今回の記事は英語に全く関係がないんですけど、映画や海外ドラマに関係ある(?)ので、よかったら読んでみて下さい。なお、スマホだといまいち画像の微妙な違いが分からないかもしれませんので、PCでご覧になられることをおすすめします。

はじまりは『刑事コロンボ』

この夏、購入したまま全く見てもいないDVD(何ていうんだろう? 積ん観?)を消化しようと、手元にあった『刑事コロンボ』に手を出しました。シーズン1から順に観ていったんですけど終わる気がしないので、途中からIMDbのベスト10を見ることに変更したんですけどね(笑)

目が、目がぁ〜

さて、その視聴中に奇妙な現象が私の目に起こります。なんか目が霞むんです。目薬を点してもぼやけたまま。なんかおかしい・・・。まあいいやとDVDを先に進めると、なんと正常に戻ったのではないですか。私の頭の中は???で埋め尽くされます。 そこで気になったので、巻き戻してもう一度観てみると、状況が分かってきました。

私の目はおかしくなかったんです

画面の方がボヤケてたんです。といっても、モニターにゴミが付着してたのではありません。DVDの内容、元々のシーン自体がボヤケていたんです。

紗が掛かる

その場面は、ちょうど女優さんのドアップになっていたので、これが噂に聞いた「紗が掛かる」ってやつかと納得したんですね。だって、女優の顔アップ時だけ発生するようだったので。直後のカメラが切り替わったコロンボと一緒に写ってるシーンでは至って普通なんです。どこにも紗は掛からない。ちゃんと焦点が合っている。

青い紗
Image by PublicDomainPictures from Pixabay

ちなみに、下の「紗」を解説したページによれば、カメラのレンズに物理的に薄い布(紗)を貼って効果を作るようなので、複数の人物が登場する場合に特定の人だけ紗を掛けるってのはできないようですね。フォトショップなどの編集ソフトがない時代ならではの奇抜なアイデアですね。

紗(しゃ)、紗をかける(しゃをかける)⤴️

「紗」の有無を定量的に判定

さて、そんなこんなで時は過ぎるんですけど、自分の中では紗が妙に気になってどうしようもありません。問題は、紗が掛かってるというのは私個人の意見なんですよね。他のシーンと比べてボヤケてるっぽいってだけなんです。それは主観でしかありません。私の目がおかしい可能性だってありえます。なんとか万人が納得する方法はないものかと考えていたら、つい先日興味深いページを見つけます:

OpenCVというコンピュータビジョンのライブラリを使って、写真の手ブレ等のblur(ボヤケ)を判定しようというもの。これはまさに私が求めてるものそのものではないですか!

ミイ・テスト

さて、上記リンク先にはPython言語で書かれたプログラムが載っていますので、手元に実行環境を作って実験してみましょう。 必要なのは、Pythonと、OpenCVのライブラリと、この人が作った画像ライブラリimutils。ここでは詳しいインストール方法は述べませんので、各自ググってみて下さい。

(ちなみに、この人のライブラリはボヤケを判定するオリジナル画像に、ボヤケ指数を左上に埋め込んだ画像を生成するという意味不明な目的で使われているだけでした。)

このプログラムによって判定されるボヤケ指数は、低ければ低いほどボヤケてるという判定になります。(だから、本当はクッキリ指数とでも呼んだほうが正確なんだけど、今回はプログラム作成者と同じ表現に統一してあります)

ところで、本物の『刑事コロンボ』のスクリーンショットでテストする前に、私がスマホで撮った写真を加工して、実際このボヤケ指数が信用できるものなのかテストしたいと思います。私が使っている画像編集ソフトには、画像をボヤかす機能と、逆にボヤケを取る機能がありますので、それを適用した写真(オリジナル含め)3枚に対し、上記プログラムを実行してみます。

以下がテスト画像

オリジナル・ミイのボカしたものとボヤけを取ったもの
オリジナル・ミイのボカしたものとボヤけを取ったもの

左がボカシ(ガウス)、真ん中がオリジナル、右が自動ボカシ除去で、3枚を同一ファイルにしてあります。スマホからだと分からないかもしれませんが、左はミイ全体がボヤケてますし、右端は背景の格子がオリジナル(中央)よりクッキリして見えます。

