ユーザーのダッシュボード
某アプリ

A Way with Wordsに「Dashboard」ネタ

言葉に関してのよろず相談ポッドキャスト「A Way with Words⤴️」を聞いていたら面白い話題が。それは、車のメーター等の部分がなぜ「dashboard」と言うのかというもの。ボードは板だから分かるんですが、問題はダッシュです。英語の「dash」は既に日本語になっている「ダッシュする、急ぐ」の意味がありますが、それではダッシュボードの機能に合わない感じですよね。それで英語ネイティブの人もポッドキャストで質問となったわけです。

「ダッシュボード」の呼称の歴史

以下、番組の言語学者の回答を日本人向けに分かりやすくまとめてみます。

打ち付ける、打ち砕くの意味の「Dash」

まず、大昔、「dash」には「打ち砕く」の意味がありました。

dash

⦅文⦆ ; 〖~ A+副詞〗 〈人などが〉(激しく)A〈物〉をぶつける, 打ちつける, 放り投げる (!〖副詞〗は方向・場所の表現) ; 〈物〉を打ち砕く
ウィズダム英和辞典

⦅文⦆とあることからも、このdashが古い言い回しなのが分かります。

ちなみに、『神話クエスト』のCWがこのdashを「dash me upon the rocks」と使っています。この人、ファンタジーゲームの脚本家なので古臭い言い回しがスラスラ出てきます(笑) 以下のセリフが時代掛かった物だと分かる人はかなりの英語上級者。

CW: Your flattery is nothing more than a siren song meant to lure me in and then dash me upon the rocks. I shall not listen, lest I fall prey to your beautiful poison tongue.
『神話クエスト』で小難しい表現を使うCW
Mythic Quest [Credit: Apple TV+]

更に調べると、海外ドラマでは今でも「夢」や「希望」が打ち砕かれる時に「dash」が使われていました。

次の場面は『glee/グリー』で落ち込んでるレイチェルを励ますカートのシーン。相手を鏡に映して中に何が映っているかを問うのは海外ドラマあるあるですね。レイチェルは「filled with dashed hopes and dreams」と破れた夢と希望に溢れると自分自身を形容します。

カート: What do you see? Come on.
レイチェル: Sad, puffy, red eyes filled with dashed hopes and dreams.
『glee/グリー』で、カートはレイチェルを慰める
Glee [Credit: Fox]

水を撒く、吹きかけるの「Dash」

ポッドキャストによれば、「dash」はその後進化して、「打ち砕く」から「水・液体を撒く、吹きかける」の意味が出てきたようです。

dash

(他動詞、自動詞、時々比喩的に)撒く、散布する。

(transitive, intransitive, sometimes figuratively) To sprinkle; to splatter.

sprinkleと言う動詞での説明がポッドキャスト内でもされていましたが、スプリンクラーの機能を考えればその意味が「水を撒く」のは明らかですね。

スプリンクラーの噴射
Image by Daniel Borker from Pixabay

馬車の泥除けとしての「ダッシュボード」

さてここから「dash」が名称に適用されます。それが馬車の泥除け。

馬車
Image by dendoktoor from Pixabay

馬と御者の間に垂直に設置された板のことです。下の図で言えば、一番左にある板のこと。

馬車の構造
Image by Momentmal from Pixabay

ところで、なぜこんな仕切りをわざわざ置くのでしょうか? もしや馬のオナラよけ?(笑)

いやいや、実はぬかるんだ道での馬の後脚が跳ねる泥・水を防ぐために設置されたのでした。だから、これがdashされるのを防ぐという意味で「dashboard(ダッシュボード)」と名付けられても不思議ではないですね。

車の計器を付ける部分としての「ダッシュボード」

さて、人類が移動手段を馬から車に乗り換えると「ダッシュボード」も潰えたかと思いきや、これが意外にも生き残るんですね。

ダッシュボード

自動車の運転席とエンジン室の間の仕切り板。速度計などの計器を取り付ける部分。
スーパー大辞林

つまり、車時代になっても、エンジン(馬)と運転手(御者)を隔てる板を引き続き「ダッシュボード」と呼び続けたのですね、同じ位置にあるというだけで。もう既に泥水を跳ねる馬はなく、御者が濡れることは無くなったのにも関わらずに。

そして、そのスペースにメーター等の計器が備え付けられていくわけですね、可視化してひと目で車の現状を確認できるように

車のダッシュボード
Image by Mikes-Photography from Pixabay

データをひと目で確認できる画面としての「ダッシュボード」

さて、ここからデジタルな時代に突入すると「ダッシュボード」は更なる発展を遂げます。それが、ひと目で確認できる画面と言う意味での「ダッシュボード」です。「ダッシュボード」を見ることで車の状態をひと目で確認できるのだから、それを踏まえて、PCやWEBアプリ上でもひと目で状態を見通せる画面を「Dashboard」と呼ぶのは自然だったのですね。今では各種アプリやWEBサービスで、状態を一括で確認できる画面をダッシュボードと言ったりしています。

例えば、下の画像は私のGoogle Dashboardですが、アカウントに紐づくメールや画像数等のグーグルの各種サービスの情報がひと目で分かるようになっていますね。

Google Dashboard
Google Dashboard

ちなみに、Google Dashboardの説明には

あなたが使っているサービスのまとめと、あなたのグーグルアカウントに保存されているデータ

See a summary of the services you use and the data saved in your Google Account

ですから、ここではサマリーといったニュアンスです。

最後に

今回は「ダッシュボード(dashboard)」の呼称の変遷がかなり面白く記事にしてしまいました。結局元々のダッシュボードは馬によって泥や水が巻き上げられ御者に掛かるのを防ぐために設置されたわけですが、今現在もその名称が使われ続けているのは言葉のダイナミクスを感じさせてくれます。

こんな素敵な話に巡り合わせてくれたポッドキャスト「A Way with Words」には大感謝ですね。

個人的に、英語の勉強に特化したポッドキャストよりも、こういった普通のポッドキャストの方が内容が面白かったりしますね。まあ、そのためには英語リスニング力を相当つけないといけないんですけど。リスニング力の向上には海外ドラマを英語で視聴するのが手っ取り早いと思いますよ。それでは、また〜


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