ドラマの中の英語

The Name of the Game Is Communication

「神話クエスト:レイヴンズ・バンケット」の感想

広告

f:id:insaneway:20200209223458j:plain
Mythic Quest [Credit: Apple TV+]

神話クエスト(Mythic Quest)」は、アップルTV+から飛び出てきた上質のコメディ。意外や意外と言ったら失礼だけど、なぜアップルTV+?と疑問を持つほど、脚本は洗練されてるし、キャストも各キャラのイメージにバッチリ合ってると言う具合。そして、これが実に面白かったんだ。もうね、声を上げて笑ったのは久しぶりって感じ。本当になんでアップルTV+なんだろう? ネトフリならもっと成功が約束されたはずのに。

一視聴者としてはアップルTV+って存在自体よく分からないんですよ。アップルTVってサービスが既にあるのに、アップルTV+だからね。もう違いがよく分かりません(笑) 多分、中の人はクスリやりながら名称を決めたんだと思う。ディズニー+にあやかろうとか(笑) いずれにせよ、日本で視聴する人はほぼ皆無だと思うので、このブログでだけでも宣伝をしておきます

アップルTV+の一週間無料のお試しをする時は、「神話クエスト」をまず見ろ

って(笑) ザ・モーニングショーなんかよりこっちのほうがキラーコンテンツになり得ると思います。まあ、フレンズ好きな人はレイチェル役だったジェニファー・アニストンが出てるからモーニングショーから入るんだろうけど。

実は、自分はこのドラマを全く期待せずに見始めたんです。

事の経緯はこんな感じ。Macが起動しなくなってしまい、週末OSの再インストールをしてる最中に、作業ついでにデータ退避してあるサブのラップトップで何か視聴するものはないかなーって。再インストールって時間かかるし、データの移行やアプリとかもインストールするとなると結構時間取られるじゃないですか。しかも、途中で「はい」とか選択しなくちゃいけないからずっと席を外すわけにもいかない。そして、実は1月にアップルTV+のお試し期間を使って「ザ・モーニングショー」は見終わったんだけど、「フォー・オール・マンカインド」が途中になっちゃってたんです。だって、たった一週間しかないんだよ(笑) 普通は一ヶ月やん(アップルはどんだけケチなんだw) というわけで、まあ月600円ならいいだろうと「フォー・オール・マンカインド」の続きを見ようとしたわけです。そうしたら、ちょうどその時アップルTV+では「神話クエスト」が出たばっかしだったんですね。それで何だこりゃ?と期待せずに見始めたら・・・

これが面白いのなんの。もうさ、OS再インストールは正直どうでも良くなってしまったくらい(笑) それぐらいに面白い。

以下ドラマの簡単なネタバレがあります。

番組冒頭、マルチプレイヤーのオンライン3DゲームMythic Questの画面が出てきて、そして開発者が出てきてなにか話し始めたので、自分はこの番組っててっきりオンラインゲームのドキュメンタリーかなんかだと思ったんですよね。だって、Mythic Questって名前からして本当にありそうだし、何より、実際のゲーム画面を使っているから。 そうしたら、そのゲームのアイテム等の課金担当としてブラッドなる人物が出てきたんだけど、顔を見たらびっくり。「あ、コミ・カレ!!のアベッド」だって。その瞬間、自分はこれがゲーム制作会社を舞台にしたドラマだと気づいたんです。

ちなみに、彼はコミ・カレ!!ではちょっとオタク入ったアジア系の生真面目な学生でしたが、こちらでは金儲けだけに徹する冷徹な頭の回転早い系ビジネスマンを演じます。どうやってユーザーから金をむしり取ろうかといつも考えているんだけど、ある時、どうせ高すぎて売れないと思いつつも1個50万円の強アイテムをゲーム内で売りに出す。こういうゲームではおなじみですよね。誰でも無料でゲームができるけど、強キャラになるにはお金でアイテムを買う必要があるって。でも50万円はちょっと高すぎのはず。でも、意外にもこれが売れてしまうんだ。彼はそんな馬鹿げた金出せるのはサウジの石油王だと思って逆に落胆してしまう。というのも、彼が値札をどうつけようとも、サウジの石油王は結局買ってくれるから。つまり、彼のマネタイズ、利益を最大化させる能力はまるっきり意味のないものってわけ。だって、どんな値段をつけようとも買ってくれるのなら、それは自分でなくても誰でもできる仕事という理屈。しかし、後でホームレスが買ったと知って彼は覚醒するんだ。「自分の使命はいかに貧乏人から金を巻き上げるか、生活費を切り詰めてようやく貯めた最後のペニーをいかに吐き出させるかだ」って(笑) それをマシンガントークで言うのが現在の社会に対する皮肉で心地よいし、日本でもソーシャルゲームのガチャが社会的問題になってたりするので、これが非常に興味深いんだ。

そうそう、マシンガントークといえば、このドラマは登場人物がほぼ全員早口な感じです。ただそんな中で、一人だけゆっくり、そして上流階級の知的な英語をしゃべる人物が出てきます。それがCWなるキャラ。海外ドラマ通の人なら、ホームランドのダール役として知ってるかもしれない。

f:id:insaneway:20200209233824j:plain
Mythic Quest [Credit: Apple TV+](左から、CW、ブラッド、デイヴィッド、イアン、ポピー)

彼のこのゲーム会社での仕事は、ゲームのストーリーを作ること。昔なんかの賞を取ってて、いつもそれにすがっている。でも、ゲーム自体は実際やったこと無いんだよね。そして、彼はある時ユーザーは自分の書いたストーリーなんて無関心と知って落胆するんだ。敵を倒すことに夢中になってるだけで、自分の紡ぎ上げたストーリーには目もくれてないと・・・。他にも、AIに仕事を取られると知って絶望したりもする。こう書くと、どこかで聞いたことのある笑いなんだけど、これが見事にゲーム会社の枠組みにマッチしてるんだよね。脚本もよく練られているの。だから、初めて聞いたような面白さがあるんです。

ちなみに、このCWのおじいちゃんが途中で平凡さに目覚めるシーンがあるんだけど、そこでのセリフ

I am embracing mediocrity.

Mythic Quest/Season 1/Episode 8

を聞いた瞬間、あることに気づいてしまいました。

「あ、この人映画アマデウスのサリエリの役者じゃん」って(笑) だって、サリエリも映画最後でmediocrityをembraceしてましたからね。なるほどなあ、こんな細かいセリフにもネタが仕込んであるのですね。

f:id:insaneway:20200209235406j:plain
Amadeus [Credit: Orion Pictures]

他にも言いたいことがたくさんあるんですけど、このままだと全部喋ってしまいそうなので、最後に一つ、伏線について。このドラマは伏線回収がすごく上手です。良い脚本家(CWではないはず(笑))が揃ってるんだと思います。エピソード5が他のエピソードとは異色の、1990年代のPCゲーム業界のとあるゲームにまつわる物悲しいラブストーリーを描いてるんですけど、これが回収されると想像できた人は居ないはず。それぐらい最後びっくりです。

ということで、長々と書き連ねてきましたが、ゲーム業界知らなくても面白いし、ものすごくありえる気がするし、ストリーマーの14歳のガキンチョに右往左往するゲーム会社ってのも今の世相を反映してるし、本当におすすめ。

一つ言えるのは一週間無料を使ってでも「神話クエスト」だけは見るべしってこと。神話クエストだけに使うのがもったいないなら、アップルTV+のオリジナル作品群が揃ってきたらでもいいですけど。この作品をシーズン1だけで終わらすのは社会的損失過ぎますよ!