『クイーンズ・ギャンビット』のあらすじと感想【ネタバレあり】
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チェスと私
今回は久しぶりに良作の海外ドラマ『クイーンズ・ギャンビット』に出会えたのでその感想を。
ところで本題に入る前に、実は私はチェスが多少できるんですよね。ルールだけでなく普通に対局もできます(弱いけど)。実際、今までいくつかチェス関連の記事を書いてきたほど(笑)
だから、以前フィリピン留学した時は、現地の人とチェスで勝負したくらいです。こういう共通の趣味があると話が弾みますよね。コミュニケーションは言語(英語)だけではなく、文化も重要という証左です。
そんな私なので、以下の感想は多少favoritism(えこひいき)が入っているかもしれませんのでご了承を。なお、この海外ドラマに関しては、チェスを知らなくても普通に楽しめますけど、チェスのことを知ってるとより一層楽しめることは請け合いです。
『クイーンズ・ギャンビット』のあらすじ
ドラマはまず、主人公エリザベスがチェスの試合に遅刻するところから始まります。対戦相手を見つめていると過去のことがフラッシュバックされ、子供時代からのエリザベスことベスの過去が明らかにされていく仕組み。なお、このチェスの試合のシーンに戻ってくるのは、なんとエピソード6まで待つ必要があります(笑)
ベスの子供時代は、交通事故で親が死に孤児院に連れて行かれるという悲惨な状況からスタート(後半、家庭の事情や交通事故の真実が明らかにされる)。当時、子供には精神安定剤を配ってたみたいで、後で親友になる黒人女性の先輩ジョリーンから、薬をもらう昼間に飲まずに寝る前に飲むと良いとアドバイスを受け、そのせいで次第に薬物中毒になっていくベス。ジョリーンからはcracker呼ばわりされます(笑)
授業を抜け出した折、用務員シャイベルがやっているゲームに興味を持ちます。それがチェスなのでした。次第に授業をサボってシャイベルの元へ行きチェスを教えてもらい、ベスはそれにハマっていきます。夜な夜なベッドに横たわって精神安定剤を飲むと天井にチェス盤が現れ、その上を駒が動く幻想まで見る始末。頭の中で自分自身と対局して強くなっていきます。ちなみに、このCGはしょぼいです。
でも、そのカイあって、ベスのチェスの実力はメキメキ上昇していきます。後でベスの母親が数学者であることが暗示されるので、その才能を受け継いでいるのも理由の一つかな? シャイベルの方も、チェスにおける新しい概念をこの子に次々と教えていき、それをスポンジのように吸収するベス。この辺は、師匠が弟子に教えていく王道パターンですね。なお、最初シャイベルは、ベスに黒番をもたせるという不利なことを強いてますね。チェスでは先手の白が有利ですから。
そして、シャイベルが次第に相手にならなくなるんですね。弟子が師を超える瞬間です。シャイベル所属のチェスクラブのメンバーを呼び、そして高校生相手に多面指し(simul)までさせるも、全て圧勝するベスなのでした。地元では敵なしってやつ。
ところで、途中時期が来ると、シャイベルはあるチェスのオープニング(定跡)を教えるんです。それがタイトルにもなっている「クイーンズ・ギャンビット」なのです。
この「クイーンズ・ギャンビット」はチェスにおけるホワイト側(白・先手)の戦略の一つで、初手にクイーンの前のポーン(左から4番目)を2マス進ませ、黒も同様にクイーン前のポーンをプッシュしてきたら、クイーン横のポーン(左から3番目)を2マス進ませ、そのポーンを犠牲にしてまでも盤面上の優位を築こうとする戦法。
つまり、将棋で言えば、序盤早々駒損をする代わりに駒効率や駒の伸展性で損を取り戻すことを主眼とするんですね。囲碁で言えば、序盤早々に石は取られるけど、中央への厚みが活かせるとかそんな感じ。穏やかな進行ではないんです。
ちなみに、せっかくおじいちゃんに教えてもらった「クイーンズ・ギャンビット」ですが、肝心のベスはドラマ内でそれを使わないんですよね(笑) ベスが白番の時詳しく見てもらえれば分かりますが、決まって左から5番目のポーン、キングの前のものを2マス進ませるんです。行った先が白いマスなので分かりますね。
でも、「クイーンズ・ギャンビット」を使わざるをえない対戦相手が現れるんですね。それが、ラスボスのソ連世界チェスチャンピオン。なにこの王道的なシナリオ(笑) 結末はご自身の目で確認を。
話をあらすじに戻すと、孤児院の後は、仲が破綻している夫婦に引き取られ、そこからチェスで地元からアメリカチャンピオンまで無双していくベスの構図です。ただし、その間に、チェスを通じて知り合った複数の男性との関係や、継母のアルコール依存症の問題。自身のアルコール・薬依存症の問題など、チェス以外で抱える問題も描かれます。そして、それをどう乗り越えていくのか。
それから、上で述べたように、アメリカチャンピオンになって国の威信を賭けて、ソ連と戦うというシナリオ。といっても、アメリカ政府が渡航費用出さなかったり、それほどアメリカ代表ってわけでもないんですけどね。この辺は少し疑問が残りました。
『クイーンズ・ギャンビット』の感想
さて、ここまで聞くと、かなりコテコテのストーリーだと思うでしょ。実はその通りなんです。めっちゃ先が予想できちゃいます(笑) でも個人的には逆にそれが心地よかったりします。あまり裏切られないと言うか。実家に帰った安心感と言うか。
多分、このチェスドラマの新規性は女性が主人公というところでしょうかね。prodigy(神童)なんてのはチェスの世界にはゴマンとあるし、チェスプレイヤーの奇行だって、事実は小説より奇なりというように、実際の話がフィクションを超えてるレベル。と言っても、男だらけのチェス社会で女性のベスが頑張っていく姿を描くって感じでもないんですけどね。一応描かれますが、それは主題ではないと言うか。最後にベスが友人たちが手を差し伸べていることに気づくので、そういったきずな・友情が強く印象に残りました。 特に、孤児院に戻るところはかなり泣けます。
さて、このドラマの良かった点ですが、まずベスの子供時代の子役の演技がすごかった。もう、本当にチェスの天才児って感じ。だからからか、エピソード2から急遽登場したアニャ・テイラー=ジョイのベスにめちゃ違和感(笑) 間にもうひとり子役を置くかしたほうが良かったと思います。
登場人物で言えば、ベスが戦うアメリカチャンプの若造ベニーもキャラ作りがかなり失敗してる感じがしました。南部のカウボーイでも意識してるんでしょうが、そりゃないでしょ(笑)
あと、チェスのゲーム内容でも少し違和感。というのも、チェスは引き分け(ドロー)が多いことで有名なんですけど、このドラマではそれがないんですね。まあ、ドローだとつまらないというのがあるのでしょうけど、そこは現実とはかなり違う感じでした。
まあ、それ以外は海外ドラマ1万エピソード以上見てる自分でも楽しく見られたので、チェスなんかの思考ゲームに抵抗がないのなら面白く見られることは私が保証します。最後のソ連編が慌ただしくも感じましたが、もう1エピソード増やす必要はないかな。
IMDbでも現時点で☆8.9⤴️とかなりの高評価。まあ、これはちょっと高すぎる感もしますけどね。
結論は、『クイーンズ・ギャンビット』はかなりおすすめです。時間があるならぜひ見てみてください。それでは〜
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