『テッド・バンディ ~連続殺人犯を愛した女~』番組宣伝ポスター
Ted Bundy: Falling for a Killer [Credit: Amazon Prime Video]

アマゾンプライムビデオ『テッド・バンディ』

『テッド・バンディ ~連続殺人犯を愛した女~(Ted Bundy: Falling for a Killer)』はアマゾンプライムビデオで公開されたばかりのミニドキュメンタリー。50分*5エピソードと暇な週末の午後を潰すにはもってこいの作品。

自分は全く期待せずに見始めたんだけど、その事件の異様さにすぐ虜になってしまった。以下、ネタバレ少しありの感想です。

『テッド・バンディ ~連続殺人犯を愛した女~』あらすじ

物語は、ユタ州の厳粛なモルモン教両親の元で育ったシングルマザーのエリザベスが娘モーリーとシアトルに移り住むところから始まる。彼女は新天地のワシントン大学で事務員として働き始め、ある夜、居酒屋でイケメンの気さくな青年テッドと出会う。こいつが本当に社交的でいいやつだったからすぐ意気投合。だって、朝起きたら自分と娘のために朝食を作ってくれているんだよ。そんなエリザベスと弁護士志望の学生テッドは必然的に恋人になるんだ。テッドは10歳のモーリーも可愛がって、周囲のみんなが素敵なカップルとうやましがるくらいだった。

ところで、しばらくすると、エリザベスの近所ではうら若き女性が忽然と姿を消す事件が発生しだす。被害者の女性のタイプが白人、20前後、長い髪を真ん中で分けてるという共通項があったんだけど、捜査当局は事件か事故か、それとも単なる家出かわからないままでいる。エリザベスはというと、自分の家の近くで発生した複数の失踪事件、そして被害者の特徴が自分の容姿にそっくりなことに恐怖する。

そんな折、郊外で行われていたフェスティバル会場で一日に二人の女性が同時に姿を消したから大変だ。しかし、今回は以前の失踪事件と違う点があったんだ。その二人が姿を忽然と消す直前、テッドと名乗る男が祭り会場に来ていた女性達に声をかけていた目撃証言が出てきたんだ。このテッドの似顔絵と情報が地元の新聞に載ると、エリザベスは恐怖のどん底に突き落とされる。だって、自分が付き合ってる「テッド」にそっくりだったから。そんなシアトルでの女性失踪事件もある時期を堺にして発生しなくなり、地元民に安堵をもたらす。もちろん、それと時を同じにして、テッドがユタ州に移り住んだだけんだけどね。そして皆さんのご想像通り、ユタ州でも謎の女性失踪事件が起こり始めるのだが・・・

『テッド・バンディ ~連続殺人犯を愛した女~』で、テッド・バンディの目撃似顔絵
Ted Bundy: Falling for a Killer [Credit: Amazon Prime Video]

『テッド・バンディ』の感想

私はこの事件の事を全く知らなかったので、本ドキュメンタリーは非常に楽しめました。なんといえばいいのか、人間はどうやったらこんなふうになれるのかと考えさせられる作品です。表テッドに接した人々は(弁護士含め)一様に彼のナイスガイぶりを褒めそやし、彼がそんな残酷な所業をできるはずがないと言わしめるほど。ただ、裏テッドの残忍さは、女性の顔を叩き割る行動から薄々感じ取れます。本作品内ではグロいシーンは極力カットされてるけど、ベッドに付いた血糊や、生き延びた被害者の証言からその一端は垣間見えます。そして、公称被害者数20人からも病的なものが感じられます。ちなみに、本人は30人と言ってるので、表に現れてこない被害者がいる感じです。

そんな多くの女性が殺されてるのに捜査当局は何してるんだという疑問が沸き起こってきますが、これはこういったドキュメンタリーではお馴染みの「いつもの警察」なんですよね。しかし、このテッド・バンディの事件の場合は、せっかくテッドを逮捕してるのに牢屋から逃げられて、潜伏先のフロリダで犠牲者を出しているので開いた口が塞がりません。

そんなテッドも再度捕まって、メディアを巻き込んだ裁判になるのですが、どういった結末かはご自身の目で確認くださいませ。

邦題の「連続殺人犯を愛した女」ですが、このブログ的には、句動詞fall forの2つの意味が訳されていないのが残念な感じでした。愛したと同時に騙されてもいるんです。こういう事に気づけると、英語をやってた良かったなあと感じますね(笑)

なお、このドキュメンタリーにある唯一の欠点を指摘しないのは公平じゃないので、最後にそれを述べて終わりにします。このドキュメンタリーには裏テーマが実はあるんです。それがフェミニズム。この事件が発生した70年代に女性解放運動が盛んだったってことで、そのネタを混ぜるのは悪くはないんですけど、事件と直接は関係ないんですよね。だから、単なるノイズにしかなってないんです。視聴者の気を散らすだけ。せっかくのテッド・バンディという極上の素材があるんだからその素材を活かせばいいのに、製作者側が変なスパイスを効かせてしまっているんです。そこだけが本当に残念。例えると、地下鉄サリン事件のドキュメンタリーを撮っているのに、それと同時に地球温暖化もテーマに入れてる感じ。だから、事件関係者のインタビュー内容の地球温暖化の部分だけを切り取って映像化していると想像してみて下さい。地球温暖化は重要なのはわかるけど、地下鉄サリン事件そのものに集中させてって普通思うはずなんです。それと同じことがこのドキュメンタリーでも起こってしまっている。IMDbのレビューでも自分と同じ意見の人がいるので、やはりそう思う人は少なからずいる感じですね。

それを含んでも、このドキュメンタリーはテッド・バンディ事件のことを知らない人は楽しめるのでおすすめです。

アマゾン・プライム・ビデオはこの作品以外にも『ザ・ボーイズ』や『マーベラス・ミセス・メイゼル』などオリジナル作品があって気が抜けないですね。それでは〜


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