レポーター: Can you tell us anything about what you’re going to say?
政治家: You want a sound bite? Fine.
『メンタリスト』で、リポーターは政治家にサウンドバイトを求める
The Mentalist [Credit: CBS]

「Sound Bite」の意味とは?

sound bite」は初見では意味が全くわからない語彙なのではないでしょうか? frostbiteが凍傷なら、sound biteは音で傷つく鼓膜破裂あたり?(笑)

実は全く違っていて、テレビ等のメディアで繰り返し流される政治家・有名人等のインタビューの短いフレーズのことなんです:

sound bite

(ジャーナリズム、テレビ)スピーチやインタビューの抜粋、ニュースや他の放送局向けに編集された;インタビュークリップ、特に、意味ありげな力強く見られる。

(journalism, television) An extract from a speech or interview used as edited into a news or other broadcast; an interview clip, especially seen as particularly expressive or pithy.

つまり、時間が限られたテレビのニュースでは、政治家のインタビューなどは全部放送できません。そこで抜粋して、視聴者に力強く訴える要点のセリフが編集して使われるわけです。それを英語で「sound bite(サウンドバイト)」と言うのですね。言われれば、日本のニュースでもある感じです。

「Sound Bite」の始まり

さて、問題は何故「sound bite」か、なのですが、正確な語源についてはネット上のどこにも書かれていないようです。一応、Wikipediaで70年代後半にアメリカで作られた用語であることが分かります:

Sound bite

歴史

60,70年代に、広告主からの圧力でアメリカのテレビ業界はエンタメ・ニュース番組を作り出し、その中でサウンドバイトを政治報道の中心に置いた。政治家達はPR技術をセルフイメージやスローガンに使い始める、それはテレビの視聴者に共鳴するように、選挙戦での勝利を保証するよう巧妙に作られた。用語「サウンドバイト」は1970年代後半、ロナルド・レーガン(彼の有名で短く記憶に残るベルリンの壁に関するフレーズ「ゴルバチョフ書記長、この壁を壊すのです」)が大統領になる数年前に作られた。

History

In the 1960s and 1970s, pressure from advertisers on the American television industry to create entertaining news material made sound bites central to political coverage. Politicians began to use PR techniques to craft self-images and slogans that would resonate with the television-viewing audience and ensure their victory in campaigns. The term “sound bite” was coined in the late 1970s, several years before the presidency of Ronald Reagan, who was famous for short, memorable phrases like, “Mr. Gorbachev, tear down this wall!” in reference to the Berlin Wall.

Everyone will be looking to Brody for a sound bite about Abu Nazir.
『HOMELAND』で、クイン
Homeland [Credit: Showtime]

「sound bite」:Redditでの語源の推測

一応、ネット上には「sound bite」の語源という私と全く同じ疑問を持つ人が居て、過去Redditで議論されてました。その中での意見は「biteは一口サイズ」の意味ってこと:

Etymology of "sound bite"?

I can’t find anything online. OED and other sources aren’t being helpful. Why “bite”?

英語で「grab a bite」と言えば、ちょっと食べることを表します。このように、英単語「bite」は一口(ひとくち)、一齧り(ひとかじり)の意味。だから、sound biteは政治家のインタビュー音声(sound)の一口(bite)というわけ。

これは、以下の論文でもそうなっていますね。出処はテレビ局編集室のスラングとのこと:

Sound Bite

ワシントン特派員でナショナル・パブリック・ラジオのニュース分析官のダニエル・ショアはこの用語の由来を1960年代まで遡る:「この用語は編集室から出てきたんだよ、ビデオテープより前の時代さ。プロデューサーが欲しい引用を見た時、彼は編集担当者に「より長いインタビューから”Take that bite(そのバイトを取れ)”」と言ったのさ;biteは30秒から45秒だったんだ。」

Daniel Schorr, Washington correspondent and news analyst for National Public Radio, traces the origin of the term to the 1960s: “It came out of the editing room, in the days before videotape. When the producer saw the excerpt he wanted, he’d tell the filmeditor,‘Take that bite’; out of longer interviews, the bite would be 30 to 45 seconds”(quoted in Safire, 1993, p. 733)

まあ、サウンドバイトの語源としてはこれが正解でしょうかね。

最後に

今回はテレビジャーナリズムで使われる不思議な「sound bite」なる用語の紹介でした。意味は、放送用に編集された短いフレーズ。語源は、嘘か本当か、テレビの編集室のスラングで、biteは昔は30秒から45秒を表していたのだとか。

個人的にこの話が非常に面白いのは、テレビがサウンドバイトを集中的に使うよう移行していった時、政治家たちも視聴者にアピールできるように、サウンドバイトに適したフレーズを捻り出していったって点。選挙戦で生き残るために彼ら自身も時流の変化に対応していったのですね。

なお、昨今はYouTube等が隆盛ですから、30秒から45秒のバイトはちょっと長すぎるのかもしれませんね。10秒くらいでsip(シップ、一すすり)って命名するのはどうでしょう?(笑) この辺も、今と昔の違いがありそうです。それでは〜


Bite me!↓