受験英語イディオム集

先日本屋に行った際の話。通常はこのブログのネタにでもと英語学習棚を眺めるんですが、その時は受験真っ盛りということで、にぎやかな受験英語の棚を見てみました。その中に「受験英語イディオム集」的な本があって、ちょっと興味を惹かれます。だって、受験でどんなイディオムが出るかって、興味あるじゃないですか。そこで、ページをめくってみたら驚いたのなんの。

これイディオムじゃないじゃん!

なんと、自分の中でイディオムでないものがたくさん載ってたんです。

書店の棚
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英語「Idiom」の定義

ここで、私のイディオムの定義ですが、「字句通りの意味とは違う意味を持つ」です。このブログでもその意味でずっと使ってきました。

例えば、日本語だと「へそで茶を沸かす」。これの字句通りの意味は、人間のへその上でお茶を沸かすってことですけど、多分そんなことできる人は居ないはず。そう願いたいですよね(笑) ま、実際の意味は「ばかばかしい」ってこと。

だから英語でも、個人的には、「out of the blue」はそのまま訳しても意味をなさないのでイディオムですが、「out of nowhere」はイディオムじゃないんです。だって、「何もないところ(nowhere)から(out of)」って、字句通りの意味じゃないですか。ちなみに、out of the blueout of nowhereはほぼ同じ意味「どこからともなく突然」ですね。

閑話休題。それなのに、件のイディオム集には「once in a while」とか「look at」って、個人的にイディオムっぽく思えないものがイディオムとして出てきたんです。よく使われる定型句ってだけの気が・・・。

そこで疑問に思い、「idiom」という英単語について詳しく調べてみることにしました。まずは個人的に2冊所有しているPractical English Usageを引いてみます:

What are idioms?

turn up(到着を意味)、break even(得でも損でもない利益を稼ぐ)、a can of worms(複雑な問題)のような表現は理解するのが難しい。何故なら、表現内のそれぞれの単語の意味とは違うからだ。(もし君がbreakevenの意味を知っていても、break evenを理解するのには全く役に立たない)。このような表現はイディオムと呼ばれる。イディオムは通常一つの言語に特有で、単語ごとに他の言語に訳すことはできない(関連する言語は同じイディオムを持つかもしれないが)。

An expression like turn up(meaning ‘arrive’), break even(meaning ‘make neither a profit nor a loss’) or a can of worms(menaing ‘a complicated problem’) can be difficult to understand, because its meaning is differrent from the meanings of the separate words in the expression. (If you know break and ’even’, this does not help you at all to understand break even.) Expressions like these are called ‘idioms’. Idioms are usually special to one language and cannot be translated word for word(though related language may share some idioms)
Practical English Usage

つまり、一語一語の意味を組み合わせても全体の意味にはならない理解が難しい表現ってことですね。私の定義とほぼ一致しています。また、一つの言語に特有というのもidiomの特徴。つまり、「へそで茶を沸かす」を逐次訳して他の言語に持っていっても通用しませんし、英語の「out of the blue」を日本語に直訳して「青から先生が現れたんだ」と言っても通用しないわけですね。

英語「Idiom」の語源

もう一つ、オンライン辞書Wiktionaryも見てみましょう。こちらにはidiomの語源が載ってます:

idiom

Etymology

from Ancient Greek ἰδίωμα (idíōma, “a peculiarity, property, a peculiar phraseology, idiom”)

idiomは独特(peculiar)な言葉遣い(phraseology)から来ているのが分かります。つまり、その言語独特な言い回しってこと。

日本語「イディオム」の定義

それでは、もう一方の、日本語の「イディオム」の意味も調べてみましょう:

イディオム

慣用句。成句。熟語。
スーパー大辞林

慣用句

二語以上が結合し,その全体が一つの意味を表すようになって固定したもの
スーパー大辞林

成句

二語以上の語が習慣的に結び付いて,ある決まった意味を表す言い回し。
スーパー大辞林

熟語

二つ以上の単語が結合してできた語。合成語。複合語。
スーパー大辞林

なんと、日本の「イディオム」は単に2語以上からなる表現のことみたいです。そこには、字句通り意味を取ると別の意味になる等のその言語独特さの制限はないんです。なるほど、だから「受験英語イディオム集」が句動詞から定形表現まで、2語以上の組み合わせなら全部入っていたわけですね。ちなみに、この「2語」という数的な制限も、言語によってはカウントの仕方が変わる気もしますね・・・

まとめ

いずれにしても、結局、英語の「idiom」と日本語の「イディオム」は別物ってことですね。多少重なってる部分はあるけど、一致はしていない。例えば、面倒を見るの「look after」は英語でも日本語でもidiom兼イディオム。しかし「look at」になると、idiomでないけど、イディオム。なんじゃそりゃw。言語学習あるある、いつものパターンでした(笑)

なお、個人的に好きな「イディオム」の別の定義は、外国人がイディオムを字句通りに受け取ると笑いに繋がるというものです。

これは英語の「idiom」の意味を考えれば一目瞭然。「首を切る」と言われて、beheadの心配をする外国人を想像すれば笑えますよね(笑) 逆に「首を切る」と言われて物理的に首を切られることを心配をする日本人は、一般常識がないと取られるだけ。

この勘違いしても笑いで済むは言語学習者の最大の特権の一つなので、皆さんも是非試して周りを爆笑の渦に巻き込んでみてください。lend(give) a hand言われて、自分の手をのこぎりで切ろうとするとか(笑) それでは〜