『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』のあらすじ

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』はAIと監視社会をテーマにしたアメドラ。ストーリーを簡単に言うと、自我を持つAI「マシーン」はありとあらゆる情報(人々のスマホ、通話、監視カメラ、PC等)にアクセスできるため、それら情報を総合的に判断して犯罪が起こるのを事前に高確率で検知することが可能。アメリカ政府はそのマシーンをテロ対策にのみ使うことにし、一般人が巻き込まれる事件は完全無視することに。しかし、マシーンを開発した正義感あふれる天才ハロルドはそれを見過ごせず、犯罪に巻き込まれる可能性が高い人物の社会保障番号を自分に定期的に送るようにプログラムを書き換える。そして、個人的に雇った元CIAのジョンと共に、その社会保障番号の人物が事件に巻き込まれるのを防ぐ、というのが主なプロット。

かなりフューチャリスティックですが、AIが高度に訓練され、そして、すべての情報にアクセスできるならばそんなこともできるのかと思わせてくれる内容です。まあ、マフィアの親分が携帯で暗殺者に殺人を依頼する音声もマシーンは盗聴できてしまうので、実際はそれほど難しくないのかも知れませんけど(笑)

そんな『PERSON of INTEREST』ですが、途中から「マシーン」の邪悪なライバルAI「サマリタン」が登場してストーリーに捻りを加えたかと思うと、”ファンサービス”で主要メンバーがレズったりして、最後の方は迷走してシーズン5で打ち止めとなってしまいました。プロットが面白かっただけに個人的にかなり残念な結果です。

初代PS3連結ストーリー

さて、その『PoI』の最終シーズン冒頭で、「マシーン」のデータを政府の手から取り戻した開発者ハロルドは、「マシーン」を動かせないという問題にぶち当たります。一般家庭のPCでは処理が重すぎるのです。

お約束のように火花が散り

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』で、
PERSON of INTEREST [Credit: CBS]

そして、当然火事になります(笑)

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』で、
PERSON of INTEREST [Credit: CBS]

幸運にも「マシーン」のデータは無事でしたが、マシーンを動かすには膨大な計算能力が必要なのでした。でも、どうしたらそのスパコン並の計算力を個人が手に入れられるでしょうか?

ハロルドの相棒ジョンが、とあるデバイスをハロルドの机におもむろに置きます

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』で、
PERSON of INTEREST [Credit: CBS]

スリムじゃない方の丸みを帯びたゲーム機、初代PlayStation 3(PS3)ですね。これを使えというのです。

これまたハロルドの仲間の凄腕ハッカーことルートがPS3をラックに配線しながら説明役を買って出ます:

ルート: These particular gaming consoles have a unique cellular structure that can be scaled. Networked, they approach the processing power of a supercomputer, but only use about 1/10 of the power, and their OS can be overwritten with Linux.

Person of Interest
『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』で、
PERSON of INTEREST [Credit: CBS]

つまり、PS3を繋げることでスパコンに匹敵する計算力を手に入れられるのです。しかも、低消費電力で。Linuxを使って。

もちろん、このまま事をすんなり進めては一流の脚本家にはなれません。PS3の火を入れて、無事動いたと茶の間に思わせておいて・・・

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』で、
PERSON of INTEREST [Credit: CBS]

かーらーのー、また火花です(笑) 

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』で、
PERSON of INTEREST [Credit: CBS]

相棒ジョンが都合よく液体窒素を見つけてきて、それをPS3に噴射し事なきを得るところまでがテンプレですね(笑) なんとなく番組打ち切りになる雰囲気が感じられます。

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』で、
PERSON of INTEREST [Credit: CBS]

プレイステーションを連結させスパコン化の元ネタ

ところで、ここで一つ疑問があるのですが、何故にPS3? しかも初代(2006年発売)なのでしょうか? この番組オンエアーは2016年。次世代のPS4が発売されてから既に3年の月日が経っています。

実は、ドラマ内では軽くしか触れられていませんが、PS3初代上でLinuxを動かせるというのが大きかったのだそうです。しかしソニーはPS3の改良版のスリム版以降、セキュリティを理由にLinux対応をやめてしまった事実があるのです。だから、ドラマ内のPS3はわざわざ初代だったのですね。

ところで、このPS3をたくさん繋げてスパコンにするというアイデアは、当時多くの研究者が考えついており、実際実施してみたことだということが以下の記事に書いてあります(実はこの記事に触発されて今回の記事になりました)。

予算のない研究者たちがお手軽PS3を複数連結させてスパコンにしようとしていた話。PS3などのゲーム機本体は、市場を独占するために赤字覚悟で売られるというのはよく知られたことですね。売れば売るほど大赤字。ゲームソフトと時間によるのゲーム機部品代の下落、将来の市場独占による利益によって、長期的に元を取ろうという戦略です。ある意味、プリンター本体でなく消耗品のインク代で稼ぐ商法と同じですね(笑)

その戦略を研究者たちは逆手に取って、PS3で市場価格よりも安く計算力を手に入れて、それを自分たちの研究に活かしていたというわけ。ゲーム機売れば売るほど赤字なんだから、本体だけ買ってゲームソフトも買ってくれない研究者にソニーはどう思っていたのでしょうか?(笑)

Linux対応がなくなってハードウェアを直接叩けなくなった研究者は、次第とPS3から離れていったことが記事に書かれています。

なお、上記記事の最後に米国空軍が活用していたPS3連結スパコンについて非常に面白い事実が述べられていました:

a few hundred were snapped up by people working with the TV show Person of Interest. In a ripped-from-the-headlines move, the consoles made their silver screen debut in the show’s season 5 premiere, playing — wait for it — a supercomputer made of PlayStation 3s

つまり、この記事冒頭に複数掲げた『PERSON of INTEREST』に出てくるPS3の実機群は、元々アメリカ空軍所有のものだったのでした・・・

あのPS3達にそんな物語が隠されていたなんて・・・。『PERSON of INTEREST』のストーリーより面白いじゃん(笑)

それでは〜


「Person of Interest」の意味↓