日本語「カンニング」の意味

芥川龍之介が関東大震災に関するエッセイで面白いことを書いていました:

同胞よ。面皮を厚くせよ。「カンニング」を見つけられし中学生の如く、天譴なりなどと信ずること勿れ。

大正十二年九月一日の大震に際して / 芥川龍之介

天譴(てんけん)は神の怒りの意味。つまり、大地震を天罰と思わず堂々としてろと言ってるわけですね。ここで、「カンニング」という単語が出てきますが、明らかに現在と全く同じ意味で使われています。すなわち、「試験で不正行為」をすること。関東大震災は1923年に起きていますから、ほぼ100年前にすでにその意味になっていたことが分かります。

英語の「Cunning」の意味

でも、英語を勉強していると、ある時点で「cunning」という単語に出会うはずです(発音は/kʌ́nɪŋ/、カニング)。そして、驚くのは、cunningには「試験で不正行為」をする意味は無いんですね。というか、そもそも動詞ですらないんですよ。形容詞で「ずる賢い」の意味がほとんど。

『ビッグバン★セオリー』での「cunning」

例えば、次の『ビッグバン★セオリー』の場面は、シェルドンが自分のコレクターズアイテムの武器を取り上げられてしまう場面。相手のことをcunningと言ってます。日本語の「カンニング」の意味は全く無く、相手が「ずる賢い」と言ってるだけ。

シェルドン: Careful, it’s a collectible.
男(ドアを締めながら): I know. I’ve always wanted one.
シェルドン: He’s even more cunning than we thought.
『ビッグバン★セオリー』で、盗まれたネトゲーのアイテムを取り返しに来たシェルドンとレナード達
The Big Bang Theory [Credit: CBS]

日本語「カンニング」の由来

これって面白くないですか? でも、なんで「カンニング」が不正の意味になったのだろう?

Wikipediaによると

カンニング

1902年(明治35年)出版の内田魯庵の著書『社会百面相』では、「猾手段」にカンニングと振り仮名

とあるので、そのあたりで変わっていったんでしょうかね。

英語で「カンニング」を意味するのはcheat

それでは気になるのは、英語で(日本語の意味の)「カンニング」を一体どう言うかですよね。実は、これは「cheat(チート)」なんです。「チート」は不正行為をするという意味で、もう既に若者の間では日本語化されてる気がします。例えば、ゲームなんかでキャラの能力を通常できない方法で異常に高めるとかね。

だから日本でも、試験での不正行為を「カンニング」でなく「チート」と呼べる寸前までは来てる感じでしょうか。誰かがチート言い出せばカンニングは過去のもの になる気がしますから、若者の皆さんに期待です。

トレバー: You burned every bridge. You cheated on tests.
『グッド・プレイス』で、悪魔のトレバーに悪い人間とされるエレノア
The Good Place [Credit: NBC]

英語の「cheat」は「不倫」も意味

ちなみに、海外ドラマの中での 「cheat」の重要な用法は「不倫」 です。「cheat on + 人」として「〜を裏切る、不倫する」の意味で頻出。

この用例は、こちらも『ビッグバン★セオリー』の中に見られました。レナードの母親が、父親が不倫したから離婚すると述べます:

レナード母: Oh, speaking of fathers, Leonard, that reminds me. I’m divorcing yours.
レナード: What?
レナード母: Yes. He was cheating on me.
『ビッグバン★セオリー』で、レナードの母が離婚を息子のレナードに伝える
The Big Bang Theory [Credit: CBS]

「He was cheating」と過去進行形なのが面白いです。一度じゃなくある時期ずっと不倫してたんですね(笑) ちなみに、divorcingの方は離婚する予定ってこと。get divorcedとdivorceの違いはmarry vs. get marriedで考えると分かりやすいですね。

最後に

今回は「カンニング」と「チーティング」の違いについてさらっとまとめてみました。英語のcunningは「ずる賢い」で、cheatが「カンニング」なのでした。日本語とごっちゃになるので注意ですね。また、cheatは不倫を表す時に出てくるのも見ました。

なお、不思議なのが日本語でどうしてカンニングが試験の不正の意味になったかですが、残念ながら自分が調査した限りでは確認できませんでした。案外、カンニングの下準備をしていた生徒の横を通りがかった英語ができる生徒が「cunning(ずる賢い)」とつぶやいたのが発端かもしれませんね。まあ、カンニングというing形っぽく響くのも、日本人にすんなり動詞として受け取られた一因なのかな。それでは〜