベーコンになるのは嫌、まだ生きたい!」と願うウィルバーですが、自分ひとりではどうにもならず落ち込みます。そんなウィルバーを放っておけない大親友のクモのシャーロットは、人智蜘蛛智を超えたある大それた計略を考え付くのですが・・・。

『シャーロットのおくりもの』感想

英語レベル

これ以降はネタバレなので、実際の本を読んでもらうとして、英語のレベルの関して一言二言。まず、子供向けなので英語は基本的に簡単です。難しい概念はありません。ただし、舞台が農場なので、そっち方面の見慣れないボキャブラリーが大量に出てきて、そこが最初面食らうと思います。例えば、penで家畜を入れる「柵」を意味したり、spinで「(クモが)糸を吐く」という動詞だったり。テストには出ない語彙が満載。自分も知らないものが多く、勉強になりました。また、子供向け故か、難しいボキャブラリーはシャーロット(クモ)がウィルバー(子豚)に説明する体で、読者にも説明してくれています。以下2例を挙げておきます。

Untenable

“But, my friends, if that ancient egg ever breaks, this barn will be untenable.” “What’s that mean?” asked Wilbur. “It means nobody will be able to live here on account of the smell. A rotten egg is a regular stink bomb.”

E. B. White. “Charlotte’s Web.”

Sedentary

“I’m glad I’m a sedentary spider.” “What does sedentary mean?” asked Wilbur.” “Means I sit still a good part of the time and don’t go wandering all over creation.”

E. B. White. “Charlotte’s Web.”

ストーリについて

ストーリー的には、正直なところ、途中単調に感じるところがあったことも事実。でも、物語最後に子豚ウィルバーの命運に関して怒涛の展開と、シャーロットの大活躍が待ち受けているので、そこは安心してください。さすが名作だけあります。時は流れ、女の子ファーンも動物たちの声を聞けなくなり、ウィルバー自身も大人になるんだけど、ウィルバーの心の中心にはいつもシャーロットが居るという読後感も悲しいけれどグッド。

なお、自分は『マーベラス・ミセス・メイゼル』のスージーとは違って、ちょっとうるっと来ただけで、涙までは流しませんでした。ただ一つ言えるのは、この本を読むとクモが殺せなくなると思います(笑)

それにしても、なんで日本語タイトルは「おくりもの」なんだろう? 中国語訳でも「網」なのに。Webが鍵なんですけどね。そこはご自身で読んで、実際確認してみて下さい。それでは〜

E.B. ホワイト (著), ガース ウイリアムズ (イラスト): あすなろ書房