チェスの世界選手権大会でのセコンド

先日あったチェスのカンニングスキャンダルを今かなり詳しく調べているのですが、今、ちょうどチェスの世界では、初期局面をランダムにした世界選手権大会が行われていて、そのレギュレーションに面白いことが書いてあったので、今回記事にしてみます。

フィッシャー・ランダム・チェスとは?

初期局面をランダムにしたチェスは「フィッシャー・ランダム・チェス」と呼ばれ、あのボビー・フィッシャーが考案されたとされるチェスの変種の一つ。別名「チェス960」とも呼ばれる所以は、その初期局面が960通りあるからとか。

チェスにおける引き分け多すぎ問題

チェスは序盤の研究が進んでいて、標準チェスの初期局面からだと考慮時間が大幅にあれば、スーパー・グランドマスター同士だと引き分けになる確率が高めなんですね。数年前の世界大会だと全部のゲーム引き分けになった事があったくらい(笑) そして、引き分けは観客からすればツマラナイわけです。そこで、考慮時間を短くしたりしてるのですが、このフィッシャー・ランダム・チェスは、初期局面をランダムに決定して、序盤の深い研究が活きないようにしてるわけですね。この世界チャンピオンシップ大会が今開かれているのです。

フィッシャー・ランダム・チェス(チェス960)の1初期局面
フィッシャー・ランダム・チェスの初期局面の例

謎のセコンドとは?

そんな大会では、数千万円の賞金がかかっているので、規則もきっちり決められているわけです。その中の一つに、セコンドなる人物が登場するのです:

Regulations for the 2022 FIDE World Fischer Random Chess Championship

4.2 初期局面は、第1、第3試合の予定開始時刻の15分前に両対局者に提示される。対局者は15分を登録されたセコンドからアドバイスを求めるのに使うことを許される。対局者とセコンド共に電子情報源(チェス・エンジン等)にアドバイスを求めるのは許されない。

4.2 The initial position will be presented to both players 15 minutes before the scheduled start time of the first or third game of a match. Players are permitted to use the 15-minute period to seek advice from their registered Second. Neither the player, nor the Second, is permitted to seek advice from an electronic source (e.g. a chess engine).

つまり、ゲームを正式に開始する前15分の間に、与えられたランダムな初期局面を研究することができるんですね。だって、いきなり初見の局面与えられて、すぐ大失敗して(blunder)1分で終わったらつまらないですからね。

その選手と共に局面を研究することができるのがSecondなる人物なのでした。一人でやるより二人のほうがうっかりは減りますし、なによりチェスは二人でやるゲームですから、これは納得です。でも、このSecondって、一体何なんでしょう?

実は、種明かしをすれば、既に日本語になっている「セコンド」なのでした(笑)

セコンド(second)

ボクシングなどの試合で,選手の介抱や作戦指示に当たる介添え人。
スーパー大辞林

つまり、ボクシングで主人公が倒れた時にリングサイドで「立て、立つんだジョー」とうセリフを発する人のことなんですね(違)

映画『ロッキー』で、最終ラウンド前のロッキーとミッキー
Rocky [Credit: United Artists]

英語の「Second」の意味とは?

ここで気になるのが、「セコンド(second)」という表記。なんと、日本語のセコンドは英語でのsecondなのでした。これって結構盲点な感じ。言われれば、音的にも確かになんですけどね。

でも、secondって「2番」の意味ですよね。ファースト、セカンド、サード。どうしてこんな意味を持っているのでしょうか? ボクシングのリング上で2番目の人ってことなのかな?

そこで、Wiktionaryを見てみると

second

動詞

  • (他動詞)手伝う、支持する;支援する。
  • (他動詞)二番目の人物として(提案に)同意する、通常、議決に必要な2票の定足数に到達するため。

Verb

  • (transitive) To assist or support; to back.
  • (transitive) To agree as a second person to (a proposal), usually to reach a necessary quorum of two.

なんと、同意のsecondと同じなんですね。ここから戦いでの手伝う人の意味が出たんです。

second

名詞

競技や戦いで他の人を助ける人、決闘での補佐のような。

Noun

One who supports another in a contest or combat, such as a dueller’s assistant.

最後に

今回は日本語「セコンド」が英語の「second」から由来しているお話でした。 言われてみれば、確かにそうなんですけどね。secondのカタカナ表記が「セカンド」と「セコンド」とブレるので、日本人からするとなかなか同一視が難しいのです。この辺を改善してもらえれば、英語勉強も少しは楽なんですけどね(笑)

実はセカンドに似たダブルも代役という意外な意味があるので、今度記事にしましょうか。それでは〜