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redditで「Gallows Humor」かどうかの議論

redditを見ていたら、浜辺にあった死体と一緒に写真を撮ってニュースとなってる警察官についてのスレがありました。

このニュースを聞いたとき、真っ先に思い出したのが『ブレイキング・バッド』のハンク。彼も、ドラマ内でギャングの死体と一緒に記念撮影してましたからね(笑)

『ブレイキング・バッド』で、ハンクは事件現場で死体と一緒に記念撮影
Breaking Bad [Credit: AMC]

ところで、redditのスレッドは思わぬ方向に進んでいきます。この「警察官が死体と一緒に写真を取る行為がgallows humorに当たるかどうか」で大いに盛り上がってるのです。

「Gallows Humor」の意味

自分はこの「gallows humor」というのを知らなかったので調べると、まず「gallows」は「絞首台」の意味でした。複数形ではないので注意。

絞首台のイラスト

そして、「gallows humor(絞首台ユーモア)」というのは、絞首台で死刑になる直前に出てくるようなジョークの意味。つまり、絶体絶命で悲劇的なときに思わず口に出てしまうたぐいのユーモア。

だから、redditの記事に戻ると、警察官の行為は、死体などを扱う悲劇的でストレスマックスの状況下で出た「gallows humor」なのかどうか?、とみんな議論してたんですね。自分の精神を落ち着かせるために、社会通念上許されない行動を人々は取ってしまうものなんです。

ちなみに、この記事の警察官がどうかは定かではありませんが、『ブレイキング・バッド』のハンクは後で精神的に相当参るので、「gallows humor」の一種だったのが分かります。

「Gallows Humor」の創始者

「絞首台ユーモア」の気になる創始者ですが、Wikipediaによれば、『ガリヴァー旅行記』で有名なジョナサン・スウィフトではないかとされています。彼が「ブラックユーモア」と「絞首台ユーモア(死刑台のジョーク)」の創始者として本で紹介されているみたいですね。

Black comedy

ブルトンが1940年出版の著書ブラックユーモア選集でこの用語を命名した。その中で彼はジョナサン・スウィフトがブラックユーモアと絞首台ユーモアの創始者と考えた。

Breton coined the term for his 1940 book Anthology of Black Humor (Anthologie de l’humour noir), in which he credited Jonathan Swift as the originator of black humor and gallows humor

海外ドラマでの「Gallows Humor」の使用例

なお、「gallows humor」を海外ドラマの字幕から拾ってみると、ちょっと面白い傾向がありました。なんか、絞首台の前に立たされている絶望的な状況じゃなくても、使われているんですね。

『刑事コロンボ』から

『刑事コロンボ』では、誘拐身代金を犯人に渡してきた男に質問を繰り出すコロンボ。男は「今日は大変な一日だったから明日にしてくれ」と言うと、コロンボは「Have a pleasant night」。男はこれを「gallows humor」と受け取ります。というのも全然「pleasant」でないからですね。個人的に、これは単にブラックジョークってだけで、絞首台の前に立ってる時出てくる感じではないかな。

コロンボ: Have a pleasant night, sir.
男: I presume that’s gallows humor.
『刑事コロンボ』で、身代金を犯人に渡した男はコロンボの尋問を明日にしたいと言う
Columbo [Credit: NBC]

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』から

『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』では、ロシア・マフィアと汚職警官組織(HR)が一触即発の事態になる場面。フィンチは「自分のgallows humorを許してくれ」と事前に謝ってから、put my money onで、この勝負はHRに賭けると述べます。ここは、悪の組織同士の抗争で、どっちが勝つか賭けるってジョークみたいな状況だからですね。こちらも、絶望的な状況とまでは言えないかな。gallows humorの定義に従っているかは、かなり微妙なところ。

If you’ll forgive my gallows humor, I’ll put my money on HR.
『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』で、フィンチはHRがロシアンマフィアに勝つと予想する
Person of Interest [Credit: CBS]

『スーパーガール』から

さて、『スーパーガール』になると、「gallows humor」は根本的に違うんです。場面は、ウィンの母親がDEO(超常現象省)の中を興味津々うろつくところ。「トイレの場所は?」と聞かれてウィンが場所を教えると、「そこはenhanced interrogation(強化取り調べ)で閉まってた」と母はジョークを飛ばします。スーパーヒーローは能力がenhancedなので、取り調べもenhancedというニュアンス。ウィンに睨まれても、母親は「少しくらいgallows humorがあっても誰も死にはしない」と涼しい顔。ここなんかが「絞首台ユーモア」から絶対的に外れる使われ方。というのも、誰も絞首台に立ってる状況じゃないので。単に「ブラックジョーク」「場にふさわしくないジョーク」ってだけなんです。

母親: I tried that one, but it was closed for “enhanced interrogation.” Kidding. Just kidding.
ウィン: You think this is funny?
母親: Oh, a little gallows humor never killed anybody.
『スーパーガール』で、ウィンの母親がDEO内をぶらつく
Supergirl [Credit: CBS]

最後に

今回は「gallows humor」という耳慣れない用語について調べてみました。意味は「絞首台ユーモア」。絞首台の前に立った時の絶望的な状況で出てしまう笑いのこと。と言っても、現状は杓子定規に使われるわけではなく、単なるブラックジョークにも使われる感じかな。というか、元々の意味で使われる場面を見つけることはできなかった。そして、絞首台に立ってすらいない他人が言うのが面白いところ。

ところで、絞首台に立った死刑囚の冗談を実際聞いた人はいるんでしょうかね? 語源のスウィフトは聞いたのかな? まあ、そういうのは、全て生きてる側の想像の産物なのかもしれませんね。

それでは〜


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