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ネトフリ創業期を綴った「That Will Never Work」レビュー

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That Will Never Work: The Birth of Netflix and the Amazing Life of an Idea (English Edition)

That Will Never Work: The Birth of Netflix and the Amazing Life of an Idea (English Edition)

  • 作者:Marc Randolph
  • 出版社/メーカー: Little, Brown and Company
  • 発売日: 2019/09/17
  • メディア: Kindle版

ネトフリに興味津々

昨年末に読んでいた洋書のレビューを今年第一弾の記事にしたいと思います。

私は、昨年下期あたりから、ネットフリックスという会社が妙に気になりだしたんですよね。というのも、以前は近所のツタヤでDVDを借りていたのが、いつの間にか自分の中でネトフリになっていたのです。何でなんだろう?という疑問が最初の出発点。まあ、実際の店舗に行くのは面倒くさいし、ネトフリのほうが格安だし、しかも品揃えも格段に豊富。誰かに先にDVDを借りられていることもないわけですから当然かな。買ったMacにはそもそも円盤ドライブがついてないし。そして、ネトフリにある大量の海外番組を見まくって、いつの間にか英語までできるようになってしまった・・・。

ところで、私はよく冗談で、私の英語の先生はビッグバン★セオリーのシェルドン等のキャラなんで私の使う英語に文句がある時はシェルドンに言ってくれ、といってますけど(笑)、それに倣えば、ネトフリは私にとって英会話スクールみたいなもんかもしれませんね。だから、私の英語に文句がある時はネトフ・・・(以下略)

閑話休題。そんなネトフリも、日本ではオンライン映像ストリーミングサービスの一つで、Huluなんかと同じと見做されているかもしれませんが、実はビジネスの規模がぜんぜん違うんですよ。彼らは全世界190カ国以上でサービスを展開している。そして、契約者数は1億人を優に超えているんです。その一方、Huluは実質米国と日本とだけって感じ。日本だけ見てると同じなんですけど、世界規模で見ると規模が桁違いなんです。

そんなオンライン映像ストリーミングサービスの世界ですが、昨年末から様々なニュースが次々と飛び込んできます。ディズニーが21st Century Foxを買収して、その結果Huluの筆頭株主になったり。そのディズニーがDisney+というストリーミングサービスを開始したり。その一方、ゲーム・オブ・スローンズで有名なケーブルテレビ局HBOがストリーミングサービスHBO MAXを2020にスタートする予定で、ビッグバン★セオリーフレンズなんかの人気作を金に糸目をつけないでかき集めている最中だったり。かたや、アップルもApple TV+をローンチして、このビジネスに参加したりしてて・・・。そして、既にAmazon プライムビデオやYoutubeプライムなんかも市場にある状態なのは周知の事実。もうね、現時点ですでにゲームプレイヤーがごった煮状態、何が何だか分からないのです(笑) 

ただ一つ確かなのは、そこには超巨大な金鉱が眠っていて、ネットフリックスの独り占めにはさせたくないという強い思惑があるということ・・・

そして、もう一つ自分が気になっていたのが、実はネットフリックスは元々オンライン映像ストリーミングサービスなんてしてなかったという事実。なんと初期は別の事業をしていたんですよね。それが「どうして20年ちょっとでこんなに大きくなれたんだ?」というのが最も知りたいことなのです。

そんなこんなで、昨年の12月にネトフリのこと一度このブログでまとめるかと重い腰を上げて調べ始めたら、これがなんとネトフリの創業者の一人がちょうど本を著して出版したばかりだったのです(笑) これは好都合。自分が知りたいことが楽に、そしてある程度の信頼度を持って分かりそうと、年末に読み始めたのですが・・・

これが面白いのなんのって。カジュアルな英語と共に、自分も好きなアウトドアネタ、それに映画等エンタメネタを散りばめて、創業者の一人であるマーク・ランドルフが創業に至るアイデアの思いつきのきっかけから、2002年IPOしてNASDAQに上場した後あたりまでの苦労を詰め込んだ相当の力作本だったのです。

この本は、ネットフリックスについて知りたい人、起業ネタが好きな人に特におすすめです(海外ドラマで言うと、シリコンバレーとか好きな人)。また、ネトフリの歴史を知らないと面白さが倍増します。

英語は簡易に感じましたが、ところどころ著者がハイソなボキャブラリーを使ってるところもあるので、そこは辞書が必要です(私も必要でした)。内容がめっちゃ面白いので、日本語翻訳版が出てから読んでもいいと思います(多分出るはず)。もしかしたら、将来ネトフリでドラマ化されるかもしれませんね(笑) まあ、現ネトフリCEOのリードが本書の存在を歓迎しているのかどうかによりそうですけど。

That Will Never Work感想

創業者のマークは、元々大小様々な会社を渡り歩いて営業関連の仕事をしてきたアイデアマン。当時仕事が一息ついた(リードによって買収された)こともあって、ネットを使って何か顧客向けビジネスを展開できないかと思案していた最中。アイデアをを思いつくと後にネトフリを共同で創業する投資家でメンターのリードに成功するかどうかチェックしてもらうのが日課だった。と言っても、そのアイデアの大半は、ドッグフードを顧客の愛犬に合わせて特注するとかいうバカげたビジネスばかり。そんな中、子供が見ていたディズニー「アラジン」のVHSからヒントを得て、ネットでVHSをレンタルするアイデアを思いつく。もちろん、VHSテープなんか送ったら、郵便代がバカげたことになってビジネス化は不可能。しかし、その時新しいフォーマットが市場に出現しつつあるのを彼は見逃さなかった。

