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エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)は、日本では作家・江戸川乱歩の名前の元ネタとして有名だけど、海の向こうでは、小説家・詩人・批評家として普通に有名です。この人、推理小説というジャンルを創設したんだけど、ポーによって世界で初めて書かれた推理小説が既に「天才探偵+間抜けな助手」という構成を取っていたのは驚嘆に値します。そして、このお約束(Trope)はその後、シャーロック・ホームズはもちろんのこと、様々な海外ドラマでも引き継がれお馴染みとなっているよね。特許を取っておけば儲かったかもしれない(笑)

さて、そんな彼の作品群だけど、死後150年以上経っていることから、全著作をネットで無料で読むことができます。ただし、その独特の文体もさることながら、衒学的な語彙を結構使うので、辞書片手でも読むのに一苦労すること請け合い。

そんな彼の作品群の中でも割と理解しやすいのが、X-ing a Paragrab(Xだらけの社説)。今回紹介するのは、その中の一節。ポー作品の中で最も低俗といってもよいかもしれない(笑)

物語は、瞬間湯沸かし器氏がある町へ引っ越してきたところから始まる。この人、その名前が示す通りとにかくすぐに怒る。いわゆる沸点が低いというやつ。彼はその町で新聞を始めようとしていたんだけど、既に「ガゼット」なる新聞がジョン・スミスによって発行されていることを知らなかった。しかし、我らが瞬間氏はそんなことにもめげず、定住三日目には自身の新聞「ティーポット」の発行に漕ぎ着けた。その第一号の社説はライバル紙のガゼット新聞を手厳しく攻撃するものだったから大変。殺人事件も起きたことのない平和ボケの住人達は、一体何が起きてるんだとてんやわんや。「ガゼット」新聞側がどう応答するか待つことになるんだけど、それは翌朝現れることとなる。ジョン・スミス主幹による社説は、意外にも、瞬間氏の文体を徹底的に皮肉るものだったんだ。例えば、瞬間氏はoの字が入った単語を好む傾向があるため、「oの字だけに、彼の思考は終わりのない堂々巡りだ」と言った辛辣なもの。瞬間氏側は、これを読んだ”瞬間”大激怒。そっちがそう来るなら、こっちも徹底的にやらさせてもらおうと言わんばかりに、oをふんだんに使った社説を印刷の締切ギリギリに書き上げた。次に実際の社説の英文を引用してみよう:

So ho, John! how now? Told you so, you know. Don’t crow, another time, before you’re out of the woods! Does your mother know you’re out? Oh, no, no! — so go home at once, now, John, to your odious old woods of Concord! Go home to your woods, old owl, — go! You wont? Oh, poh, poh, John, don’t do so! You’ve got to go, you know! So go at once, and don’t go slow; for nobody owns you here, you know. Oh, John, John, if you don’t go you’re no homo — no! You’re only a fowl, an owl; a cow, a sow; a doll, a poll; a poor, old, good-for-nothing-to-nobody, log, dog, hog, or frog, come out of a Concord bog. Cool, now — cool! Do be cool, you fool! None of your crowing, old cock! Don’t frown so — don’t! Don’t hollo, nor howl, nor growl, nor bow-wow-wow! Good Lord, John, how you do look! Told you so, you know — but stop rolling your goose of an old poll about so, and go and drown your sorrows in a bowl!

Edgar Allan Poe /X-ing a Paragrab

https://www.eapoe.org/works/tales/xingc.htm


なんだこりゃw

英検やIELTSのライティングにこんなのを提出したら何点なんだろうか?(笑)

さて、物語はこの後更に続いて、このOだらけの社説がどうやってXだらけになるのか、市民の反応、その後の瞬間氏の顛末なんかは、上記リンク先の英文か、創元推理文庫のポー作品集などを参考にしてみてください。

ちなみに、紙名ティーポットはtempest in a teapot(から騒ぎ、内輪もめ)から来てるのかな? 日本でも、新聞社同士(朝日と産経とか)がこんな感じで社説を使ってラブレターを交換することが実際あるのが面白い。そういう意味では、ポーの慧眼に脱帽。

秋の夜長に洋書でも読んでみてはいかがでしょう?