「Plastic」に「プラスチック」以外の意味が! 語源から遡る
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I’m just playing games
I know that’s plastic love
プラスチック容器のごみ問題
日本語に既になっている「プラスチック(プラスティックとも)」は、一般的には下↓のような合成樹脂でできた容器などの製品を表しますよね。

最近では、多くの自治体でゴミ収集時、プラスチック容器を分別するようになってきているようです。それだけ、プラスチック製品は我々の身の回りに溢れているのです。
実は、英単語「plastic」にも全く同じ意味があって、以下のredditの記事では、カナダが使い捨て(single-use)のプラスチック製品を禁止するという話が出ています:
Canada banning single-use plastics to combat pollution, climate change
どこの国でも同じ問題に頭を抱えているのですね。
「Plastic」の持つ「プラスチック」以外の意味
このブログは環境ブログではなく英語ブログなので、これ以上この話には突っ込みませんが、実は面白いことに、英単語の「plastic」には日本語「プラスチック」以外の様々な意味があるんですよ。それを以下、plasticの語源と共に紹介していきましょう。
始まりは「可塑性」の意味での形容詞
プラスチックという単語をよく見ると、ロマンチックやエロチックやエキゾチックのような接尾辞「-チック」が付くことが分かります。そうなんです、プラスチックは実は元々形容詞だったんですね。言われてみれば確かにそう(笑) 意味は成形可能、可塑性があること:
plastic (adj.)
1630年代、ラテン語plasticus「物質を成形したり型で成形可能な」、ギリシャ語plastikos「型成形に適した、様々な形に成形可能な」から。
1630s, “capable of shaping or molding a mass of matter,” from Latin plasticus, from Greek plastikos “fit for molding, capable of being molded into various forms
1630年代ですから、日本だと江戸時代が始まったあたり。もちろん、その時代にはプラスチック製品はありませんのであしからず(笑)
「形成外科、整形手術」の意味での「plastic surgery」
成形可能なプラスチックは、そこから外科手術に守備範囲を広めていったようです:
plastic (adj.)
「構造の不備の治療」と言う意味での外科的意味は1839年より記録がある(整形手術)
The surgical sense of “remedying a deficiency of structure” is recorded by 1839 (in plastic surgery)
「plastic surgery」は英語の試験に整形手術の是非でよく出てくる語彙ですけど、なんとプラスチック製品より古いんですね(笑) かなり意外です。

プラスチックは「歯科用印象材(歯型)」を経由
さて、この可塑性のプラスチックは医学の歯科にまで到達し、ついに名詞になったようですね:
plastic (n.)
1905年、「成形可能な固形物質」の意、元々は歯科で歯型の印象材、形容詞「プラスチック」から。
1905, “solid substance that can be molded,” originally of dental molds, from plastic (adj.).
なるほど、歯医者で詰め物を作るときに噛まさられるピンクの冷たい物体が固まって歯型を取るのですから、plasticの持つ成形可能というのにぴったしですね(笑)

ついに「プラスチック」製品の意味に!
1907年、科学者レオ・ベークランドは合成樹脂「ベークライト」の合成に成功する。その彼は、いつからか自身が作り出した合成樹脂を「プラスチック」と呼ぶようになったみたい。「成形可能な固形物質」という特性にぴったしだったのかな。
plastic (n.)
近年の主要な意味「石油派生物を原料とする合成製品」は1909年から記録がある、レオ・ベークランドによってこの意味で使われた。
The main current meaning, “synthetic product made from oil derivatives,” is recorded by 1909, used in this sense by Leo Baekeland
「plastic」の勢いは止まらない、ネガティブな「偽の、上辺だけ」の意味に
ここで話が終わらないのが、このプラスチックの意味の変遷の面白いところ。形容詞に戻ると、なんと、プラスチックにネガティブな意味が付くんだ。
plastic (adj.)
「プラスチック製」の意味は1909年から;これは反体制文化スラングに取り入れられ、拡張された意味「偽の、表面上の」の意味を持つ(1963年)
Meaning “made of plastic” is from 1909; this was picked up in counterculture slang and given an extended meaning “false, superficial” (1963).
反体制運動に参加した若者は、当時大量に出回りだしたプラスチック製品に「偽り、実態の無さ」を見たのかもしれない。そこから、plasticは「偽の、表面上の」の意味を持つことになる。
この意味での日本語の使用例はあまりないけど、竹内まりやの楽曲『プラスティック・ラヴ』がまさにこの意味での使用例と言える。歌詞を読んでも分かるように、「偽りの愛」「上辺だけの愛」と言っているんですね:
なお、この曲はなぜか外国人に大人気なんだけど、それはまた別の話。
「クレジットカード」の意味での「plastic」
更には、plasticでクレジットカードをも意味するようになる。もちろん、プラスチックでできているからなんだけど:
plastic
(話し言葉、換喩)クレジットやデビットカード、商品やサービスを買うときに現金の代わりに出す。
(colloquial, metonymically) Credit or debit cards used in place of cash to buy goods and services.

どのくらいの年代からこの意味で使われるようになったかは不明だけど、一応、アメリカン・エキスプレス・カードが1959年に最初のプラスチック製カードを出したみたいね:
The history of credit cards
1958年:アメリカン・エキスプレスは厚紙製の最初のクレジットカードを立ち上げ、1959年最初のプラスチック製クレジットカードがすぐに続く。
1958: American Express launched its first credit card made of cardboard, followed shortly by the first plastic credit card in 1959.
最後に
今回は英語「plastic」の持つ日本語「プラスチック」以外の意味の変遷を語源から順に紹介してみました。
考えたら当たり前だけど、原材料としてのプラスチック製の意味はずっと後に出てきたんですね。そして、そこから偽りを意味するスラング的使用。この意味では、竹内まりやの『プラスティック・ラヴ』は興味深いですね。plastic beatにplastic loveですから、我々は偽りのビートに合わせて偽りの愛を踊っているのです。それでは〜
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