結果の前に注意点ですが、このブログに載せるために、上記画像自体すでにweb用に相当圧縮・解像度縮小がされています。元画像はサイズが3024 × 4032ですし、何より元のサイズが数MBなのに対し、このweb版が70KBしかないことからも分かります。しかし実験では、数MBのオリジナルファイルをちゃんと使っています。このことは、本番のコロンボのスクリーンショットでも同様になります。

それでは、結果は・・・Ta-da-

ミイ・テスト結果
ミイ・テスト結果

なんと、左のボカシた画像は、ボヤケ指数がたったの1でした、ゴミめ(笑) そして、自動ボカシ除去の右は優に100以上のスコア。これならミイ・テストを突破したと言ってもいいですよね。

『刑事コロンボ』の紗のシーン(1)

それでは、ようやくコロンボに登場した紗っぽいものが、果たして本物か私の目の錯覚か、判定する時が来ました。

まずは、一番最初のエピソード『殺人処方箋(Prescription Murder)』から次のシーン。女性が男性に電話を掛けるんですけど、4つのパターンがあります。男性(引き、アップ)と女性(引き、アップ)。私の目には女性のアップがボヤケているように見えるのですが・・・

『刑事コロンボ』殺人処方箋の登場人物の紗
Columbo [Credit: NBC]

早速OpenCVプログラムでボヤケ指数を判定すると・・・

『刑事コロンボ』殺人処方箋の登場人物の紗の判定結果
Columbo [Credit: NBC]

In Your Face!  よっ紗ー! ほらね! 女性のアップ時はたった3ポイントですよ! ガウスぼかしをキツめにかけている感じです(笑) 私の目は間違ってなかったんだ。

でも、疑い深い人はこう思うかもしれません、「撮影時、女性アップを撮っていたカメラが故障していたのに違いない・・・」と。

刑事コロンボの紗のシーン(2)

ということで、次は別のエピソード「ホリスター将軍のコレクション(Dead Weight)」から。こちらは、男性と女性の食事シーン。レストラン俯瞰、男性(引き、アップ)、女性(引き、アップ)の計5つのカメラで撮ってます。もちろん、女性のアップ時がボヤケているんです。

『刑事コロンボ』ホリスター将軍のコレクションの登場人物の紗
Columbo [Credit: NBC]

それぞれのボヤケ指数は・・・

『刑事コロンボ』ホリスター将軍のコレクションの登場人物の紗の判定結果
Columbo [Credit: NBC]

よっしゃー! また一桁5ポイント。

ということで、私の目は別におかしくないし、刑事コロンボに紗が入ってるのも確認できました!

まとめ

映画・テレビドラマに出てくるボヤかす映像効果の「紗」は判定可能なんですね。そして、実際紗が掛かっているんです(笑)

映画を見てる際にかすみ目と思っても、それはあなたの目のせいではなく、紗のせいなのかもしれませんよ? その場面が女優の顔のアップじゃないか確認しましょう(笑)

ちなみに、技術的なことを述べると、そもそもDVDになってる時点で、エンコードによる圧縮処理がなされているわけですよね。だから、正確を期するには、オリジナルのフィルムなんかを入手する必要があるのかもしれませんね。ただ、我々が見るのは圧縮版がほとんど。そして、そこで既にボヤケているんだから、オリジナルは無視していいのかな。

ということで、皆さんも古い映画や海外ドラマ視聴中に紗を感じたら(?)、スクショ撮って、上のプログラムを試してみて下さい。

私は夏からの胸のつかえが取れて、今日からぐっすり眠れそうです(笑)

スマホで読む人のことは全く考えていない記事なので、上で貼った画像からボケとか全く感じられないかもしれません。その場合はごめんなさいね。大きいスクリーンのPCでみてもらえると、違いが分かると思います。それでは〜

(追記) 画像ファイルが大きすぎるので、webP形式に変更(95%の圧縮)し、サイズは1/3程度になりました。画像が表示されない方は、違うブラウザでお試し下さい。