WBC終了。日本優勝

日本優勝の劇的な結末でWBCも終わってしまいましたが、しびれる試合が後半多く、自分は思いっきりハマってしまいました。野球を見るのはそれこそ何十年ぶりだったので、ルールが少し変わっている感じで、その中で一際目を引いたのが「ビデオ判定」。昔はこんなものはなく、審判の決定が最終判断となっていたはずなので、時代の移り変わりが感じられて面白く思ったものです。

野球で審判はアウトの判定を出す
Image by Keith Johnston from Pixabay

「チャレンジ」と「リクエスト」の違いの話題

そんな中、最初の方の試合中に、これに関連してアナウンサーが面白い話を紹介してくれました。国内NPBの試合ではビデオ判定を要求することを「リクエスト」と言うのだそうですが、WBCのゲーム中はMLBルールに合わせてこれを「チャレンジ」と言うことにすると断りを入れた際の話。なんでも、そのアナウンサーによれば、NPBとMLBで呼称が違っている理由は、そのまま「チャレンジ」だと強いニュアンスなので、導入時にそれを弱める「リクエスト」に日本ではなったという話でした。

確かに「チャレンジ」は挑戦の意味なので、審判に挑戦するのは強い響きになってしまう。そこで、「リクエスト」というあくまでもお願いベースになったところが、いかにも日本的だなあとほっこりしたものです。

Challengeの持つ挑戦以外の意味

しかし、自分的にはこの英語でのchallengeの使用が普通に思えるのも事実なんですよね。

というのも、英語では一般的に、相手の主張に反対することを言うのにchallengeが使われるからです:

challenge

  • (他動詞)なにかに異議を唱える。
  • (法律、他動詞)陪審員に公式に意義を申し立てる。
  • (transitive) To dispute (something).
  • (law, transitive) To make a formal objection to a juror.

つまり、審判が下した判定に異論があるなら、それは「チャレンジ」で問題ないんです。チャレンジといっても審判に楯突いて(物理的に挑戦して)いるわけでは決してなく、相手の主張と真っ向対立する(アウト vs セーフ)んだから、それはchallengeと呼んで然るべきなんですね。

だから、例えば皆さんが邪馬台国が近畿にあったと主張していて、それに異議を唱えられたらそれはchallengeで、皆さんはchallengedされたというわけ。決闘を申し込まれた(challenge to a duel)わけではないんです。

I see no other option than to challenge you to a duel.
『ビッグバン★セオリー』で、シェルドンは決闘を申し込む
The Big Bang Theory [Credit: CBS]

海外ドラマでの「challenge」の使われ方

なお、上のWiktionaryにもあったように、相手側の主張への異議なので、法廷ドラマでこのchallengeはよく出てきます。

例えば、次の『ベター・コール・ソウル』では、キムが検察の証拠採用に異議を唱えることはできないとchallengeを使っています。このように、裁判では証人の証言能力から証拠など様々なことにチャレンジするのが弁護士の仕事ですね。

キム: I can’t even challenge their admission into evidence because he wrote them to himself.
『ベター・コール・ソウル』で、地下駐車場でタバコを吸うジミーとキム
Better Call Saul [Credit: AMC]

他にも、『HOMELAND』では、敵地から生還した兵士ブロディを英雄と祭り上げる上層部に、密かにスパイだと異議を唱えるキャリー。上司ソールはそれにチャレンジしたいなら、お前のアヒルを1列に並べておかないととbetterを使って強い口調。このアヒルを並べるは明らかにイディオムな響きで、実際、準備をするの意味です。

ソール: Want to challenge that, better be damn sure you get all your ducks in a row first.
『HOMELAND』で、キャリーとソールは歩きながら会話
Homeland [Credit: Showtime]

最後に

今回は野球でのビデオ判定要請をWBC(MLB)では「チャレンジ」と呼ぶのに、日本では「リクエスト」になっているという状況が面白くて記事にしてみました。

英語をそのまま導入するのではなく、日本風にアレンジすることは日本では非常によくあることですが、英語のまま導入していれば(もちろん最初は戸惑うでしょうが)、慣れれば2種類の用語間で混乱することもなく、英語「challenge」の持つ別の意味も同時に学べて一石二鳥な気がするのは私だけでしょうか?

いくら親切心からでも結果的に負担になってしまうのはよくあることなんですけどね。これに関して自分は昔から不満があるのですが、それはまた別の話。それでは〜