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アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺の感想

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週末にネットフリックスで海外ドラマのアメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺(The Assassination of Gianni Versace: American Crime Story)をイッキ見しましたので、以下その感想です。

アメリカン・クライム・ストーリーは実際起きた事件をドラマ化するんだけど、シーズンごとに対象事件が異なるのが面白い形式の海外ドラマ。実際、シーズン1ではO・J・シンプソンの事件だったし、今回のシーズン2はヴェルサーチ暗殺といった塩梅。

このシーズン2:ヴェルサーチ暗殺は2018年にアメリカの放送局FXで放映されたのをネットフリックスが権利を購入したみたいですね。ネットフリックスさん、何故もっと早く買わなかったし。

実は、自分はこの事件のことを全く知らなくて(1997年って何してたんだ?)、このドラマで初めて知ったんだけど、そしてファッション業界とかも別世界で知ったこっちゃないんだけど、そういった知識はなくても全く問題なし。ただ好奇心とポップコーンだけ用意すれば、純粋に楽しめます。むしろ、前提知識ゼロほうが楽しめるかもね。だから見るのを躊躇してる人はその点安心してほしいと思う。個人的に、この作品は本当に多くの人に見て欲しいです。

というか、自分は英語勉強のため、すべてのサービスで表記を英語モードにしてるので、このドラマのタイトルも視聴時は英語表記だったんです、The Assassination of Gianni Versaceって。そして、assasinationの意味は「暗殺」って理解できるんだけど、ここだけの話、Gianni Versaceが当初誰なのか全く分からなかったw そして、ドラマ見てる際も、服飾デザイナーのヴェルサーチだとは、しばらく気づけませんでした。だって、英語の発音がヴァーサーチェなんだもん(笑) これは英語音声で実際聞いてみて下さいな。

さて、ドラマの内容はというと・・・これがものすごいの一言。自分の中では現時点で2019年のトップでもおかしくないくらい。

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クラシック音楽アルビノーニのアダージョの悲しい調べが流れる中、物語は1997年の暗殺事件当日の朝から始まります。ヴェルサーチは療養先のマイアミの別荘で起床し、いつもどおりの日課をこなしていく。このシーンは、なぜかヤング・ポープ 美しき異端児の冒頭と重なった(分かる人いるかな?)。そして、ヴェルサーチは朝食を済ませた後、近所のキオスクに雑誌を買いに外出する。その一方、連続殺人犯で逃亡中のアンドリューは、マイアミの浜辺で海を眺めている。リュックの中に拳銃を隠して。彼の逡巡が描かれた後、彼は意を決して目的地へ向かう。そう、ヴェルサーチの別荘へ。そこにちょうど買い物から帰ってくるヴェルサーチ。鍵で門を開けようとする瞬間、アルビノーニのアダージョのクライマックスが不意に訪れ、それと同時にヴェルサーチも凶弾に倒れるのだった・・・。このアルビノーニのアダージョのシーンは、全エピソードを見終わった後、もう一度見ることになるかと思います。

そしてこのドラマは、アンドリューのマイアミに来るまでの4つの殺人から幼少時代までを時間を遡りつつ描いていきます。この手法、ちょっと奇をてらってるけど、自分的には結構新鮮でした。冒頭に暗殺が描かれて、茶の間の頭の中が?だらけなのが、エピソードが進むに連れて徐々に氷解していくって感じ。

肝心の視聴者の興味は、何がそこまで彼を駆り立てたのか? そして、彼とヴェルサーチとの関係は? もちろん、関係者はもう既に死んでいるので、これには正解はないんだけどね。各人が考えるしかないところ。それでも、このドラマでは、エピソードを追うごとに年代が遡っていき、アンドリューの交流関係と性格がどう形成されていったのかを描くので、その答えの一端は明らかになる感じです。また、アンドリューとヴェルサーチの交わした会話が最後に描かれるので、このパズルを解くミッシングピースの一つにはなります。

そうそう、このドラマは連続殺人犯アンドリューをかなり美化して描いているので、そこは米国人にとっては抵抗があるかもしれない。いくら家庭の問題や同性愛があっても、結局は殺人犯以上でも以下でもないからね。日本人的には、オウムの事件をオウム側を美化されてドラマ化されても困っちゃうのと一緒かな?(ちょっと違うかな?) またそれに関連して、上で述べたアンドリューとヴェルサーチの会話などは基本全て創作なので、ある方向に誘導しようとする監督の意志みたいなのが感じられるところもある。それも一部の人にとってはマイナスかもしれないね。でも、自分はもともとこの事件を知らなかったので、素直に楽しめたことは事実。

