同じセリフでも発言者によって意味は変わる

同じ英文でも、それが発せられる状況によっては意味が大きく変わることがあります。

以前紹介したWhat’s the matter with you?なんてのがその典型で、相手のことを心配してるのか、相手の頭の中を疑っているのかは状況依存です。

また、全く同じ状況でも、誰がそのセリフを発したかで意味が変わることもよくあります。

『デッド・トゥ・ミー ~さようならの裏に~』での例

そんな面白い例が海外ドラマの『デッド・トゥ・ミー ~さようならの裏に~』にありましたのでちょっと紹介。

場面は、ジェンの亡くなった夫(him)を(亡くなる直前)hitしたというジェンに、友達のジュディーが私の方がhitしたと言うシーン。セリフが全く同じですね。でも、このhitの意味はちょっと異なるんです。

ジェン: I hit him.
ジュディー: No. I hit him.
『デッド・トゥ・ミー ~さようならの裏に~』で、ジェンとジュディー両者が自分を責める
Dead to Me [Credit: Netflix]

妻ジェンの場合は、夫婦喧嘩の文脈で言っているので、このhitはぶった・殴ったの意味で言ってます。実際その後のシーンでは、動詞をpunchにして言い換えています。なお、このV + 人 + in the 体の一部のパターンはよく出てくるので、前置詞はinと覚えておくと役立つと思います。

ジェン: I punched him in the face.
『デッド・トゥ・ミー ~さようならの裏に~』で、ジェンは夫を殴ったことを告白
Dead to Me [Credit: Netflix]

そしてジュディーの方のhitですが、家から追い出されたジェンの夫をその後運転する車でhitしたんです。つまり、はねた・轢いたのでした。

『デッド・トゥ・ミー ~さようならの裏に~』で、ジュディーはジェンの夫を車で轢く
Dead to Me [Credit: Netflix]

このようにたとえ同じセリフでも、発言者の意図するところは違ってたりすることはあるんですね。文脈が違えば、意味は大きく変わり得るんですね。

なお、これは英語だけでなく、日本語でも同じ話ですよね。例えば、「夜道に気をつけろ」と怖い人に言われれば、それは脅しと感じるでしょうし、一方親しい人から言われれば 、それは単なる注意としか響かないのです。

それでは、多少知り合いの極道な人から「夜道に気をつけろ」と言われたらどっちなのでしょうか? もう、その人の心の中を覗かない限り正確な意図は分かりませんね(笑)

冗談はさておき、ここでまとめると、「I hit him」という単純な英文の意味でさえ、どういう状況で誰が発したかで大きく変わり得るってこと。だから、とあるフレーズの意味を知りたい場合には、それが使われた詳しいコンテキストを付けると質問を受ける方も幸せだったりします。説明の正解の可能性が高くなりますからね。コンテキストがない場合は、回答者が標準と考える意味でしか説明できないので、ネイティブに質問するとどういう状況で使われたか根掘り葉掘り聞いてくることがあります。

最後に更に一つ重要な点があって、実は発言者本人も自分の発言の意味を理解してないこともままあること。どうしてあんなこと言っちゃったんだろうってのは人生につきものですよね。疲れてたり、混乱してたりで。海外ドラマなんてまさにそんな状況の連続だったりします(笑)

それでは〜