ドラマの中の英語

The Name of the Game Is Communication

過去形と現在形の遠近感

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過去形は現在形に比べ距離があるとか、よく英語の教科書に書いてありますよね。その距離感から過去形は一歩引いてる感じが生まれて、そこからwould you, could youの丁寧さに繋がるとか。たしかそんな感じで続いたと思います。

でも、そういった感覚は日常会話では特に説明されないわけです。「私がここで過去形を使ったのは・・・」とかわざわざ述べる人はいませんから・・・

と思ってたんですけど、なんと説明されている海外番組の場面があったではないですか! ということで、今回はそのシーンを見てみたいと思います。

The Golden Girlsという日本では馴染みのない超有名80年代シットコムから。場面は未亡人ローズが死んだ夫(Charlie)のことをルームメイトのドロシーと料理人ココに語るシーン。

ローズ: I used to sleep so well. I never even turned over. I'd wake up with a perfect hairdo. Charlie, on the other hand, moves all night long. His side of the bed looks like a murder took place.

ドロシー: Rose, Charlie is dead.

ココ: Why tell her?

ドロシー: Coco, it's 15 years!

ローズ: I know he's dead. I'm not crazy. I just like to talk about him in the present tense sometimes. It makes him seem closer.

The Golden Girls/Season 1/Episode 1

ローズが過去の自分のことを語るのに過去形を使っているのに対し、死んだ夫のことを語るのに現在形を使っていますね。その理由は・・・夫を近くに感じられるから。これはまさに英語の文法の教科書に書いてある遠近感そのまんまです。死んだ夫をいつまでも近くに思いたい乙女心がそうさせているんです。過去形で語ると夫が遠くになってしまう・・・。

でも、教科書に載ってるこの理屈を知ってる人の中で、死んだ愛しい人のことを英語で語る際に、現在形にできる人って実際どれだけいるんだろうかとも思うんです。多分いないんじゃないかな。こういうのって、理屈で知っていても感覚的に会得していないとできないものですし。

だから自分はこのシーンを見た時、教科書に書いてあることが裏付けられて嬉しい半面、こういった感覚は一生得られないんだろうなあと限界も見えて、残念な気持ちになったのも事実です。こういう理屈じゃないことって、どうやったら感覚として身につけられるんでしょうかね? 多分、海外ドラマ見ているだけでは一生無理な気がします。

さて、このシーンはもう一つ見どころがあります。それはローズの言動への周囲の反応です。 まず、ルームメイトのドロシーが何か可怪しいことに気づき、チャーリーは死んだんだと事実を述べます。チャーリーだけ現在形なので、「チャーリーがまだ生きてるとローズは考えている」とドロシーは思ったんですね。料理人ココの"Why tell her?"は、「なんで言っちゃうの?」「夢を見てる人に現実を突きつけるな」といった感じ。「そのまま夢を見させてあげろ」ということなので、ココもローズがちょっと可怪しいと思ってます。ドロシーが言う死後15年経ってるというのは、死後一ヶ月とかならいざしらず、15年なら死んだ夫を吹っ切るのに十分な期間ということでしょう。ローズはというと、夫が死んだことは十分承知で私は狂ってないとします。日本人の自分的には、ローズの過去形現在形ごっちゃ混ぜのセリフに違和感は全く感じないのですが、ネイティブにとっては違和感アリアリなんですね。こういうところも埋められないギャップを感じます。

以上、文法書に載ってる時制の持つ遠近感がちょうど説明されるシーンを紹介してみました。自分の非ネイティブとしての限界もちょっと見えて残念な感じですけど、教科書読んでるだけではこういう自分の限界は見えないんで良しとしますか! こんなたった20秒のシーンで色々なことを学べるんですから、海外番組・映画での英語勉強はコスパ良すぎです(←これが言いたかった)