映画『スティング』における「Beat It」

以前、映画『スティング』の「place」の意味の曖昧さネタをやったので、今回は同じ『スティング』に出てくるイディオム(スラング?)の「beat it」を紹介します。

この「beat it」が出てくるのが次の2箇所。

まず、冒頭でフッカー達の詐欺にまんまと引っかかる運び屋モットーラ。その彼がボスの部屋に入る際に、電話中の女性の髪の匂いをかごうと後ろからちょっかいを出します。女性は怒って「Beat it」です。

女性: Beat it, Mottola!
映画『スティング』で、女性にちょっかいを出す運び屋モットーラ
The Sting[Credit: Universal Pictures]

詐欺の師匠ルーサーを殺されたフッカーは大物詐欺師ヘンリー・ゴンドーフを訪ねてきます。しかし、ビリーに「ゴンドーフなんて知らない」と否定され、「Are you sure?」と再度確認すると、冷たい声で「Beat it」とされてしまいます。

ジョニー: Are you sure?
ビリー: Beat it.
映画『スティング』で、ヘンリーを訪ねてきたフッカーはビリーに追い払われる
The Sting[Credit: Universal Pictures]

「Beat It」の意味とは?

この2例を見れば「beat it」の意味は辞書を引かなくても明らかですね。「うせろ」とか「邪魔だ」とかそういった類の表現。

実際、Wiktionaryにも・・・

beat it

(イディオム的、主に命令、軽蔑的、口語、相手にしない)去る、どっかに行く

(idiomatic, chiefly as imperative, derogatory, colloquial, dismissal) To leave; to go away.

とあって、予想通りの意味でした。このように、ビジュアルなコンテキストを与えられると、人間はわりかし推測できるものなのです。

マイケル・ジャクソンの『ビート・イット(Beat It)』

さて、ここまで来ると気になるのがマイケル・ジャクソンの同名の歌『ビート・イット(Beat It)』じゃないでしょうか?

実は、今回『ビート・イット』の歌詞を「読んで」みたら、本当に上で紹介した「beat it」の意味になってました(笑) なのでこの記事ができたのです。

以下、『ビート・イット』前半の歌詞をざっくり和訳してみます。

They told him “don’t you ever come around here

Don’t want to see your face, you better disappear”

彼ら(ギャング)は言った「この辺を二度とふらつくな

お前の面なんて拝みたくもない、消え失せたほうが身のためだぞ」

beat itと同じ系統のdisappearという動詞を使ってます。なお、マイケルが歌全体を通してhimへ訴えかけるのがこの楽曲。

The fire’s in their eyes and their words are really clear

So beat it, just beat it

彼らの目の中の炎と言葉は嘘偽りなく明らかだ

だから失せろ、ただずらかるんだ

脅し口調で「お前の面を拝みたくない」なんて言われてるんですから、今いる場所から「去れ(beat it)」と言うわけです。

You better run, you better do what you can

Don’t want to see no blood, don’t be a macho man

逃げるんだ、お前のできることをするんだ

血は見たくないだろ、男になろうとするな

ここでも「better run」と逃げろと言ってます。

You want to be tough, better do what you can

So beat it, but you want to be bad

タフになりたいんだったら、できることをやれ

そうだ失せるんだ、でも悪くなりたいんだろ

逃げろと言いつつ、同時に、呼びかけている彼の持つ「悪ぶる」ことへの願望は理解してあげるマイケル(笑)

Just beat it, beat it, beat it, beat it

No one wants to be defeated

Showin’ how funky and strong is your fight

It doesn’t matter who’s wrong or right

ただずらかるんだ(x4)

誰も負けたくはないさ

君の戦いが如何に型破りで強いかを見せつつ

誰が間違って正しいかなんて問題ないんだ

つまり、ミュージックビデオの寸劇も合わせると、このナンバーは若者(彼)の悪への興味は理解しつつも、ギャングの抗争に巻き込まれないように「その場から去れ」と繰り返し主張しているだけなのです(笑)

最後に

今回はイディオム「beat it」の意味の紹介とともに、マイケル・ジャクソンの名曲『ビート・イット』の歌詞も見てみました。本当にイディオム「beat it」そのままの意味になっているのが分かるかと思います。それでは〜