地獄は熱い? それとも寒い?

唐突ですが、皆さんに質問です。「地獄」は熱いでしょうか? それとも寒いでしょうか?

回答は個々人の宗教観や育ってきた文化的民族的背景などが大いに影響するのでしょうが、正解はないので深く考えずに直感で選択してみて下さい。

もしかしたら、暑がりの人と寒がりの人は地獄は熱いと寒いにきれいに分かれるのかもしれませんね(笑)

一応、このブログは英語ブログなので、以下、地獄に関する英語表現・イディオムなどを取り上げつつ、英語ではどうなのか確認していきましょう。

天国と地獄への標識サイン
Image by Gerd Altmann from Pixabay

灼熱な地獄

はい、一般的には、 地獄は熱いのだそうです。

Hell

多くの宗教文化(キリスト教とイスラム教を含む)では、地獄は灼熱で、耐え難い、厳しいとしてしばしば描写される。このような火の場所であるという普及した地獄の描写に関わらず、他の伝統では地獄は寒く描かれる。仏教(特にチベット仏教)では、地獄の描写は同数の灼熱地獄と極寒地獄で特徴づけられる。

In many religious cultures, including Christianity and Islam, hell is often depicted as fiery, painful, and harsh, inflicting suffering on the guilty. Despite these common depictions of hell as a place of fire, some other traditions portray hell as cold. Buddhist – and particularly Tibetan Buddhist – descriptions of hell feature an equal number of hot and cold hells.

仏教の影響がある日本人にとっては地獄は熱かったり寒かったりする感じですが、2大宗教キリスト教とイスラム教では、地獄は灼熱なんですね(笑)

燃え盛る地獄の門番の悪魔
Image by Mark Hultgren from Pixabay

熱い地獄な英語イディオム・スラング

そんな認識はもちろん英語の表現にも取り入れられているのです。

例えば・・・

Hot as Hell

… as hot as hellの直訳は「地獄のように熱い」。つまり、地獄は熱いって認識なんですね。

hot as hell

(直喩、話し言葉)極度に熱い(全ての意味において)

(simile, colloquial) Extremely hot (all senses)

なお、「全ての意味において」という注意書きが初見では分かりにくいですが、この意味は堕天使が犯罪者を裁く『ルシファー』シーズン1の番組宣伝ポスターのキャッチコピーことタグラインを見れば一目瞭然。Hot as Hellの横にイケメンのルシファー。

『ルシファー』の番組宣伝ポスター、惹句「Hot as Hell」
Lucifer [Credit: Fox]

このhotはセクシーという意味ですね。つまり「極度にセクシー」と言いたいわけ。逆に、番組のコピーライターは英語でありふれたフレーズ「hot as hell」を逆手に取ってこのタグラインにしているのですね。

Cold Day in Hell

it’ll be a cold day in hell before I do any more P.D. Work for this shitty court!
『ベター・コール・ソウル』で、ジミーは裁判所の受付に毒づく
Better Call Saul [Credit: AMC]

弁護士ジミーは3人の国選弁護人を引き受けますが、1人分のお金しか貰えないと知り、裁判所の窓口職員をなじる場面。ここは以前sayonaraで取り上げてもいます。

ジミーは「俺がこれ以上このクソ裁判所のための警察の仕事をやる前にcold day in hellになる」と言い放ちます。

あれ? でも、「cold day in hell」って地獄は寒いってことじゃない?

実はこのイディオム、不可能ってことを表しているんですね。だって、地獄は熱いから、寒くなりえない:

cold day in Hell

(イディオム的、スラング)出来事の発生する時間、それは絶対発生しない。

(idiomatic, slang) The time of occurrence of an event that will never happen.

つまり、ここでは、ジミーは「クソ裁判所の仕事は二度としない」と言っているわけですね。というのも、ジミーが仕事をする前に地獄は寒くならなくてはいけないけれど、それは絶対起こらないから。

When Hell Freezes Over

シャローナ: When hell freezes over, you can drive again. No. You know what? Even if hell freezes over, I’m still driving.
『名探偵モンク』で、モンクに車の運転をさせないシャローナ
Monk [Credit: USA Network]

モンクが車を運転しようとするのを慌てて止める助手シャローナ。曰く「hell freezes overする時、あなたは運転できる。いや、いい? たとえhell freezes overしたとしても、まだ私が運転するわ」。

freeze overは氷で覆われるの意。

このイディオムもcold day in hellと全く同じ構造ですね。ありえないというわけ、だって、地獄は灼熱(略)

when Hell freezes over

(イディオム的、スラング、口語、誇張)絶対ない、この人生ではありえない、予測できない遠い将来でもありえない、望みはない。

(idiomatic, slang, informal, hyperbolic) Never; not in this lifetime or a time in the unforeseeably distant future; not a chance.

ここでシャローナは考え直した後、更に強調するために、「地獄が氷に覆われたとしても私が運転する」と主張します。絶対起こらないことが起こったとしても私が運転。それほどモンクに車を運転させたくないのです(笑)

最後に

今回は地獄は熱いか寒いかについて確認した後、英語での熱い地獄のイディオム・スラングを見てみました。

こういった宗教観が言語に反映されるのは面白いですね。日本語でも温泉地などは地獄が入る地名になったりするので、そこは似てるのかもしれません。

それでは〜


蟻地獄だと・・・?↓