テニスコートのボール
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日本語と英語のイディオムで同じような表現と意味のものがあるとニヤリとしてしまいますよね。文化・民族などの違いはあれど、発想の根底は同じなんだなと、なんか安心してしまいます。そんな同じ表現で同じ意味を持つのが表題の「The Ball Is in One's Court.(ボールは○○のコートにある)」です。日本語だと「ボールは○○が持っている」。これは、○○の行動を待っている意味でビジネスなんかで使われますが、英語も同様です。ここでこの表現の微妙な違いが個人的に面白い。英語では、相手のコート、つまりテニスやバレーボールみたいに真ん中に仕切りがあって、そちら側にボールがある=相手の順番だ、となりますが、日本語だと、キャッチボールみたいにボールを相手が保持している=相手の返球待ちだ、というニュアンスですね。それでは早速、海外ドラマでの使われ方を見ていきたいと思います。

フレンズから

ご近所のダニーにパーティーに誘われるレイチェルとモニカ。モニカは気安くOKしますが、レイチェルはダニーが自分に恋してると勘違いし、一人で恋の駆け引きごっこを開始します。ここではレイチェルもダニーを気に入っています。そして、パーティーの招待は用事があると断ります。以下は、ダニーが去った後の二人の会話。レイチェルは気安くOKするより一旦拒否するほうが、自分が主導権を持てると考えます。そして、モニカがダニー待ちねとThe ball is in one's court.を使って促すと、この恋路には元々ボールなど無い=自分が主導権を全て把握していると言わんばかりです。

レイチェル: He waited until the last minute. So if I said yes, he'd know I had nothing better to do than wait for his invitation. But I said no which puts me back in the driver's seat.

モニカ: So the ball is in his court?

レイチェル: Ball? No, there's no ball.

Friends/Season 5/Episode 7

レイチェル: Ball? No, there's no ball.
『フレンズ』で、モニカと恋の駆け引きのテクについて議論するレイチェル
Friends [Credit: NBC]

フレンズから

上記と同じエピの後半から。用事があると言ったものの、遅れてパーティーに参加するレイチェルとモニカ。あら今日パーティーだったのね、とあくまでも偶然を装うレイチェルです。ここで待っててと何処かに行くダニー。レイチェルはどっちの番かモニカに尋ねます。つまり、このまま待てばいいのか、それとも自分からアクションを起こすべきなのか心配なんですね。モニカは呆れて、ボールなんて無かったんじゃないの?とすっとぼけます。レイチェルは自分が恋の主導権を握ると言ったことはすっかり忘れて、ここで待っててと言われたんだからボールがそこらじゅう飛び回ってるとアタフタ。結局ダニーが友達のトムに女性を紹介したかったと分かって落胆します(笑) このFriendsエピは、The ball is in one's court.イディオムが最も使われた番組と言うことでギネスブックに申請してもいいくらいです。

レイチェル: Right, tonight was your party.

ダニー: You look great! I'm glad you made it.

レイチェル: Well, you know, the gala had to end sometime.

ダニー: Don't go anywhere. I'll be right back.

レイチェル: Whose court is the ball in now?

モニカ: I thought there wasn't a ball.

レイチェル: Come on. He's glad I came. He doesn't want me to go anywhere. Ball's flying all over the place.

ダニー: This is my friend, Tom. This is the girl I told you about.

Friends/Season 5/Episode 7

このダニーパーティー編はYouTubeにまとまっていましたのでどうぞ↓

youtu.be

SUITS/スーツから

Suitsの一番最初のエピソードから。弁護士事務所で働くハーヴィーはクライアントの邪さとわがままに限界が来て、そのクライアントの敵側に寝返ります。そのことを言ってから、次のセリフをクライアントにぶつけます。ボールは俺の掌の中だと。これなんか日本語のイディオムに似たニュアンスですよね。

ハーヴィー: So, I'd say the ball's in your court, but the truth is, your balls are in my fist.

Suits/Season 1/Episode 1

最後に

こういう表現は日本語に既にあるので、覚えることが少なくて楽ちんですね。Friendsの例にあった「誰のコートに今ボールがあるのか?」なんてのも、The ball is in one's court.のoneを尋ねる疑問文にしただけ。ビジネスシーンだけでなく、日常でも使えるイディオムです。