『ママと恋に落ちるまで』の「Knock on Wood」

シットコム『ママと恋に落ちるまで』に面白いシーンがあります。彼女が居ないことを友人たちから茶化されるテッド・モスビー。でも、モスビー夫人はいつか見つけると言って、「knock on wood」と言いつつ木製の壁を叩くんです。

Okay, okay, I know I haven’t found Mrs. Mosby yet, but I will, knock on wood.
『ママと恋に落ちるまで』で、魔よけに木の壁を触るテッド
How I Met Your Mother [Credit: CBS]

明らかに、何らかの特別な意味が込められていますが、これって一体何なのでしょう? 海外ドラマでは結構おなじみなんですけどね。

「Knock on Wood」の意味

まずWiktionaryを引いてみましょう:

knock on wood

間投詞

(イディオム的、アメリカ)願わくは、悪運を回避するための慣習的な行動を始めるための自己指示。

Interjection

(idiomatic, US) Hopefully; a self-directive to undertake the customary action to ward off bad luck.

結局、テッドは「願わくば、奥さんを見つけるぞ」と意味しているのでした。そして、その理由は悪運を避けるためとのこと。ただ、この説明だけでは意味が半分しか分かりませんね。上記記事続きに注意書きがありましたので、そちらも見てみましょう:

knock on wood

使用上の注意

この表現は、ちょうど今言った何かが起きなかったり(もし起きないのが悪いことであれば)、何かが起きる(良いことなのであれば)可能性を防ぐため、迷信的に使われる。実際の行動(木製品を叩く)は実行されたりされなかったりする、話し手がどのくらいこの迷信に忠実であるかに応じて。もし、正確に受け取られるのであれば、「knock on wood」と叫んでいる最中や直後に木製製品に物理的に触れる行動を伴うのが通常だ。短時間で木製品を見つけて触るのに失敗するのは不吉と考えられ、当人を精神的に悩ませるかもしれない。

Usage notes

The expression is used superstitiously to avert the possibility that something just mentioned (if bad) might not occur, or (if it is a good thing) might occur. The action may or may not be performed, depending on how literally the speaker adheres to the superstition. If it is taken literally, it is usual to attempt physically to touch some wooden object whilst, or shortly after, exclaiming knock on wood. Failure to find and touch a wooden item within a short time may be considered ominous, and cause mental distress to the person involved.

ということで、直前に言ったことがポイントなんですね。

『ママと恋に落ちるまで』のテッドの場合は、直前に「奥さんを見つける」と言ってますので、それが悪運を呼ばない(=奥さんが見つからないことはない)ように木をノックして魔除けしたのでした。

言語化が悪運を呼ぶ不思議

でも、これって日本人的にはちょっと理解し難いんですよね。

例えば、江戸時代の丁半博打の鉄火場で、皆さんが10連勝してるとして下さい。「今日はやけについていやがるぜ・・・」と皆さんがポツリ呟いたとして、それで悪運が付くと思います? 思わないですよね。でも、欧米人は言葉にした途端ジンクス(jinx)になると考える。なかなか面白い文化の違いだと思います。

多分、日本人的にピンとこないのは「Knock on Wood」ではなく、「言語化が悪運を呼ぶ」ってパートだと思います。

迷信「Knock on Wood」の由来

なお、「Knock on Wood」の起源についてはWikipediaにちょこっと書いてありますね:

Knocking on wood

由来

この迷信の起源はケルトやドイツの言い伝えだろう、そこでは超自然的な存在が木に住んでおり、保護を引き起こすことができると考えられた。

Origin

The origin of the custom may be in Celtic or Germanic folklore, wherein supernatural beings are thought to live in trees, and can be invoked for protection.

つまり、木製品を叩くことで、そこに住んでいる妖精か精霊かを呼び出して保護してもらっているのでした。でもさ、何かある度に呼び出される側としては、この迷信はたまったもんじゃないよね?(笑)

まあ、でも、木製品である必然性は分かりますね。

『刑事コロンボ』での「Knock on Wood」

なお、海外ドラマの英語字幕を調べていたら、『刑事コロンボ』でも発見。

中東の王国の王様の周囲で起きた殺人事件で、コロンボは王様周辺を嗅ぎ回ります。それを見かけた王国の高官は「殺人を期待してるんじゃないでしょうね」と皮肉で言うんですね。コロンボは「今日ではない」と言ってから「knock on wood」です。こちらは今までと逆で、起きて欲しくないパターン。「Not today」と言語化したがため、それが実現したら嫌なので起きないように「knock on wood」とマジナイなんですね。

高官: You’re not expecting a murder, I hope.
コロンボ: Not today, knock on wood.
『刑事コロンボ』で、コロンボと中東の王様
Columbo [Credit: NBC]

最後に

今回は木を叩いて魔除けの迷信「knock on wood」について見てみました。

言語化することで、逆の望まない結果にならないように、海外では「knock on wood」してるのでした。

ということは、TOEICのテスト終了後かなりいい感じで、「800行ったと思う」と言語化した際は、付近の木製品をすぐ触ったほうが良いってことですね(笑) やっぱし、言葉にすると悪運を呼ぶってのは個人的にピンときませんね。それでは〜


knock on woodと双対のジンクスもついでに↓