「Break the Ice」「Icebreaker」文字通りの意味とは?

break the ice」は「氷(ice)を割る・砕く(break)」ってこと。だから、「icebreaker」は氷を砕く物の意味なので、日本語では砕氷船のことを表します。だって、砕氷船は海に張った氷をモーセのごとく割って進んでいく船なのですから。ここがすべての始まりの語源です。

砕氷船(アイスブレイカー)
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面白いことに、海外ドラマ『ブレイキング・バッド』の麻薬撲滅作戦名で、この「Icebreaker」が使われているんです。

ハンク: Operation Icebreaker.
『ブレイキング・バッド』で、ハンクは作戦名を「アイスブレイカー」にする
Breaking Bad [Credit: AMC]

麻薬捜査官ハンクの説明では、Operation Icebreakerは「北極で氷を壊すバカでかい船」のこと。まさしく、砕氷船(アイスブレイカー)ですね。そのように麻薬犯罪を撲滅したいという望みが入っています。

ハンク: Gonna be thinking about some big-ass ship in the North Pole breaking ice.
『ブレイキング・バッド』で、ハンクは作戦名「アイスブレイカー」の意味を説明
Breaking Bad [Credit: AMC]

ちなみに、この時、部下のゴメスは作戦名が「Icebreaker」だと、クールミントに聞こえると言って譲りません。実際、海の向こうでは、この名前を冠するミントがあるようですね(笑)

「Break the Ice」の比喩的な意味

なお、この氷を打ち破って進んで行くイメージは困難克服と重なりますから、英語でもその意味が出るのは必然でしょうか。

break the ice

最初の困難を克服する;障害を乗り越えて糸口を開く。

To surmount initial difficulties; to overcome obstacles and make a beginning.

これに関して、シットコム『ママと恋に落ちるまで』に可笑しいシーンがありました。マーシャルは恋人リリーに真実を告げるかどうかで悩んでいます。すると、同僚女性がその内容を勝手に話しちゃうんですね。「I just broke the ice for you」と。これなんかは、障害を乗り越えるための第一歩として背中を押してあげたニュアンス。でも、マーシャルは「俺はその氷に乗っていたんだ」とオカンムリです(笑) 小洒落た返しですね。

同僚女性: You were torturing yourself figuring out how to tell her, I just broke the ice for you.
マーシャル: I was standing on that ice.
『ママと恋に落ちるまで』で、マーシャルはリリーに告げるかで板挟み
How I Met Your Mother [Credit: CBS]

イディオム「Break the Ice」「Icebreaker」の意味

以上を踏まえて、いよいよ我々が知っている「break the ice」「icebreaker」に入っていくのですが、このイディオムでの「障害(the ice)」は「初対面の人同士のぎこちなさ・堅苦しさ」を意味するのですね。そして、このイディオムは、それを壊す(break)ことを表します:

break the ice

  • (イディオム的)社交上のぎこちなさや堅苦しさを避けるため、人々と知り合いになる。
  • (イディオム的)会話を導入する。
  • (idiomatic) To start to get to know people to avoid social awkwardness and formality.
  • (idiomatic) To introduce conversation.

icebreaker

(比喩的に)ゲーム、活動、面白い話等、人々の集団を落ち着かせ、お互い知り合いになるための。

(figuratively) A game, activity, humorous anecdote, etc., designed to relax a group of people to help them get to know each other.

初対面の人同士が陥るぎこちない沈黙(awkward silence)は非常に気まずいもの。そして無理やり人工的に会話をし出すのもおなじみの光景かもしれません。このイディオムはそれをものの見事に捉えてるんですね。

馬のキグルミの二人が道でアコーディオンを弾く
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ちなみに、海外ドラマ『ギルモア・ガールズ』では、ローレライが恋人ルークを初めて両親と会わせるシーンに「icebreaker」が使われていました。ルークは質実剛健な男なので、ローレライの両親が住む大豪邸に驚きます。そして、中世ヨーロッパの民衆が熊手を持って反乱するイメージを念頭に置き、「こうやって貴族は晒し首になるんだ」と結びます。一方のローレライはそれを混ぜっ返して、「それをアイスブレイカーにして(私の両親と打ち解けろ)」とアドバイス(笑)

ルーク: What a waste. See, this is what causes peasants to revolt. This is how heads end up on pikes.
ローレライ: Open with that. That’s a great icebreaker.
『ギルモア・ガールズ』で、ローレライとルークは両親の大豪邸を訪れる
Gilmore Girls [Credit: The WB]

最後に

今回は日本人にもおなじみのイディオム「break the ice」と「icebreaker」でした。意味は初対面同士のぎこちなさを取ること。

自分は社会人になってからこの用語を知りましたが、こんなものは日本でも昔からあったわけですよね。学校でクラス替えした初日、周りが知らない生徒だらけの中、先生がクラス全員参加の変なゲームとかやってましたから。今にして思えば、あれがアイスブレイカーだったわけです。でも、当時は別にアイスブレイカーとか専門用語は知らなくても普通に生きていたのに、大人になった途端にbig dealになるというのは本当に不思議なことですね。

それでは〜