I'm just saying.がドラマの中でよく使われるのは、少し強く言い過ぎてしまった時などにトーンダウンする際。相手が明らかに怒り出したときなんかに、言ってみただけで他意はないって装う感じかな。前言撤回までは行かないけど、まあ、かなり引いてる感じもする。さて、この表現を例辞郎で引くと面白い訳がありました:

I'm just saying.

と言ってみるテスト。

例辞郎

と言ってみるテスト。」です! ネットで十数年前(?)に流行った末尾につける例のやつです。残念ながら現在これ使ってる人は皆無になりましたが、この訳は大変素晴らしく、個人的にはその才能にちょっとジェラシーです。まさしくI'm just saying.は「と言ってみるテスト」って感じで、前言を軽くする効果があります。ということで、早速ドラマでの実際使用される場面を見て、本当に「と言ってみるテスト」なのか確かめてみます。

ブレイキング・バッドから

ブレイキング・バッドの一番最初のエピからは、まだ知り合って間もないウォルターとジェシーの会話。ジェシーは、ウォルターがなぜドラッグ作りに興味が出たのか尋ねます。その中で、もしウォルターが狂ってたり鬱だったらと言ってから、小声でI'm just saying.とあくまでも例と言うニュアンスを強調します。言いすぎてしまったと、言ってから気付いたんですね。ここはジェシーの優しさが出てます。それでもパートナーのメンタルヘルスが気になるのは裏稼業的には仕方がないところ。「と言ってみるテスト」と訳すのはちょっと違いますね。軽すぎます。

ジェシー: Some straight like you, giant stick up his ass all a sudden at age, what, 60, he's just gonna break bad?

ウォルター: I'm 50.

ジェシー: It's weird, is all. Okay, it doesn't compute. Listen, if you've gone crazy or something, I mean, if y... If you've gone crazy, or depressed. I'm... I'm just saying. T... That's something I need to know about. Okay, I mean, that affects me.

Breaking Bad/Season 1/Episode 1

プリズン・ブレイクから

サラを襲った暗殺者の居所の手がかりをマホーンに渡す分析担当のファン。「彼だって殺人に手を染めようと生まれてきたのではない」とその暗殺者をちょっと擁護すると、マホーンは「それ以上は言うな」と警告します。これには、I'm just saying.と言うより他ないファンです。マホーンにとっては家族の仇だからかなりシリアスで、冗談では無いことは画像からも一目瞭然ですね。さすがに、「と言ってみるテスト」はここでも合いませんね。

ファン: I mean, whoever this guy is, you think he wanted to grow up to be a murderer? Probably not.

マホーン: Be very careful choosing the next words that come out of your mouth.

ファン: I... I'm just saying.

Prison Break/Season 4/Episode 5

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Prison Break [Credit: Fox]

ビッグバン★セオリーから

コミコンのチケットを購入できなかったいつものメンバーは、転売屋から購入することを決めます。ちょっと遅れるとその転売屋から電話があると、ラジは犯罪者のようなセリフが会話にあったか聞きます。その古い例えにレナードが今は1940年じゃないんだよと暗に仄めかすと、ラジはI'm just saying.と少し譲歩しつつも、この男のことは僕ら知らないとして、もし肝臓を売られたら、もし僕らの皮膚の皮でスーツを作ろうとしたらと、どこかの古い映画に影響を受けたシチュエーションを想像して怯えます。ここでは、そんなにラジは引いてはないですね。

ハワード: he's running late.

ラジ: Does he sound like a criminal?

ハワード: What do you mean?

ラジ: You know, did he say things like, "Youse guys," or "Listen here, see?"

レナード: Yes. He-He's late because he's on his way here from 1940.

ラジ: I'm just saying. We don't know who this guy is. What if he wants to steal our money or our kidneys, or make a suit out of our skins?

The Big Bang Theory/Season 7/Episode 14

最後に

I'm just saying.は、ちょっと言いすぎてしまった前言を引っ込める際の表現でした。どのくらい引くかは場面に依存しますね。残念ながら、「と言ってみるテスト。」訳がピッタシの場面は出てきませんでした。でもよく考えると、「と言ってみるテスト。」はネットスラングだから、ネット上のコメントではないリアルの会話でぴったしハマる場面は無いのかもしれません(笑) この表現で面白いのは進行形なところ。言ってみたなら完了形で「I've just said.」なんかでも良さそうですが、なぜ進行形なんでしょう? 最初からずっと現時点も本気で言ってるんじゃないってことかな。その辺がネイティブでないので分からないところです。