「キングサイズ」って・・・

どの番組だったか忘れちゃったんだけど、前に海外ドラマ見てたら次のようなシーンがあったんです:

I was a dick, king-size dick.

ここのdickは、このブログではすっかりおなじみですよね。男性器の方ではなく・・・嫌な奴・アホ・馬鹿。つまり、このシーンは「俺はキングサイズの嫌なやつ(大馬鹿野郎)だった」と男性が過去の行為を反省してるニュアンスです。たしか、ストーリー上は不倫か何かしてたんだったかな。

さて、ここで個人的に気になったのが「king-size」という形容詞。もちろんここのking-sizeは「大きい」の意味だから、馬鹿のスケールがデカかったと言ってるわけ。dickを男性器と捉えても、モノが大きいというダブルミーニングに取れるのが面白いところ。

でも、ちょっと待ってください。

キングサイズって何ででかいの意味なの?

って思いません? 私だけかな?

キングサイズって、日本語だとよくベッドとかに使われますよね。それは、王様が寝返り打ったら落っこちちゃうようなベッドに寝てるわけないから、納得行くんです。でも、一般的にすべて大きいってことにしちゃっていいんだろうか?と疑問に思ったんです。王様は太ってることが多いから、洋服もキングサイズなのかもしれないけど、なかにはスリムな王様も居ただろうし、という感じ。いつもの私の屁理屈ですね(笑) そこで、king-sizeの語源を調べてみたんです。そうしたら、意外な事実が待ってました・・・

「キングサイズ」の語源

まず最初に、そのものズバリの記事があったので貼っておきますね。詳しく知りたい方は、リンク先を読んでください。ここでは、掻い摘んで引用していきます。

英国アートシーン

最初のking-sizeの使用例は、1800年代前半イギリスの絵画のシーンで見られるんだって。でもこの時は、絵画内に描かれた王様の頭のサイズを比較するため導入されただけで、使用はその特別な絵画のみ。王様(キング)のことを形容するために必然的に使われただけで、この時点では一般的に大きいとかいう意味はまだ持っていませんし、特に大衆に広まったりすることもなかったんですね。そこから大衆に受け入れられるまで、80年ほどの月日が流れることになります。

タバコのコマーシャル

次にking-sizeが歴史の表舞台に現れるのが、大西洋を渡ったアメリカにて。1942年というから第二次世界大戦真っ只中です。なんと、インドのNTC industries Ltd.社が発売したRegentというタバコの惹句に、このking-sizeが使われていたのです。

Regent’s king-size cigarettes box
Regent Cigarettesのタバコの箱

この写真は、実際当時売られていたRegent Cigarettesのタバコの箱。そう、しっかりとした箱入りなんです。なんか高級そう。そして、一番下右には、お目当てのKING SIZEの文字が。こうなると、一体何がキングサイズか気になりますよね。それはなんと、タバコ一本が当時売られていた標準のものより、長かったんだそうです。つまり、キングサイズという形容詞の王様と直接関係のない最初の使用例は「長さ」に対してなのでした。ちなみに、英単語Regentは摂政(王の代理)の意味。だから、重厚な箱入りといい、摂政といい、王室御用達的なニュアンスを醸し出そうとしてる感じですね。これは、インドの会社っていう事実も大きく影響してそうですね。インドの英国からの独立はこの後かな?

Regentの実際の広告

さて、Google Bookに当時のRegent’s “king-size” cigarettesのLife誌面 in 1942. (Original screenshot)⤴️がありますので、キングサイズの詳しい内容を見るため、実際の広告の内容を見てみたいと思います。

Regent’s “king-size” cigarettesの広告
Regent’s “king-size” cigarettesの広告(Life誌面 in 1942)

広告としては娘がお父さんの旧来のタバコにダメ出しして、REGENTを勧める構図です。この絵の女の子は結構好みです。まずデカっく赤で Go modern - Smoke REGENT!です。つまり、Regentはモダンだよと。一番下にも赤字で、The only modern cigarette with ALL the modern features!と先進性をこれでもかと全面に出していくスタイル。それでは、どんな特徴があるのか、一番上に戻って見てみましょう、まず、「まだ、そんな古臭いタバコ吸ってるの、お父さん?」とold-fashionedを使って、新規性をアピール。さらに、細かい文字で、shortieを吸ってるのはshameとしてから、20%長いキングサイズのRegentを買いなよと諭します。あれ?たった20%長いだけ? キングサイズといっても、そこまでではない感じ。そして、味の方もsuperiority(優位性)があるとしてから、3番目の特徴で、紙パッケージでなく箱に入っているから潰れないと言っています。なんとこのタバコ、形状が楕円形みたいですね。娘も、Dad、Dad連発して妙にお父さん想い。娘の反抗期で口も聞いてもらえないお父さんは、ころっと策略に嵌りそう。娘にここまで言われたら、お父さん買うしか無いやん(笑) 費用についても、主要ブランドタバコと比べて割高ではないということです。この絵のハゲチャビンのお父さんなら買っちゃうね。

接尾辞「-size」の発展

このように、最初はタバコの長さの名状だったんですが、最初に紹介した記事によると、このキングサイズの用途はどんどん拡大していき、ドリンクのサイズやハンバーガー、そしてお待ちかねのベッドにまでたどり着きます。

それと同時に、接尾辞-sizeの使用がキングサイズ以外にも広がっていったようですね。対となるクイーンサイズが登場するのは当然として、M&Mチョコではfun-size, special-sizeとよく分からないサイズが使われます。更にそこから、広告マーケティングでこの接尾辞サイズが多用されるようになります。新車はnew-sizeやfull-sizeといった感じで、もう大きさは全然関係なくなってきてますね(笑) そして、最初のキングサイズと真逆のdownsizingまで生まれる始末。downするけどベストなサイズって感じかな。それが、企業の事業縮小の婉曲表現的に使われ始めると、お次はダウンはネガティブだとしてrightsizeなる単語が生まれる始末・・・。

最後に

と、ここまでをking-size dickから始まって気になって調べてみたんだけど、 本当に言葉って面白いよね。下手な推理小説読むより、キングサイズの語源のほうが興味を惹かれます。インドのタバコ会社が王室御用達感出したかったからなんて意外。しかも、接尾辞-sizeまで話が広がっていって・・・。でも、残念なのは、最初の記事を読むために相当の英語力が必要なこと。よく「情報の格差」って言うけど、英語ができないことが「情報の格差」になってしまっている現実がありますよね。特に、インターネット時代になってから、その傾向に拍車がかかっています。これからの時代、情報弱者にならないためには英語が必要なんですかね。重宝するのは間違いなさそうですけどね。文章でも海外ドラマでもいいけど、自分が面白いと感じたものは、進んで吸収していきたいですね。

落ち穂拾い

ちなみに、調べたところ、インドのタバコ会社はもうRegentは作っていないみたいでした。会社自体はまだあるみたいですね。

タバコブランド名として出てきた英単語Regentの発音はリージェント。なんと日本では、ロックンロールの髪型の「リーゼント」がRegentなんですって。でもこれは和製英語っぽい。実際、Wikipediaには以下のようにありますもの。

Pompadour (hairstyle)

In Japan the style is known as the “Regent” hairstyle, and is often caricatured in various forms of entertainment media such as anime, manga, television, and music videos, often into improbable levels of length and volume.

最後に、接尾辞「-size」について。皆さんなら、どんな意味を持つどんな○○サイズを考えつきますか? 日本でキングサイズに対応するなら、emperor sizeしか無いと思うんですけど。皇室御用達の店でemperor size使ってくれないかな(笑) それでは〜