海外ドラマ刑事モノにおなじみの筋

海外ドラマの刑事モノシリーズを見てると必ず出てくる筋があります。それが模倣犯もの。以前起きたのと同じような事件が起き捜査班は同じ犯人の仕業と考えるんですが、実は別の人物が前の事件を模倣して起こしているというパターンです。

リズボン: So, yeah, this one doesn’t fit the pattern.
チョウ: So Jane was right. We have a copycat.
『メンタリスト』で、リズボンはレッド・ジョンの仕業ではないというジェーンを認める
The Mentalist [Credit: CBS]

「Copycat」で模倣犯の意味

そんな時にお馴染みの語彙といえば、模倣犯を意味する「copycat(コピーキャット)」ですよね。

でもさ、この単語ってよく考えたらすごい不思議なんです。

なんでcatが入ってるの??

copyは分かるんですよ、模倣してるんだからコピー。でも、問題は「猫(cat)」。猫って真似がうまいとかあるんでしょうか? それとも・・・

以下の『ジ・オフィス』で、アンジェラが「copycat」でなく単に「copy」と言えと主張していますが、確かにそう思えてしまいますね。なお、彼女の場合は極度の猫好きなので(猫好き独女のお約束)、それが理由で猫を引っ張り込むなと言ってます(笑)

ドワイト: They shouldn’t televise any of this. It just encourages copycats.
アンジェラ: Just say copies. Why do you have to drag cats into this?
『ジ・オフィス』で、アンジェラがドワイトに突っ込む
The Office(US) [Credit: NBC]

「Copycat」の語源

そこでWiktionaryで調べてみると、なんとcatには人を貶した使い方があるというんです:

copycat

語源

copy +‎ cat(人を表す昔の軽蔑的な用語)から。

Etymology

From copy +‎ cat (“former derogatory term for a person”).

こちらの様子をうかがう猫
Image by Doris Metternich from Pixabay

「Cat」が人を貶して使われるパターンを探して

でも、自分はこの「cat」の使い方って今まで一度も見たことないんですよね。formerとあるので、古い言い方なのは分かりますけど、どこかで使われていないだろうか? そんな疑問を持ってしまい、週末海外番組の字幕を探してみました。ちなみに、これが相当大変だった。というのも、catなんてそれこそ頻出する単語なので(笑)

マイケル・ジョーダン: ラストダンス

まず見つけたのが『マイケル・ジョーダン: ラストダンス』の中で、ジョーダンがシカゴ・ブルズに入団した当時をチームメイトが回顧する時に、ジョーダンのことを「cat」と言うんですね。でも、ここでは明らかに軽蔑的ではないし、単に隠喩でジョーダンの身体能力を猫科に例えているだけ。どうも違うようですね。

you can see that this guy is the best player here. This cat is different.
『マイケル・ジョーダン: ラストダンス』で、元チームメイトのインタビュー
The Last Dance [Credit: Netflix]

スラング「Fat Cat」

更に調査すると「fat cat」というスラングを見つけました。意味は「金持ち」のことですね。

fat cat

  1. (スラング、元々の意味)政治活動に貢献する金持ち。同意語:angel, big money man
  2. (スラング、軽蔑的)労働搾取をして儲けていると思われている裕福な人
  1. (slang, originally) A rich person who contributes to a political campaign. Synonyms: angel, big money man
  2. (slang, derogatory) Any affluent person who is perceived to have profited from the labour of others.

「fat cat」は海外ドラマでもたまに登場します。

『メンタリスト』では、ジェーンがお金持ちの周囲を嗅ぎ回って怒らしてクレームが入ります。リズボン一同はそんな金持ちのプレッシャーには屈しないと上司に強弁です。『メンタリスト』では、よくあるパターンですね(笑)

リズボン: I’m not gonna lay off because some fat cat’s putting on the pressure.
部下: Me too.
『メンタリスト』で、リズボン一行はジェーンを応援する
The Mentalist [Credit: CBS]

この「fat cat」は同意語に「angel」があることからも分かるように、元々は侮蔑的な意味はなく、単に政治家を支援する金持ちをデブ猫で例えただけのようですね。なので、ちょっと違うっぽい。

デブ猫が湯船に浸かる
Image by crystal kim from Pixabay

ただ、「fat cat」のような合成語の可能性はあるので、合成語を攻めてみることに。すると・・・

Scaredy-cat

字幕に「scaredy-cat」が何回か使われているのを発見。恐る恐るWikitonaryで調べてみると

scaredy-cat

語源

scared +‎ -y +‎ cat.

名詞

臆病者;簡単に怯えたり緊張したり怖がる人。

Etymology

scared +‎ -y +‎ cat.

Noun

A coward; a person who is easily frightened or high-strung and easily scared.

というように、この「cat」が「copycat」と同じ意味の「人」の意味のcatでした。やったね、ようやく見つけた(笑)

なお、同意語の「fraidy cat」も同じですね。

『GLOW』の「scaredy-cat」の例

カジノの従業員がギャンブルしない理由として「自分がscaredy-cat」を挙げます。

I can’t gamble here, it’s against the rules. And I’m a little bit of a scaredy-cat when it comes to taking risks, so…
『GLOW』で、カジノの従業員がギャンブルしない理由を語る
GLOW [Credit: Netflix]

『ママと恋に落ちるまで』の「Fraidy Cat」の例

マーシャルのフラッシュバック。子どもたちに屋根から飛ぶように急かされる。

子どもたち: Jump, you big chicken! Jump ! You fraidy cat!
『ママと恋に落ちるまで』で、子供時代のマーシャルが屋根から飛ぶフラッシュバック
How I Met Your Mother [Credit: CBS]

最後に

今回は英単語「copycat」になんで「cat」が付くのかを調べてみました。結局「人」を貶していう言い回しなんですね。同様の例は「scaredy-cat」などに見られます。

なお、こんなこと覚えるよりも、「猫」に関しては「A cat has nine lives」という格言を知っておいたほうが、海外ドラマを見る上では100倍役に立ちます。というのも「なかなか死なない、くたばらない、しぶとい」を意味してよく登場するからです↓ それでは〜