死者の両目にコイン・石を置く風習

Netflixの新作アニメ『ゼウスの血』を見ていたら面白いシーンがありました。

途中で主人公の母が死ぬんですが、その両目にコインを乗せるんですね:

『ゼウスの血』で、死者の目の上ににコインを置く
Blood of Zeus [Credit: Netflix]

これ見た瞬間、「あっ、これって見たことある!」と感じました。そして少考ののち、海外ドラマの『ゲーム・オブ・スローンズ』でも出てきたことを思い出したのです:

『ゲーム・オブ・スローンズ』で、ジョフリーの葬式で、両目の上に石を置く
Game of Thrnes [Credit: HBO]

場面はジョフリー王が死んだ後の葬式の場面。確かに両目の上に何かを置いていますね。でもこれはコインではなく、目を描いた石のようです。

『ゼウスの血』は名前からも分かる通りギリシア神話を題材としてるので、この両目にコイン置きはそっちの風習から来てるのは明白ですが、『ゲーム・オブ・スローンズ』でもその風習を真似ているのかと、この瞬間は思った次第です。

でも、このコインと石(目が描かれた)の違いがなんか微妙に気になったので詳しく調べてみると、かなり違うことが分かりました。

『ゼウスの血』でのコイン置き

まず、『ゼウスの血』でのコイン。これはギリシア神話で、死んだ後に死者の世界に行くのに河を渡るんですが(三途の川的な)、その河の渡し守がカロン(カローンとも)。そのカロンに便宜を図ってもらうため賄賂的な金を支払う必要があり、死者にコインを持たすために置くということらしいです:

概要: カローン

(カローンは)櫂を持ち襤褸を着た光る眼を持つ長い髭の無愛想な老人で、死者の霊を獣皮と縫い合わせた小舟で彼岸へと運んでいる。渡し賃は1オボロスとされ、古代ギリシアでは死者の口の中に1オボロス貨を含ませて弔う習慣があった。1オボロス貨を持っていない死者は後回しにされ、200年の間その周りをさまよってからようやく渡ることができたという。

つまり、金を持っていかないと後回しにされるという、地獄の沙汰も金次第という切ない話なのでした(笑)

でも、上の説明だと2つの点でおかしいですよね。まず、1オボロスなのに2枚持っていってる点。そして、アニメでは口じゃなく目に乗せてる点。

この説明は英語版WikipediaのCharon’s obol(カロンのオボロス)というページに一部載っていました:

Coins on the eyes?: Charon's obol

there is little evidence to connect the myth of Charon to the custom of placing a pair of coins on the eyes of the deceased

Ancient Greek and Latin literary sources, however, mention a pair of coins only when a return trip is anticipated

カロンの神話と目の上にコインを載せる風習の関連性は不明だ。

(略)

古代ギリシアやラテン語文学によれば、戻ってくることが予期される時にコインのペアが言及されている

つまり、死者の国への片道切符ではなく、なんかのタイミングで生者の国へ戻ってこれる時に備え、コイン2枚で周遊きっぷを買っているわけでした(笑)

確かにアニメ『ゼウスの血』では、この後実際渡し守にコインを2枚渡しているのです。目の上に置いてあった2枚のコインを。帰ってこられる可能性はゼロではないってことですね。

『ゼウスの血』で、河の渡し守カロンに駄賃の硬貨2枚を渡す
Blood of Zeus [Credit: Netflix]

でも残念ながら両目に乗せてる理由までは不明でした。

『ゲーム・オブ・スローンズ』での石置き

逆に、両目の理由は『ゲーム・オブ・スローンズ』の風習を調べれば分かるかもと、そちらの風習も深堀りしてみることにします。『ゲーム・オブ・スローンズ』のfandomに、その名もズバリFuneralというページがあるじゃないですか。

その中の一文が『ゲーム・オブ・スローンズ』でのこの風習の説明をしっかりしてくれています:

Faith of the Seven: Funeral

Two funeral stones are also placed over the closed eyes of the deceased, each painted to resemble open eyes. The symbolic meaning of this is to remind the faithful that they should not fear death, because it is not truly the end: we close our eyes in this world, but our eyes open again in the afterlife.

2つの葬儀石が死者の閉じられた両目の上に置かれる、それぞれの石には開いた目が描かれる。この象徴的意味は、死を恐れないという信義を思い出させることだ、何故なら、死は終わりではないから: 我々はこの世では目を閉じるかもしれないが、来世では再度目を開けることができるのだと。

ということで、『ゲーム・オブ・スローンズ』の両目に石を乗せる儀式はこのドラマ内での宗教や死生観が色濃く反映されているものなのでした。

  • 目に置く理由 → 来世でも目を開く
  • 2枚の理由 → 目が2つ

ということで、『ゼウスの血』とは全く違う理由でした。

似たような風習なのに全く別ってのが面白いですよね。そして、リアルのギリシア神話よりもフィクションの『ゲーム・オブ・スローンズ』の方が設定に真実味があるのが個人的に驚きでした。それが大人気になった秘訣なんでしょうかね。

最後に

今回は死者の目の上に物を置くという儀式が2つの番組、アニメの『ゼウスの血』と海外ドラマの『ゲーム・オブ・スローンズ』であったので、それぞれの真の意味を調べてみました。

似たような風習ですが、意味は全然違っているのが興味深いですね。

日本にも同じような風習はあるのかちょっと気になりましたが、死者の目になんかあるのは個人的に心臓止まってしまいそうです。実際、最初『ゲーム・オブ・スローンズ』のこの風習を見た時は、あの死者の目の上の石を見てギョッとしてしまいましたから(笑)

それでは、また〜