同性愛と言えば、このドラマ全般に流れている主要テーマの一つでもあるんです。最終的にこの事件で死んだのは、一人を除いて全て同性愛者じゃないかな。アンドリューもヴェルサーチもそうだし。この事件が起きたのは1997年。当時は結婚なんてまだ認められていないし、偏見だって相当あった時期。もしもだよ、もしこれが2019年の今日起こったとしたら、アンドリューは同じことをしたのだろうか? これも正解がない質問。でも、起こっていなかったと思うんだよなあ・・・

このドラマの数少ない欠点を挙げると、一部説明がされていないことが多いんです。良い方に取れば、視聴者の想像に任せてくれてるというか。 例えば、鳩。ヴェルサーチと一緒に鳩も死ぬのは何故なんだ?偶然の産物?とか(笑) あと、浜辺で海を眺めている時、彼の太ももにやけどのような痕が映し出されるんだけど、それも説明がありませんでした。そして最後に、第三の犠牲者リーとどう知り合ったかも描かれません。

redditでも自分と同じ疑問を持った人がいたようです:

www.reddit.com

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さて、この海外ドラマで最も輝いているのは、何と言ってもアンドリュー役の役者Darren Crissです。これがすごい。アンドリュー知らないけど、本物みたいなんですよ。同性愛という意味でもそうだし、殺人犯という意味でも、ボッチという意味でも。実際の本人が死んでしまっている今、この役の適任者は地球上でこの人、ってくらいピッタシでした。 そして、なんでこんなに同性愛の演技がうまいんだろうと考えてたら、なんかこの役者の顔に見覚えがあることに気づきました。されども、考えてもさっぱり出てこないのでIMDbを使ってズルをすると・・・

www.imdb.com

なんとこの人、グリー(Glee)でライバル校のゲイの役やってたんじゃん! それなら超納得です。なるほど、それでうまいのか。

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Darren Criss in Glee & American Crime Story

そしてこの人、この役でゴールデングローブ賞、エミー賞取ってるやん! さすが(俺の目)。

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Darren Criss got 70th Emmy Awards: Outstanding Lead Actor In A Limited Series Or Movie

エミー受賞の名前が呼ばれた時、左上でクィア・アイのファブ5もスタンディングオベーションしてるのが面白い(笑) 同じ同性愛者として、このドラマに思うところがあるんでしょうね・・・

そして更に凄い情報が、実際のアンドリューの父親がフィリピン人だったのと同様、このDarren Crissも母親がフィリピンのセブ出身なんだって。フィリピンと中国とスペイン系みたい。へえ、数奇な運命。

最後に全エピソードを見終わると、普通の人はもう一度エピソード1の冒頭を再生すると思います。アンドリューの全部の情報を知った上で、ヴェルサーチ暗殺の瞬間を改めて見返す。最初に見た時の印象と180度変わっているのが分かると思います。

ちなみに、アルビノーニのアダージョが流れる中自分が考えていたことは、この事件は不可避(the inevitable)だったのか?ということ。たらればを言わせてもらえば、

  • FBIがアンドリューのチラシを事前に配っていれば
  • 最初の殺人の時点で警察が迅速に行動していれば
  • テレビ局が車載電話の情報をリークしていなければ
  • 一緒に逃走していたデイビッドが勇気を振り絞って逃げていれば
  • デイビッドとジェフリーがfor old times' sakeで情けを掛けなければ
  • 父親の”特別”待遇がなければ
  • 当日ドナテラがヴェルサーチからの二度目の電話に出ていれば
  • 当日環境客のサインを断っていなければ
  • 時代が違っていれば

等々いくらでも思い付けるんだけどね。本当に、全てが悪い方向に行ってしまった感じで、見終わった今でも悲しすぎます。

この事件のことを知らない人は絶対楽しめる&考えさせられると思います。超おすすめです。ネットフリックスに加入してない人は、これ見るためだけに一ヶ月の無料視聴を試す価値がありますよ。

こういう良作は早く日本に輸入して欲しいですね、ネトフリさん(チラチラ