アップルTV+『神話クエスト:レイヴンズ・バンケット』の感想
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『神話クエスト』アップルTV+に降臨
『神話クエスト(Mythic Quest)』は、アップルTV+から飛び出てきた上質のコメディ。意外や意外と言ったら失礼だけど、なぜアップルTV+?と疑問を持たせるほど脚本は洗練されてるし、キャストも各キャラのイメージにバッチリ合ってると言う具合。そして何より、これが実に面白かったんだ。もうね、声を上げて笑ったのは久しぶりって感じ。本当になんでアップルTV+なんだろう? ネトフリならもっと成功が約束されたはずのに。
「アップルTV+」って・・・?
一視聴者としてはアップルTV+って存在自体よく分からないんですよ。アップルTVってサービスが既にあるのに、アップルTV+だからね。もう違いがよく分かりません(笑) 多分、中の人はクスリやりながら名称を決めたんだと思う。Disney+ (ディズニープラス) にあやかろうとか(笑) いずれにせよ、日本で視聴する人はほぼ皆無だと思うので、このブログでだけでも宣伝をしておきます
アップルTV+の一週間無料のお試しをする時は、『神話クエスト』をまず見ろ
って(笑) 『ザ・モーニングショー』なんかよりこっちのほうがキラーコンテンツになり得ると思います。まあ、『フレンズ』好きな人はレイチェル役だった「ジェニファー・アニストン」が出てるから『モーニングショー』から入るんだろうけど。
見始めはMacの故障
実は、自分はこのドラマを全く期待せずに見始めたんです。
事の経緯はこんな感じ。1月にアップルTV+のお試し期間を使って『ザ・モーニングショー』は見終わったんだけど、『フォー・オール・マンカインド』が途中になっちゃってたんです。だって、無料がたった一週間しかないんだよ(笑) 普通は一ヶ月やん(アップルはどんだけケチなんだw)
そんな折、Macが起動しなくなってしまい、週末OSの再インストール作業ついでに何か出来ないかなーとラップトップでアップルTV+に再加入。まあ月600円ならいいだろうと『フォー・オール・マンカインド』の続きを見ようとしたわけです。そうしたら、ちょうどその時『神話クエスト』が出たばっかしだったんですね。それで何だこりゃ?と期待せずに見始めたら・・・
これが面白いのなんの。もうさ、OS再インストールは正直どうでも良くなってしまったくらい(笑) それぐらいに面白い。
『神話クエスト』の感想
以下ドラマの簡単なネタバレがあります。
番組冒頭、マルチプレイヤーのオンライン3Dゲーム「Mythic Quest」の画面が出てきて、そして開発者が出てきてなにか話し始めたので、自分はこの番組っててっきりオンラインゲームのドキュメンタリーかなんかだと思ったんですよね。だって、「Mythic Quest」って名前からして実際にありそうだし。何より、本当のゲーム画面を使っているから。 そうしたら、そのゲームのアイテム等の課金担当としてブラッドなる人物が出てきたんだけど、顔を見たらびっくり。「あ、『コミ・カレ!!』のアベッド」だって。その瞬間、自分はこれがゲーム制作会社を舞台にしたドラマだと気づいたんです。
ちなみに、彼は『コミ・カレ!!』ではちょっとテレビオタク入ったアジア系の生真面目な学生でしたが、こちらでは金儲けだけに徹する冷徹な頭の回転早い系ビジネスマンを演じます。どうやってユーザーから金をむしり取ろうかといつも考えているんだけど、ある時、どうせ高すぎて売れないと思いつつも1個2500万円の強アイテムをゲーム内で売りに出すんです。こういうゲームではおなじみですよね。誰でも無料でゲームができるけど、強キャラになるにはお金でアイテムを買う必要があるって。でも2500万円はちょっと高すぎのはず。でも、意外にもこれが売れてしまうんです。彼はそんな馬鹿げた金出せるのはサウジの石油王だと思って逆に落胆してしまう。というのも、彼が値札をどうつけようとも、サウジの石油王は結局買ってくれるから。つまり、彼のマネタイズ、利益を最大化させる能力はまるっきり意味のないものってわけ。だって、どんな値段をつけようとも買ってくれる人が居るのなら、それは自分でなくても誰でもできる仕事という理屈。しかし、後で2500万円アイテムを買ったのがホームレスと知って彼は覚醒するんです。「自分の使命はいかに貧乏人から金を巻き上げるか、生活費を切り詰めてようやく貯めた最後のペニーをいかに吐き出させるかだ」って(笑) それをマシンガントークで言うのが現在の社会に対する皮肉で心地よいし、日本でもソーシャルゲームのガチャが社会的問題になってたりするので、これが痛烈に響くんですよ。
そうそう、マシンガントークといえば、このドラマは登場人物がほぼ全員早口な感じです。ただそんな中で、一人だけゆっくり、そして上流階級の知的な英語をしゃべる人物が出てきます。それがCWなるキャラ。海外ドラマ通の人なら、『ホームランド』のダール役として知ってるかもしれない。
彼のこのゲーム会社での仕事は、ゲームのストーリーを紡ぎ出すこと(後はお詫びの文章作成w)。昔なんかの文学賞を取っていて、いつもそれにすがっている。でも、ゲーム自体は実際やったこと無いんだよね。そんな彼はある時、ユーザーは自分の書いたストーリーなんて全くの無関心と知って落胆するんだ。敵を倒すことに夢中になってるだけで、自分の紡ぎ上げたストーリーには目もくれてないと・・・。他にも、AIに仕事を取られると知って絶望したりもする。こう書くと、どこかで聞いたことのあるお約束の笑いなんだけど、これが見事にゲーム会社の枠組みにマッチしてるんですよね。脚本も非常によく練られているの。だから、初めて聞いたような面白さがあるんです。
ちなみに、このCWのおじいちゃんが途中で平凡さに目覚めるシーンがあるんだけど、そこでのセリフ
を聞いた瞬間、あることに気づいてしまいました。
「あ、この人映画『アマデウス』のサリエリの役者じゃん」って(笑) だって、サリエリも映画最後でmediocrity(平凡さ)をembrace(受け入れる)してましたからね。なるほどなあ、こんな細かいセリフにもネタが仕込んであるのですね。
他にも言いたいことがたくさんあるんですけど、このままだと全部喋ってしまいそうなので、最後に一つ、伏線について。このドラマは伏線回収がすごく上手です。才能豊かな脚本家(CWではないはず(笑))が揃ってるんだと思います。エピソード5が他のエピソードとは異色の、1990年代のPCゲーム業界のとあるゲームにまつわる物悲しいラブストーリーを描いてるんですけど、これが回収されると想像できた人は居ないはず。それぐらい最後びっくりです。
最後に
ということで、長々と書き連ねてきましたが、ゲーム業界知らなくても面白いし、ものすごくありえる気がするし、ストリーマーの14歳のガキンチョに右往左往するゲーム会社ってのも今の世相を反映してるし、本当におすすめ。
一つ言えるのは一週間無料を使ってでも『神話クエスト』だけは見るべしってこと。『神話クエスト』だけに使うのがもったいないなら、アップルTV+のオリジナル作品群が揃ってきたらでもいいですけど。この作品をシーズン1だけで終わらすのは社会的損失過ぎますよ! それでは〜
落ちゲー『ぷよぷよ』との繋がり↓
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