第一話:Pilot(パイロット)

今回は海外ドラマに関するウンチク。海外ドラマをたくさん見てる人(しかも英語で!)には既におなじみの話題かもしれません。

実は、海外ドラマの初回エピソードのタイトルって「Pilot」であることが非常に多いんです。パイロット。日本語で見てると、「はじまり」みたいになっているので気づきにくいんですけどね。逆に言えば、そういう意味のないタイトルになってるときは、原題はほとんどPilotと思ってもいいかもしれません。

数例挙げてみると

海外ドラマ初回エピソードタイトル
ブレイキング・バッドPilot
フレンズThe Pilot
ギルモア・ガールズPilot
XファイルPilot
PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニットPilot
ヤング・シェルドンPilot
ゲーム・オブ・スローンズWinter Is Coming

と言う感じ。全部が全部ではないということで「Pilot」じゃない海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』も挙げてみましたが、一応、こんな感じで多くの番組の初回エピソード名が「Pilot」なんですよね。

でも、なんでパイロットなんでしょうか? 飛行機の操縦士と関係あるの?とお思いのそこのあなた、残念、ハズレでした(笑)

飛行機のコックピットのパイロットと副操縦士
Image by StockSnap from Pixabay

「Pilot」の意味

実は、英単語「pilot」には「試験的な」という意味があるんです:

pilot

テストや試験の役目を果たすもの。

Something serving as a test or trial.

つまり、初回のエピソードは試験的なんですね。海外ドラマ・シットコムが実際どんな感じになるのかを確かめるため、試験的に制作されるのです。

『パルプ・フィクション』のセリフで「パイロット」を説明

この事をより深く理解するためには、米国エンタメ界の商習慣を理解しないといけないんですけど、あの有名なタランティーノの名作映画『パルプ・フィクション』にこのことが簡潔に説明されているシーンがあるので、私が説明するよりも、そちらを引用しましょう。

冒頭のギャング二人の会話から。ある女性がパイロットに出演したことから話はスタートします・・・

黒人男: I think her biggest deal was she starred in a pilot.

白人男: Pilot? What’s a pilot?

黒人男: Well, you know the shows on TV?

白人男: I don’t watch TV.

黒人男: Yeah, but you are aware that there is an invention called television and on this invention they show shows, right?

白人男: Yeah.

黒人男: The way they pick TV shows is they make one show. That show’s called a pilot. Then they show that one show to the people who pick shows and on the strength of that one show, they decide if they wanna make more shows. Some get chosen and become television programs. Some don’t, become nothin'.

白人男: Pilot? What’s a pilot?
『パルプ・フィクション』で、テレビ番組のパイロットについて話すギャング二人
Pulp Fiction [Credit: Miramax Films]

つまり、制作プロダクションは最初に1エピソードだけ作って(それがパイロット版)、それをテレビ局に売り込むわけです。それをTV会社の重役が見て、「面白い、うちで放映したいから残り12エピソード作ってくれ」となったら交渉成立。制作費がテレビ局から降ってくるわけですね。ここで面白いのが、黒人男の最後セリフです。「いくつかは選ばれてテレビ番組となって放送されるけど、いくつかは選ばれず、何にもならない」。つまり、パイロット版がつまんなくてどこのテレビ局にも拾われなかった作品は、日の目を見ないってことですね。なんか、そういうエピソードを怖いもの見たさで見てみたいのは私だけ?(笑)

いずれにしても、初回エピソードタイトルが「Pilot」である理由は、第一話が「パイロット版」だからなのでした。

でもさ、タイトルを後から変えても良さそうなもんだけどね(笑) 『フレンズ』は実際替えてます。

慣習「パイロット」を逆手に取った笑い

さて、パイロットについての話は大体これくらいなんですけど、最後にこの初回エピソードタイトル「パイロット」の慣習を逆手に取ったメタな笑いがあるので、それを紹介して終わりましょう。

黄色いキャラで有名なアニメ番組シンプソンズの製作者が作った別の神アニメ『Futurama』というのが昔ありました。日本では馴染みがほとんどないんですけど、そのエピソード1と2のタイトルがなかなか趣向を凝らして面白いんです。

シーズンエピソードエピソードタイトル
11Space Pilot 3000
12The Series Has Landed

最初のエピソードタイトルが、上述したパイロット版とストーリー上主人公が宇宙船パイロットになることに掛かっているのも面白いのですが、第2話の題名がThe Series Has Landed。イディオム「The Eagle has landed」に掛けて、アニメシリーズが偉業を成し遂げた(=テレビ局に購入された)と、エピソードタイトルでメタ的に言っているのですね(笑)

最後に

今回は海外ドラマの初回エピソードが「パイロット」である理由を見てみました。結局、テレビ局に買ってもらうために制作するパイロット版から来ているのですね。

ということで、皆さんの好きな番組の初回エピの英語タイトルをチェックしてみると面白いかもしれませんね。ネトフリ等のストリーミングサービスでは、使用言語を英語にすると英語タイトルが見られます。

さて、ここまで読んだ皆さんなら、既に「海外ドラマのエピソードタイトルで最も多いものは何?」のクイズに答えられるはずです。

もちろん「パイロット(Pilot)」! それでは〜


それじゃあ、2番めに多いエピソード題名は?↓

そもそも、なんでこんな変な題名が許されているのか?↓