ドラマの中の英語

The Name of the Game Is Communication

イディオムをそのままの意味で取る=笑い

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Image by Poison_Ivy from Pixabay

よく英語関連のサイトを見ていると、海外の映画館で周りが笑ってるのに私だけ笑えなかった的な話があるんですけど、笑いって実はボキャブラリーだけ増やしても意味ないんですよね。笑いのテンプレであるお約束自体を知らないと笑えないと言うか。

そして、そのお約束を知るのに映画や海外ドラマ、シットコムなんかは結構重宝するんです。

今回は、そんな笑いのテンプレの一つでもある「イディオムをそのままの意味で取ることで笑いにつながる」パターンを見ていこうかなと思います。

とその前に、そもそもイディオムってなんなのでしょうか?

辞書によれば、慣用句・熟語とあります。簡単に言えば、そのままの字句通りの意味とは別の意味を持つ表現のことですね。

日本語だと、例えば、「へそで茶を沸かす」という慣用表現を聞いて、実際へそでお茶を沸かしてる映像をイメージする人は小学生以外はいないはずです。だって、これには「ばかばかしい」という別の意味があるから。そして、「へそで茶を沸かす」ことは現実ではありえない。だからイディオムになるんですね。

でも、この「へそで茶を沸かす」をその字句通り取った人、例えば外国人が居て、それによってコミュニケーションに齟齬が出たとしてください。周りは大笑いか苦笑かは分かりませんが、そのシチュエーションが笑いに繋がるんですよね。今回紹介するのはこのパターンの笑いです。

That Will Never Workから

まずはじめに、前回レビューした「That will never work」の一節から紹介。毎晩ネットフリックス事業の立ち上げで遅く帰宅する父親マークに、そんな事など知らない子供が質問するんです:

One night when I came home for dinner, my son Logan greeted me at the door and, instead of a hug, said he had a question to ask me.

"Sure, Logan. What’s up?"

He studied me for a moment, staring hard at the backpack I was shrugging off my shoulders.

"Is the bacon in there?”

I cocked my head. “What do you mean?”

“Mom said you were bringing some home,” he told me.

It took me a second, and then I got it. I couldn’t stop laughing for about five minutes.

Marc Randolph/That Will Never Work: The Birth of Netflix and the Amazing Life of an Idea

さて、ここで何故父親のマークは5分もの間笑い転げたんでしょうか? もちろん、子供がとあるイディオムをそのまま取ったことに気がついたからですね(笑) こういう箇所は、このイディオムそのものを知らなくても、何かあると感づける能力が重要です。

それでは、ここで、そのイディオムとは一体何なんでしょうか? 子供が父親のバックパックにベーコンが入っているか気にしていることから、ベーコンに関連しているのは間違いなさそうです。そこで、辞書のベーコンの項を調べると・・・

bring home the bacon

生活費を稼ぐ

とありました。父親の帰りが遅い理由を聞かれた母親が、「お父さんはベーコンを家に持ってくる」と回答したことがこの後の場面で分かりますが、子供はそれをその字句通り取ったのでした(笑) はい、これが今回の笑いのパターンです。簡単ですよね。

他にも、同書から。今度は幼い娘に聞かれます:

“Did you climb the ladder?” she asks, as she always does, knowing by my smile that there is something funny about it, but not exactly sure what.”

Marc Randolph/That Will Never Work: The Birth of Netflix and the Amazing Life of an Idea

「ハシゴは昇ったのか?」。ネトフリの社長をしてるのにハシゴとは、娘は父親を大工か何かと勘違いしてるんでしょうか?

いいえ、もちろん違いますよね。これも慣用表現の

climb the corporate ladder

出世階段を昇る

をそのまま子供は取っているんです。そして、その質問をされる度、父親は娘のあまりの愛おしさにニヤリとするのを抑えられないのでした。そして娘の方も、父の反応から何かがあると感づくのです。なんて素敵なんでしょう!

さて、海外ドラマやシットコムではこのパターンの笑いは、実はそれほど出てきません。というのも、登場人物は全員成人なので、すでにイディオム自体を知ってるからなんです。知らなかったら、単なるお馬鹿さんですからね。

ただし、ある特定のエピソードにこの笑いのパターンが頻出します。それが、異文化交流回。外国人が登場するエピソードですね。シットコムに特に顕著ですが、留学生や隣人として、更には一部メインキャラの一夜の恋人として外国人が出てくるエピソードがあります。その外国人が周囲と文化的摩擦を引き起こすことで番組上笑いに繋がるのですが、当然そこには英語の習熟度が低い故のイディオムをその字句通り取る笑いも出てくるんです。

ただ個人的に、このシチュエーションはだいぶ奇妙に映ることも事実なんでよね。というのも、その外国人は英語は下手なんですが、番組上メインキャラとコミュニケーションできないと話にならないので、強烈な訛りは一応ある上で、日常会話等の意思疎通は問題ないんです。挨拶、出身や趣味など普通にこなせる設定。でも、イディオムになった途端、最初に出した子供の例のように字句通り解釈し出すんですよ。でもさ、「へそで茶を沸かす」ってイディオム知らなくても、大人なんだから、「へそで茶を沸かす」には別の意味がありそうだな、と思うのが普通じゃないですか? でも、シットコムの外国人は一律文字通りの解釈なんです。まあ、笑いに繋げるためなんですけど、個人的にこの設定は本当に不思議に感じます。

残念ながら、このパターン例のいいシーンが見つけられなかったので、アニメのアーチャーからこのイディオムネタを逆手に取ったシーンを紹介します。

アーチャーから

アーチャーは東南アジアで海賊リーダーになります。といっても、手下どもの現地人は英語ができないので、そこの海賊に元々囚われていた米国人研究者を現地人との通訳として雇うアーチャー。しかし、海賊の手下に命令を下す際にイディオムを使うため、意思疎通ができない状況に陥ります(通訳が現地のイディオムを知らないため)。通訳からイディオムを使うなと何度ダメを押されても、結局無意識に使ってしまうアーチャーで、それが笑いに繋がります。以下のシーンで「Lend me your ears」と言われた海賊たちが大騒ぎした理由は一目瞭然ですよね。自分たちの実際の耳を取られると思ったため。だから、今回は「 take a knee」を訳そうとしない通訳なのでした(笑)

アーチャー: Okay, pirates. Hey, take a knee. Noah, you wanna?

通訳: That won't translate. It's like last week when you said: "Lend me your ears," and they were like: '&$?%&@'!$`+=#*/!!!

アーチャー: Damn it.

通訳: I can't do idioms. Sorry.

(中略)

アーチャー: you don't change horses in...

通訳: Idiom, idiom.

(中略)

アーチャー: Because your mouth's been writing checks your butt can't cash.

通訳: Do you even know what an idiom is?

Archer/Season 3/Episode 2

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Archer [Credit: FX]

最後に

今回はイディオムをそのまま受け取ると笑いに繋がるというパターンを紹介しました。笑いというものは結構基本的なパターンに則ってるものなので、そういう法則を知っておくのも英語ジョークに笑えるようになる一つの道ですね。というか、素人が毎回新しい笑いを発明するなんて、そうそうありませんからね。結局大抵のジョークは、多かれ少なかれ、過去のジョークの焼き直しに過ぎないのです。

なお、このネタと我々自身の英語の未熟さを逆手に取って、外国人に言われたイディオムをすっとぼけて文字通り取ってみるのも、実際の会話の場では面白いかも知れません。場は大爆笑の渦になること間違いなし。ただ、これは子供とか外国人だからこそ許されるって感じですけどね。それでは〜