『ベター・コール・ソウル』の意味って?

『ベター・コール・ソウル』の番組宣伝ポスター
Better Call Saul [Credit: AMC]

大人気海外ドラマ『ベター・コール・ソウル』ですが、英語タイトルは同名の『Better Call Saul』。この意味は、もちろん、コール(Call)は電話する(上の番組ポスターが公衆電話である理由)、ソウル(Saul)は後年名乗る名前で、元々主人公の弁護士ジミーのことなのですが、問題はベター(Better)の箇所です。これって、そもそもどんな意味なんでしょう? ジミーがより良い弁護士と言っているのでしょうか?

実はそうではないことを、以下説明していきます。

『ブレイキング・バッド』での「Better Call Saul」初出

多分「Better Call Saul」の初出は『ブレイキング・バッド』のバジャー逮捕のシーン。このバジャーが座ることになるベンチに、「Better Call Saul!」の広告があるのです。そして、ここからスピンオフにつながる『ベター・コール・ソウル』の歴史が紡ぎ出されたのでした。

『ブレイキング・バッド』で、ベター・コール・ソウルのベンチ広告
Breaking Bad [Credit: AMC]

「Had Better」の意味

この広告で使われる「better」は、実は「had better」の略なんです。そして、had betterの意味は・・・

had better

動詞

(イディオム的、原形不定詞と共に、口語)すべき、する必要がある、しなければならない。

Verb

(idiomatic, with bare infinitive, informal) Should; ought to; need to; must.

should, ought to, need to, must等の「しなければならない」系の意味なんですね。

だから、このベンチ広告は「弁護士ソウルに電話しなければならない」と視聴者に訴えかけているのです。ただし、この裏にはちょっとしたオプションの意味が付加されているんです。それが「しないとやばいことになる」というニュアンス:

had better

使用上の注意

  • 「Had better」は強い表現だ。通常、アドバイスに従わない場合は、ただでは済まない、マイナスの結果になる、ことが意味される。
  • 話し言葉では、hadは接語の’dになるか省略される。betterを参照のこと。

Usage notes

  • Had better is a strong expression. It usually indicates that there will be a consequence or negative result if someone does not follow the suggestion.
  • Colloquially, had is often reduced to the clitic ’d or omitted. See better.

つまり、「俺に電話しないとやばいことになる(=裁判で負ける)」と言う感じで、かなり強い意味合いなんですね。普通、そこまでするかって感じじゃない?(笑)

でも、スピンオフ『ベター・コール・ソウル』を見た読者なら、この理由が分かるのです。ジミーが事務所の留守電をこわごわ再生するも、結局1件もクライアントからの電話がないシーンは結構印象的だったと思いますが、ジミーはあれがトラウマなんですね。だから、後年の『ブレイキング・バッド』では「電話をしないとやばいぞ(you had better call Saul)」と広告でクライアントに電話させようと脅しを掛けているんです(笑)

全ては、ネイルサロン裏の狭く薄暗い部屋で、クライアントからの電話を待ち続けたところが出発点なのですね。

『ベター・コール・ソウル』で、ジミーはクライアントからの留守電をチェックする
Better Call Saul [Credit: AMC]

まあ、作品の制作時系列的には『ブレイキング・バッド』が最初で『ベター・コール・ソウル』が後なので、クリエーター陣がすごく頭を捻って『ベター・コール・ソウル』を作り上げていったのが分かりますけど。

なんと「Had Best」もある

稀といっても、めったに現れないというわけではありませんが、had bestという表現も英語にはあります。ちょうどbetterがbestになっただけで、後は同じですね。

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How I Met Your Mother [Credit: CBS]

最後に

今回は海外ドラマ『ベター・コール・ソウル』のタイトルの意味について見てみました。電話しないと承知しないと言っているも同然なんですね。そして、それは、貧乏なジミー時代の0件の留守電のトラウマから来ているのでした。

ちなみにですが、英語では「call」「saul」とライムしているにも関わらず、日本語だとわざわざ「コール」「ソウル」と韻を壊しているのは何なんでしょうね?

自分は以前ソールで痛い目に合っているのでこの事実は理解していますが、初心者にすごく紛らわしいタイトルにしている印象です。

ここからも、日本人はライムに無頓着と見られていることが言えそうですね。それでは〜


『ブレイキング・バッド』だと・・・?↓