ドラマの中の英語

The Name of the Game Is Communication

前置詞の持つニュアンスが句動詞に引き継がれている件

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(*この記事は長文です)

リアルで怒られた

このBlogってトランプ大統領にそんなに辛辣かな? 面白おかしく茶化すことはあっても、そこにはいつも愛を入れてるつもりなんですけどね。絶対、「トランプは人種差別主義者だ! 今すぐやめろー」とか短絡的なことは言ってないはず。というか、辞めてもらったら逆に悲し過ぎますよ・・・

昔の話、自分は読書は大好きだったんだけど、書く方はてんでダメで、小学校の作文の宿題とか本当に苦労したんですよね。原稿用紙2枚と言われたら、なんとか改行しまくって1枚埋める+2枚目の最初の数マスだけ埋めて提出とか(笑) それ2枚じゃないじゃんw。引き伸ばすため漢字で書けるところをわざわざ平仮名にしたり。多分、自分の文章で読点(、)が多いのは、その時のなんとかマス目を一つでも埋めようと、艱難辛苦したところから来てると思う(笑) ま、そういうわけで、文章書くのが苦手な人が、なぜか海外ドラマに関するblogを書いているんだから、世の中分からないものです。そして、本来苦手な分野ゆえ、うまく表現できないことも多々あると思うので、大目に見てくだされば幸いです(cut me some slack

閑話休題。まあ、実は、トランプに手厳し過ぎるという指摘を先日リアルで受けたので(笑)、今回はトランプさんを褒めつつ、表題の「前置詞のニュアンスが句動詞に引き継がれている」ことについて述べるという一見不可能な2つのことを同時にやってのけようと思います。どちらもかなりの難度。さて、成功するのかどうか? ←こういうこと書くから怒られるのかも(笑)

トランプの卒業式のスピーチ

遡ること一ヶ月と少し前、トランプ大統領がメキシコとの国境の壁予算を出さない議会に対抗して、政府機関をシャットダウンしました。一応、トランプの名誉のために言っておくと、政府機関シャットダウンは前代未聞というわけではありません。事実、オバマ前大統領だってやったくらいです。問題はその期間だったんですけど。そんな最中、あるビデオクリップが浮上(surface)しネットで話題になります。それは、トランプ大統領がある大学の卒業式で行った卒業生へ送るスピーチだったんですね。卒業式のスピーチと言えば、もちろんスティーブ・ジョブズのものが有名ですね。stay hungry stay foolish, connect dotsですよ。トランプ大統領のスピーチも、私が見るに、それに勝るとも劣らない熱いものだったのです。しかし、その内容の一部が、時期的に問題だったのでした・・・

次のNBC Newsの報道が短くまとまっています。

youtu.be

I’ll tell you, to me, the second-most important thing after love what you do is never, ever give up. Don’t give up. Don’t allow it to happen. If there’s a concrete wall in front of you, go through it. Go over it. Go around it. But get to the other side of that wall.

Trump

スピーチ最初の「何があろうと絶対諦めるな」はOKですよね、ちょっと松岡修造チック。その先が議論を呼び起こしたのです。曰く、「眼の前に壁があろうとも、突き進み、乗り越え、回り込んで、必ず逆側に辿り着け」。なんと素晴らしいスピーチ。聴衆の卒業生の中には、その後の人生で困難にぶち当たった時、このトランプのスピーチに励まされた人も居たことでしょう。

でも、ちょっと待ってください。何故このクリップがこのタイミングで浮上したのでしょうか? もちろん、トランプを褒めそやすためではありませんね。スピーチ内でトランプが使った例えが大問題だったのです。それが「壁」。当然トランプは、人生における困難の比喩的な意味で「壁」を使ったのですが、この時あいにく、メキシコとの国境に建てる「壁」の予算の問題で政府機能をシャットダウンしていたんです。そして、その国境の「壁」が必要な理由、それは、メキシコからの不法入国を阻止するため、ドラッグの密輸を防ぐためという理屈なわけです。つまり、壁のこちらのアメリカ側に来させないため。ここに大きな矛盾が生まれます。卒業生向けスピーチでは、何があっても壁の向こう側に行けと言ってるのに、大統領の今現在は壁を作りさえすれば誰もこっち側に来れないと言っているのです。不法移民(Dreamer)達は命がけで国境まで来てるんだからみんな必死。卒業式スピーチの通り、壁なんか死に物狂いで乗り越えてしまうんです。だから、反トランプ派は主張します、「壁」なんかそもそも意味ないし、政府機能シャットダウンも不要だと。ね、よくぞこのクリップを発掘した、って感じですよね(笑) 狙ったようにピンポイントで矛盾なんです。美しさすら感じます。そういうわけで、このスピーチ動画がネットで大きな議論を呼んだのでした。

おっと、いけない、いけない。このままでは、いつもの抜けてるトランプ大統領の構図になってしまい、思わずそっち方面に暴走してしまいそう(笑) この記事ではそれは控えるんでした。

冗談はさておき、実際のところ、トランプ大統領本人は昔の自分の卒業スピーチについて意識していたと思われる節があるんです。該当箇所を再度引用します。

If there’s a concrete wall in front of you, go through it. Go over it. Go around it.

