「サブタイトル」がなぜ「エピソード題名」を意味するように?
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![The Lord of the Rings: The Rings of Power [Credit: Amazon Prime Video] 『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』で、崖にぶら下がるシーンの英語字幕](the-lord-of-the-rings-the-rings-of-power-i-wish-i-could-subtitle-720x306p.webp)
今回は以前から気になっていた日本語化している用語「サブタイトル」について。
英語の「Subtitle」の意味「字幕」
まず、英語「subtitle」には、映画や海外ドラマを見る時にオンにすることでおなじみの「字幕」の意味があります:
subtitle
(映画撮影、テレビ)映画内の会話の文章版(テレビやビデオゲームのような同様のメディアでも)、通常画面の下に表示される。
(cinematography, television) Textual versions of the dialogue in films (and similar media such as television or video games), usually displayed at the bottom of the screen.
これは「sub」と省略されることもありますね。
テキストとしてスクリーン上に表示されるので、音声と違い人間が一度に読める文字数の制限などから、会話の原文そのものでなく、一部省略されたり他の単語に置き換えられて全体的に短くなることが多々あります。
ちなみに、作品が他の言語に訳される場合、他言語版音声の吹き替えと翻訳字幕が大幅に異なることがあるのは個人的に非常に興味深い現象です。
英語の「Subtitle」の意味「副題」
もう一つ、英語の「subtitle」には「副題」の意味もあります。「sub」と「title」から、こちらの方が日本人にも納得できるのではないでしょうか?
subtitle
(著作)題名の下や直後の見出し。
(authorship) A heading below or after a title.
これは、フランケンシュタイン博士の怪物のお約束でおなじみの『フランケンシュタイン』の本の表紙を見ると分かります。まず、「フランケンシュタイン(Frankenstein)」と題してから(主題)、その下に「あるいは、現代のプロメテウス(or, The Modern Prometheus)」と続きます。これが副題(subtitle)なんですね。
![Frankenstein; or, The Modern Prometheus [Credit: Lackington, Hughes, Harding, Mavor & Jones] 『フランケンシュタイン』の表紙](frankenstein-book-subtitle-367x357p.webp)
ちなみに、日本でも本題名でこの「あるいは」を使う作家が結構多くて鼻につくのは私だけでしょうか? SEO対策という話ですが・・・。個人的に、彼らを「あるいは、サブタイトラー」と命名しています(笑)
閑話休題。他にも、世界的に有名な漫画・アニメの『NARUTO -ナルト-』は「-ナルト-」部分がサブタイトルなわけですし
![Naruto [Credit: Shueisha] 『NARUTO -ナルト-』のロゴ](naruto-logo-700x298p.webp)
Amazon Prime Videoオリジナルの超話題作『The Lord of the Rings: The Rings of Power』はThe Rings of Powerがsubtitleなんです。
また、このブログがはてなに在った時に付けてた副題は「The name of the game is communication」でした。
以上まとめると「字幕」と「副題」、これら2つが英語での「subtitle」の意味なんです。
日本語「サブタイトル」だけが持つ別の意味とは?
ただ面白いことに、日本語の「サブタイトル」は微妙に違う別の意味も持つようなんですよ。なんと、「連続ドラマやアニメの各エピソードに付けられる題名」も「サブタイトル」って呼ばれているのです。
日本語辞書にはこの意味合いは載っていないようですが、私はWikipediaの各作品のエピソードリストを見ている際に、この事実に気づきました。以下、数例挙げますが、英語版Wikipediaが「title」なのに対し、日本語だけ「サブタイトル」になっている奇妙な状況が分かります:
『NARUTO -ナルト-』の例


『ONE PIECE』の例


つまり、日本語だと、それがエピソードの正式タイトルであるにもかかわらずに、副題と呼んでしまっている状況。なんか、他にちゃんとした正式タイトルがある感じじゃない?(笑)
Wikipediaからして・・・
英語でエピソードタイトルをsubtitleなんて言ってるの見たことも聞いたことないので、個人的にこの日本の状況が本当に不思議なんです。
でも更に調べてみると、Wikipediaもその一端を担ってるのかもと感じてきました。だって最新の「サブタイトル」の日本語記事からして:
サブタイトル
エピソードタイトル、つまりテレビシリーズで、番組のタイトルとは別に各エピソードにつけられるタイトルも、広義のサブタイトルである。ただし英語では、エピソードタイトル (episode title) と言うことが多い。
でもさ、番組タイトルが実際のサブタイトル(副題)を持っていたらどうするの? 例えば「吾輩は猫である、あるいは、現代のバステト」だったら?(笑)
ちなみに、この「サブタイトル」記事の編集履歴を遡ると興味深いことが分かります。
当初はアニメ『ケロロ軍曹』のサブタイトルエピソード題名が載せられていましたが、
サブタイトル(2006年6月21日 (水) 05:24)
第1話 「我輩がケロロ軍曹 であります」 「ケロロ 大地に立つ であります」 2004年4月3日
第2話 「桃華&タママ 出撃! であります」 「桃華&タママ 日向家上陸 であります」
第3話 「ケロロ 危険臨界点突破 であります」「ケロロ 極秘任務開始 であります」 2004年4月17日
(以下略)
次の更新で一般的なエピソード題名を意味するように。
サブタイトル(2006年6月21日 (水) 05:35)
サブタイトル (sub title) とは、書籍や映像作品、イベントなどにおいて、主たる題名を補うために付けられる文言のこと。副題とも。
連続ドラマや、連載小説、漫画においては、「第○話」という番号付けに加えて、各話の内容を端的に表した言葉が添えられる場合が多いが、これもサブタイトルと呼ばれる。
Googleで遡れる最古のニュース記事のサブタイトル(エピソード題名)
ちなみに、Googleでエピソード題名を意味する「サブタイトル」が出てくるニュース記事を遡ってみたら、2007年8月の次のGigazine記事にぶち当たりました。内容はテレビ版「新世紀エヴァンゲリオン」の全次回予告が無料公開されたというニュース。その中で、エピソード題名をサブタイトルとしています:
テレビ版「新世紀エヴァンゲリオン」の次回予告編が全部無料公開中
新世紀エヴァンゲリオン | MTVJAPAN.com : CINEMA 次回予告編
こんな感じで各話のサブタイトルが並んでいるので、見たい話をクリックすると次回予告を見ることができます。
これ以前の「サブタイトル」を持つニュース記事はすべて副題の意味だったので、やはり『ケロロ軍曹』が元凶かなあ・・・[要出典]
ちなみに、ニュース以外の個人のウェブページまで調査する時間はありませんでした。
最後に
今回は日本語化された「サブタイトル」が英語「subtitle」から離れてドラマ・アニメのエピソード題名をも意味するという日本のわけわからん状況(SNAFU)についてでした。
一部ファンの間で使われていた「サブタイトル」のスラング的使用・誤用が、Wikipediaの記事になって正当化されたってところなのでしょうか。
だれか一人勇気がある人が「よく考えたら、それ、サブタイトルじゃないじゃんw」と指摘してくれていれば、こんなことにはなっていなかったのかもしれませんね。そういう意味では、何かおかしいと感じたら勇気を振り絞って声を上げることも人生では必要なのかもしれません。
「サブタイトル」で検索してこの記事がWikipediaより上部に来ることを祈りつつ。それでは〜
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