君がこの石版を読んでいるということは・・・
古代遺跡から発掘された石版に書かれた文

「死者からの手紙」で自分の死を匂わすお約束

死者が生者になんらかの有益なメッセージを残すのは物語を紡ぐ際に読者の興味を掴む技法の1つですが、そのメッセージの中で「自分がもうこの世にはいない」ことを匂わすのは、ある意味テンプレになっています。そして、このお約束は海外でも非常によく使われるんですよね。

「この手紙を読んでいるということは」の必然性

でもさ、実際その立場になってみたと考えると、「お前がこの手紙を読んでる時には、わしはこの世にはいない・・・」とか付け加える必要ってあるのかな?とも思うんです。宝の在り処なり、魔法の呪文なり、出生の秘密なりを書くだけでいいじゃんって(笑) なんでわざわざドラマチックにするんだよ・・・というところで、これは作家・脚本家がドラマチックにするために導入していることに気付きました(笑)

TV Tropesでの説明

テレビのお約束を集めたサイトTV Tropesでは「死者の手紙(Dead Man Writing)」と言う記事内で、このお約束が説明されています。以下、一部抜粋し和訳:

Dead Man Writing

これは死者からのメッセージだ、彼らは死を知りつつ書き残したり、伝達方法が方法だけに、彼らが死んで初めて発見される。しばしば有益な情報を含む、死んだ理由や、そもそもなぜ殺されたかの情報、そして死んでリーダーを巻き込んでしまったことへの謝罪。

(中略)

通常メッセージは「君がこれを見てる時、それは私が死んでいることを意味する」といった文章で始まる。しばしば封筒入りで、表には「私の早急な死の際に開封すること」と書かれている。

This is a message from a dead character, either left in the knowledge of their death or left in such a way that it won’t be seen unless they die. Often it contains useful secrets, the reason why he’s dead, the actual information that got him killed in the first place, and an apology for dying and getting the reader involved.

The message will usually begin with a sentence along the lines of, “If you’re seeing this, it means I’m already dead.” Often it comes in an envelope labeled “To be opened in the event of my untimely death.”

今回このお約束を調べてみたら、海外ドラマと同時にテレビゲームで出るくるパターンもありました。

海外ドラマでの「君がこの手紙を読んでいるということは」

以下、海外ドラマの「キミテガ」の例を見てみます。

ダーク

ヨナスが読むことになる手紙にも、このまま教科書に載せたいレベルのフレーズがありますね。こちらは「by the time」。

ヨナス: By the time you read this I’ll already be gone.
『ダーク』で、ヨナスは死者からの手紙を読む
Dark [Credit: Netflix]

ツイン・ピークス

パーカーが折りたたまれた手紙を読むと・・・。「俺を探すな、君を認識できない」という「死」ではなくモンスター変身パターンですね。

クーパー: When you read this, I’ll be gone. Please don’t try to find me. I don’t recognize you anymore.
『ツイン・ピークス』で、パーカーは残された手紙を読む
Twin Peaks [Credit: ABC]

ベター・コール・ソウル

『ベター・コール・ソウル』では、兄チャックからの本当の遺言。単なる兄としてだけでなく、いつも支えていた人物として覚えておいてくれれば・・・。

ジミー: I hope when you read this you remember me not only as your brother but as a person who was always in your corner.
『ベター・コール・ソウル』で、ジミーは兄チャックが残した手紙を読む
Better Call Saul [Credit: AMC]

レモニー・スニケットの世にも不幸なできごと

『世にも不幸なできごと』では、手紙でなく「メモ(note)」のパターン。見にくいですが、窓ガラスに人型の穴が開いているので、飛び降り自殺したのが分かります。

Violet, Klaus and Sunny: By the time you read this note, my life will be at it’s end.
『世にも不幸なできごと』で、クラウスは三兄妹に残された手紙を読む
A Series of Unfortunate Events [Credit: Netflix]

ワンス・アポン・ア・タイム

『ワンス・アポン・ア・タイム』では、thisだけですね。こちらも死んでるパターン。

Dearest Stepmother, by the time you read this, I will be dead. I understand that you will never have love in your life because of me
『ワンス・アポン・ア・タイム』で、残された手紙を読む
Once Upon a Time [Credit: ABC Studios]

ゲームから「君がこの手紙を読んでる時」

バイオハザード

『バイオハザード』に出てくる「ある研究員の手紙」もまさにこのパターン。

Researcher's Letter

エイダ、いま君が、これを読んでいるという事は、 私はすでに、私でなくなっているという事だ

Ada, by the time you read this, I’ll be something… different.

ハックネット

このゲームはハッキングのシミュレーション。冒頭にビットなる人物がテンプレのメッセージを残します。

if you’re reading this, I’m already dead.

『ハックネット』で、冒頭のビットからのメッセージ
Hacknet [Credit: Fellow Traveller]

最後に

今回は物語を読んでる人ならおなじみのお約束「君がこの手紙を読んでる時、既に俺は…」を見てみました。

技術の進歩とともに、メッセージを伝える媒体も紙からデジタルへ移行してるので、ビデオで「if you’re watching this…」なんかもありました。ただ、ダイイング・メッセージではなく、生まれてくる赤ん坊が成人した時に見せるため親が撮ってるパターンも多かったです(笑)

ブログなんかも、オーナーが死んでしまったら更新されなくなるので、「If you read this…」という記事を書いておいたほうがいいのかもしれませんね(笑) それでは〜