それがDVD。時は1997年。それまでは、日本でしか流通してなかったDVDがアメリカにも入ってきた時期。

Prior to 1997, DVDs were only available in Japan

Marc Randolph / That Will Never Work: The Birth of Netflix and the Amazing Life of an Idea

ここにマークの旦那は目をつけたわけ。下のネトフリのページが簡潔にそのビジネスを説明しています。

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www.netflix.com

ここからは、当時のネトフリサイトのトップページを都度参照していきます。

つまり、実店舗をもたず、DVDをメールで顧客に送ってレンタル商売をしようとする発想。なんと、初期のネトフリはインターネットのツタヤだったんです(笑)

internetarchiveで遡れる1999年当時(創業1年4ヶ月時点)のトップページを見てみましょう。

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www.netflix.com

注目は、最上段に鎮座するDVD2600枚の文字! 少な!(笑)って思うじゃん? でも、DVD自体が市場に出てない時期で、ネトフリは販売されるDVDは全部買ってたんだそうです。

そして、左上に東芝の文字。実は、ネトフリと東芝は面白い因縁があって、マークさんは本書で東芝のアメリカ側担当者スティーブにめっちゃ感謝してるんです。彼なしでは今日のネットフリックスはなかったとまで。

Whatever his reasoning, I’m eternally thankful to Steve Nickerson for taking the plunge. In my estimation, he’s one of the single most important players in the Netflix story. Without his help, there is absolutely no way the company would have succeeded

Marc Randolph / That Will Never Work: The Birth of Netflix and the Amazing Life of an Idea

また、右上にアマゾンの文字。実は、ネットフリックスは当初DVDを販売をもしていて、そっちの利益の方が多かったんです。しかし、アマゾンが本以外の分野に進出するのが火を見るより明らかの状況・・・。本書中のアマゾンCEOジェフ・ベゾスとのミーティングの交渉はページを捲る(タップする?)手が緊張すること間違いなしです。歴史にifはありませんが、アマゾンがネトフリを買収していた未来もあったのですから。

最後に、4ドルの価格。輸送料込みでこの値段でやっていたんですね。だから、このビジネス全然儲からなかったんです(笑)

そこで、彼は全く別の発想を思いつくんですね。それは今現在のネットフリックスにも、そしてネットの数数多のサービスにも引き継がれている逆転の発想。

それが、サブスクリプションだったんです。つまり、利用者との一ヶ月単位の契約。

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www.netflix.com

20ドルで一ヶ月DVD借り放題。これがユーザーに大歓迎され、ユーザー拡大に大きく貢献したんですね。一ヶ月の無料のお試し期間+翌月から自動引き落としという今では当たり前の考え方も、当時は斬新というか、ユーザーを騙していると捉える向きもあったくらい。

ここらあたりから、DVDレンタルという従来の実店舗でのレンタルのネット版という概念からネトフリは離れていくのですが・・・。

その後、ドットコムバブルの崩壊などもあって、大量のレイオフを経験したり、当時アメリカで実店舗レンタル最大手だったBlockbusterへ救いの手を求めたり、順風満帆とは全く言えなかったネトフリの姿が、本書で赤裸々に語られます。

ディズニーとかアマゾンの単語が本書には出てきますが、2019年現在、彼らが逆にネットフリックスの背中を追おうとしてるのですから、歴史のいたずら以上のものを感じます。

ところで、自分が本書を読んでいた時に記憶がまざまざと蘇ってきた、とある事件が一つあって、十数年前にどっかの外国の企業がユーザーにポーン(エロ)DVDを送ってしまったというのがあったんですが、あれやらかしたのって当時のDVDレンタルしてたネットフリックスだったんですね(笑) 当時、モニカ・ルインスキーとクリントンの不倫疑惑での、議会でのクリントン質疑応答のDVDを実質無償でユーザーに配るというプロモーション。

最後に、私が最初に抱いていた疑問「どうして20年ちょっとでこんなに大きくなれたんだ?」に対する回答は、本書で完璧に得ることができました。この本は、ネットフリックスの成長を描くと共に、裏では創業者のマークの没落の話でもあるんです。彼は、最終的にネットフリックスから追い出される運命なんですね。創業者として、自分の会社だとしてしがみつかなかった。普通は自分が創業したら、会社=自分のものとして、意地でもしがみつきそうなもんですけどね。まあ、悔しい思いを紙面に出していないだけかも知れませんが。会社が成長するなら、あとから来た自分より遥かに優秀な人に任せたほうが良いという考え。これは普通ではできません。でもネットフリックスは実施した。だから、20年でここまでの成長を遂げれたし、それと同時に、創業時居た従業員で現在残っているのがプログラマー一人という現状でもあるんです。ただ、この企業風土は日本では合わないかもと思った次第です。それと同時に、ネットフリックスにまつわる各種人事関連の報道に納得できてしまうところもありました。

ネタバレは極力避けてみましたが、ちょっとしてしまっていたらごめんなさい。でも、これ以上の内容が本書にはてんこ盛りですので、洋書の初チャレンジには、英語も簡易だしおすすめですね。読む際には、本書タイトル「That Will Never Work」(ネトフリのアイデアを出した際、最初に妻に言われる)に対する答えが何なのか、考えながら読んでいくと良いと思います。

それでは〜