映画『スティング』競馬詐欺での曖昧な「Place」の意味の解説
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Place it on Lucky Dan.
映画『スティング』を見たこと無い人はここで帰って
名作映画『スティング』って見たことない人いるのかな? ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが主役、悪役にロバート・ショウを揃え、脚本も音楽も完璧という珠玉の作品。
今回は、その映画の最後の大トリに関連する英語ネタなので、作品を見たことない人は以下の記事は読まれないことをおすすめします。というのも、この映画はネタバレしたあと見ると驚きが半減するからです(笑)
![The Sting[Credit: Universal Pictures] 映画『スティング』のタイトル](the-sting-title.webp)
YouTube公式チャンネルに4K HDRクリップ
さて、ユーチューブのUniversal Pictures公式チャンネルに『スティング』の4K動画が上がったのが一ヶ月前。昔のフィルムを4Kにできるのかーと驚きつつ、何回も見返していたんですけど、その時気づいたのがこの「place」ネタだったのです。もちろん、このクリップもSpoiler Alertです(笑)
『スティング』のあらすじ復習
とその前に、映画『スティング』のあらすじを見ておきましょう。
詐欺の師匠をギャングのボスであるロネガンに殺された青年ジョニー・フッカーは、大物詐欺師ヘンリー・ゴンドーフの門を叩き、共にロネガンに復讐を計画。最終的に競馬賭博で騙すため様々な罠を事前に張ってきたゴンドーフとフッカーは、ついに運命の日を迎えます。ロネガンが待つ公衆電話のベルがけたたましく鳴り、50万ドルの大金を賭けるべき馬ラッキー・ダンの情報が受話器越しにもたらされるのです・・・。
![The Sting[Credit: Universal Pictures] 映画『スティング』で、受話器を取るロネガン](the-sting-twist-place-it-on-lucky-dan.webp)
「Place」の持つ意味1番目
実は、このセリフ
Place it on Lucky Dan.
がかなりの曲者なのです。というか、この詐欺の全てといって過言ではない。これは日本語字幕で見ていると全く分からない点です。
まず、placeには英語で「賭ける」の意味があります:
place
(他動詞)手配する、賭けをする。
(transitive) To arrange for or to make (a bet).
だから、
Place it on Lucky Dan.
が「ラッキーダンに賭けろ」と響くのは納得できると思います。というか、普通こっちの意味しかないと思うのですが…
当然、ボスのロネガンもそう捉え、心配で様子を見に来た勝ち馬情報提供者ツイストに「ラッキーダンの勝ち(1位)に50万ドル賭けた」ことを述べます:
![The Sting[Credit: Universal Pictures] 映画『スティング』で、ロネガンとツイスト](the-sting-lonnegan-to-win.webp)
ここの
to win
が「勝ち=1位」を意味しているのですね。
「Place」の持つ意味2番目
しかし、これを聞いた瞬間、ツイスト(実はゴンドーフとフッカーの詐欺仲間)の顔色がサッと変わるのです。「to winだって? placeと言ったじゃないか!」って…
![The Sting[Credit: Universal Pictures] 映画『スティング』で、ツイストとロネガン](the-sting-twist-place-i-said-place.webp)
to winじゃなく$500,000 to placeなんだそうです。って、はい、日本人的には全く意味分かりませんね(笑)
実は、placeには競馬で特有のスラング「2着」の意味があるのです:
place
(自動詞、レース)2着に終わる、特に馬や犬のレースで。
(intransitive, racing) To finish second, especially of horses or dogs.
だから、最初のロネガンにもたらされた電話の内容は「ラッキーダンの2着に賭けろ」なのでした(笑) ここでは、
The horse is gonna run second!
とplaceの意味を分かりやすく言い換えてもいます。
しかし、なんでこんな実に分かりにくく間違いやすい言い方をするのでしょう?
実は、これがこの場外競馬場詐欺の最大の肝なんですね。今までカモ(mark)に1着入賞の馬をずっと当てさせてきて、掛け金が50万ドルに跳ね上がった途端、placeの曖昧な言い回しで2着入賞に意図的に転じて、カモから金を巻き上げるのです。しかも、誰も嘘は全く言ってないのです(←これが重要)。
つまり、英単語「place」の持つ意味の曖昧さを最大限に使ったペテンなのですよ。これが日本語字幕だと全く分からない点です。
最後に
今回は傑作映画『スティング』を見ていて気づいた動詞「place」によるミスリーディング詐欺の解説でした。英語が分かるようになるとこう言ったことも気付けるので、英語字幕で映画・海外ドラマを見るのはマジでおすすめです。
ところで、日本語にもこういった類の言葉の綾を使った詐欺ってあるかなと考えてみたら、
消防署の方から来ました。消化器を設置して下さい。一本10万円です。
がそれに当たるのかな?と思いましたが、いかがでしょうか?(笑) 探せばもっと他にもありそうですね。それでは〜
「crap」の2つの意味↓
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