ところで、トランプ大統領はメキシコとの国境にどんな「壁」を実際建てようとしていたのでしょうか? ニュース等によると、

まず、強化コンクリートの壁です。はい、go throughできませんね。throughは直進のニュアンスですから。

次に、高さ十数メートルの壁です。はい、go overが困難ですね。overは上を超すニュアンスですから。

最後に、太平洋から大西洋まで切れ目の無い完璧な壁です。はい、go aroundが不可能ですね。aroundは横から回り込むニュアンスですから。

つまり、トランプ大統領が建てようとしている「壁」は、自分の昔のスピーチの手法でも超えさせないようなデザインにちゃんとなっているのでした。これは偶然かもしれないけど、トランプが昔の自身のスピーチを意識していたのは大いにあり得ると思います。

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前置詞のニュアンスと句動詞

はい、ここまで長かったですが、2019年1月に実際起きた現実のニュースを追ってきました。ここからいよいよ本題の前置詞の話に入っていきます。 もちろん対象は、トランプ大統領が壁の向こう側に辿り着くのに使った物理的な動きを意味する3つの前置詞through, over, aroundです。それぞれが持つニュアンスは、直進、上超え、迂回でしたね。このニュアンスが句動詞にもちゃんと引き継がれることを以下確認します。

ここでは動詞getを例に取って、get+上記3前置詞で作られる句動詞を考え、海外ドラマでどう使われるか見てみましょう。

get through

Breaking Badからはウォルターが癌になって莫大な治療費が必要になってる状況。親友のグレチェンは治療費の提供を申し込みますが、ウォルターは秘密裏にこれを拒否。メス(覚せい剤)作りで得たお金で支払いを済ませます。しかし、妻スカイラーにはグレチェンの支援で賄っている風を装います。最終的にこれがグレチェン本人にバレて、ウォルターに疑いを持つグレチェンはスカイラーに支援をカットすることを宣告(元々払ってなかったけど)。スカイラーが悲嘆に暮れるのが次のシーンです。ウォルターは「we'll get through this」と妻を励まします。ここのthisはもちろん直面する難局。夫が癌で、その治療費用も出せない状況。それをget throughするんですから、その難局を直進するんですね。なんとか生き抜く・切り抜けるって感じです。抜け出しても身も心もボロボロになってるかもしれませんが、行くしかないんです。ちなみに、この時点のウォルターは、メス作りで得たお金があるので、内心余裕ぶっこいているんですけどね(笑)

ウォルター: Listen. Not to sound selfish but as far as we go we'll get through this, okay? I mean, they've already paid for most of my treatment, right? Hey. We're gonna make it. All right? I promise.

Breaking Bad/Season 2/Episode 6

get over

次はフレンズの最終回のシーンから。レイチェルが仕事でパリに移住しちゃいます。みんなにお別れを言って、空港に向かったところ。彼女が去った後、ジョーイはロスに向かって、「ようやく彼女をget overできるね」と語りかけます。ロスはしばらく考えてから「get overしたくない」と言い出すんです。そしてレイチェルを追い、大急ぎで空港に向かうのでした。後は知っての通りですね(笑) ここのget overは彼女を乗り越えるという意味ですね。そして、彼女を後ろ(過去)にして、自分は自分の道を進んで行くニュアンス。ほらね、やっぱし句動詞になっても、overの上から越える感じが残っています。ここで、ロスはget overしたくないんだから、レイチェルを追いて先に行きたくないんです。忘れられないんです。

ジョーイ: Maybe now you can actually do it. You know? You can... You can finally get over her.

ロス: Yeah, that's true. Except ...I don't wanna get over her.

ジョーイ: What?

ロス: I don't! I wanna be with her.

Friends/Season 10/Episode 17

get around

最後はスーツ。ハーヴィーを探していたダニエルがようやくハーヴィーを捕まえたのが下記場面。行きそうな場所を色々探してもダメで、結局機転を利かし、ハーヴィーの同僚のダナの飛行機チケットを確認して居場所を突き止めたのでした。ここで、FAAはアメリカの連邦航空局で、peskyは煩わしいの意味。ダニエルは、ダナの名前までは隠せなかった、つまり、航空局の規則まではget around(迂回、回避)することはできなかったと言ってるわけですね。ここの前置詞aroundは問題を横に回って避けるニュアンスなのが分かると思います。

ダニエル: Parkville, Missouri. Of all the places to run into you, Harvey.

ハーヴィー: Glad you could make it.

ダニエル: I almost didn't. I was on my way to Bakersfield. After all, Harvey Specter had a flight booked there. When suddenly, I had a thought. What would Harvey do? So, I checked. And Dana Scott's flight plan was here. Can't get around those pesky FAA regulations, can you?

Suits/Season 2/Episode 15

まとめ

長かった本記事も最後まで来ましたね。トランプのスピーチから始まって、その中で使われていた3つの前置詞を取り上げ、そしてそれらが句動詞になっても持っていたニュアンスが引き継がれることが分かって頂けたんじゃないでしょうか。今度英語の試験で

get _____

a) through, b) over, c) around

のような正しい句動詞を選ぶ3択問題が出たら、なんとなく答えられそうじゃない? 正解した暁には、是非トランプ大統領に感謝してあげて下さい(笑) だって、あのスピーチが無かったらこの記事はありえなかったのですから。

あと、今回の記事でお叱りは受けないと思いたいですけど、いかがでしょうか? トランプさんに結構忖度したんですけどね(笑) 最初に掲げた2つの目的は両方共無事達成できたと思います。

最後に、この記事は僕が学んできた国語の先生たちに捧げます。「先生、原稿用紙2枚以上書けるようになりました!