エレノア: What do we do?
ジェイソン: We team up with Michael.
エレノア: OK, hot take, but I like your confidence. Tell me why.
『グッド・プレイス』で、エレノアはジェイソン、チディ、タハニと相談
The Good Place [Credit: NBC]

「Hot Take」の意味とは?

hot takeなる用語を最近かなり目に耳にするんですけど、実際の所の意味は何なんでしょうか? 使われる文脈を考えると、ネガティブなニュアンスなのは分かりますが・・・。

そこで、Wiktionaryを調べてみると・・・

hot take

とある状況に対する、大胆で、幅がある、主観的な道徳的一般化、独自の分析や洞察はほとんど、又は、全くない。特にジャーナリストによる。

A bold, broad, and subjective moral generalization on a situation, with little or no original analysis or insight, especially by a journalist.

と、一言で言えば底の浅い考えってことみたいですね。ジャーナリストによるみたいなので、例えば台風被害があった直後に「なんで政府は○○しなかったんだ」と言う評論家みたいなものでしょうか。

英語版Wikipediaにも、このhot takeの意味がより詳しく説明されています:

Hot take

ジャーナリズムにおいて、hot takeは、ニュースに対する「意図的に挑発する論評、浅い道徳化にほぼ全て基づく」、「通常きつい締切で書かれる、ほぼ皆無の調査・レポート、そして見解さえ無しに」。

In journalism, a hot take is a “piece of deliberately provocative commentary that is based almost entirely on shallow moralizing” in response to a news story, “usually written on tight deadlines with little research or reporting, and even less thought”.

ということで、事件事故があった際に出される浅い論評なのは同じでしょうか。ただし、こちらは挑発的とあるので、クリックベイトな意味合いも含まれているかもしれません。

ここまでくれば、なぜ2語hot takeなのかも分かってきます。まず、takeは個人の考え。その問題をあなたがどう受け取ったか。そして、hotは激しい意味合いでしょうか? このhotについては、次の記事が詳しい:

A History of the Hot Take

take(個人の見解)が真にhotであるために、「故意に逆張りである必要はありません。ただ、そのように書かれているので、あなたはあらしっぽいと見抜けるのです」

For a take to be truly hot, “it’s not necessarily intentionally contrarian, but it is written in such a way that you can tell it’s a bit of a troll,”

ネット上のあらし成分もあるんですね。

いずれにしても、冒頭に挙げた『グッド・プレイス』の場面では、エレノアはジェイソンの意見は「hot take」、すなわち底が浅い意見とネガティブに言っているんですね。彼のconfidenceだけは褒めていますが(笑)

「Hot Take」の具体例

それでは定義だけじゃなく、hot takeの具体例も見てみましょう。

上で紹介した記事に少し載っています:

A History of the Hot Take

エリクソンの実際の意味でのホットテイクは2013年にあった、その時彼はワーキングマザーは子供に悪いと議論、曰く、何故ならオスの動物がメスの動物を支配するからだ。反論にあった時、彼はこれは「事実だ」と回答した、家に居る母親と一緒の子供の方がより幸せなんだ。

An essential Erickson hot take came in 2013, when he argued that working moms are bad for kids because male animals tend to dominate female ones. When criticized, Erickson responded that it was “a matter of fact” that kids with moms who stay home are better off.

ワーキングマザーの是非。これは確かにprovocativeな意見ですね。しかも、理由で動物の世界を持ってくる浅さ。

他にも、このエリクソンさん、すごいことをおっしゃっておられる:

A History of the Hot Take

エリクソンは、職場で同性愛者の差別を違法にしようとしている人権活動家は子供を十字架に貼り付けにするISISと多くの部分で共通すると議論、「イスラム過激派と同性愛者権利過激派を分けるものは死に方」と主張した。

Erickson argued that gay rights activists, who want to make it illegal for businesses to discriminate against gays, have a lot in common with ISIS, which crucifies children. “The divide between Islamic extremists and gay rights extremists is at death,” Erickson asserted.

というように、かなりあらし(troll)な感じになってます。

また、hot takeのプロトタイプ(雛形)についての意見もありました:

A History of the Hot Take

ラスティー・フォスターは語る「hot takeのプロトタイプ」は、ニュースが発表されて、「数時間後に誰かが意見記事を急ぐ、まだ我々は事件の全体像も分かってないのに、たった一つ起こった事から、壮大な結論を導き出すんだ」。

Rusty Foster said the “prototype hot take” is when news breaks, and then “somebody will rush out an opinion piece a couple hours later that comes to some really grand conclusions based on this one thing that happened that maybe we don’t even have all the facts about yet.”

「Hot Take」の語源とは?

それでは、このhot takeの語源についても見てみましょう。Wikipediaの続きに書いてあります:

Hot take

これはスポーツトークラジオ番組の業界から由来した用語だ、ホストが「スポーツにおける解答が無いので議論されてこなかった大昔の思想からトピック」を選び「うるさい、事実に基づかない声明」をし、怒った視聴者の電話を誘い、番組の一部とする戦略を意味する。

It originated as a term in the industry of sports talk radio, referring to the tactic of hosts picking “a topic from the sports zeitgeist, often one that has no business being discussed because the answer is unknowable”, making “loud, fact-free declarations” about the topic, eliciting angry listeners to call in and providing show content.

結局発祥はスポーツトークラジオ番組なので、ある意味スラングですね。

そしてその語源も、スポーツにおける大昔の思想、例えば野球における「バントの意義」を取り上げて、事実も統計も深い洞察も関係なしに適当に視聴者を怒らせる大胆な意見を表明し(相手に自動的に1アウト献上する昔の奴らは馬鹿)、それで視聴者を釣っていたんですね。それが、いつからか、他の業界でも幅広く使われるようになって、現在に至るのでした。

野球のゲームでバントを成功させる打者
Image by Keith Johnston from Pixabay

「Hot Take」とインターネット

ところで、hot takeがここまで広まったのは、インターネットも一役買っているのが分かります。というのも、ネット上には深い考察もない条件反射な意見が溢れていますし、またそれを手軽に表明できるSNSと言う名のプラットフォームもあります。また、逆に相手の意見をhot takeと一刀両断することもできるからです:

Hot take

hot takeはしばしばソーシャルメディアに結び付けられる、そこでは簡単にhot takeをシェアしてコメントができるからだ、両陣営の読者やジャーナリスト達によって。そして、ウェブサイトパブリッシャーにとっては儲かる環境でもある、再帰的なtake「メタテイク」を推奨することで。ジョン・ウエストはこれを「どんな注目も逃れられないブラックホール」と説明した。

Hot takes are often associated with social media, where they can be easily shared and commented on by both readers and other journalists, a lucrative environment for publishers that encourages recursive “meta-takes”, which John West described as “a black hole from which no attention can escape”.

最後に

今回は以前からネットでよく見かけていた「hot take」なる用語について見てみました。結局は読み手を挑発するだけの底の浅い意見ってことですけど、こんなものは昔から溢れていたわけですよね。なんでも逆張りする天の邪鬼や、議論の火にせっせと油を注ぐ人たちも居たのです。ただし、そういった人たちが表舞台に出てくることはなかったのですね。それが、メディアの発達やインターネットの興隆で目に見えるようになったというのが大きく、用語hot takeが出てくる契機になったのかなと思います。

hot takeのブラックホールだけは避けたいものですね。それでは〜