爆弾を止めるため切るのは赤いコード?青いコード?

時限爆弾爆発まで残り10秒。爆弾解体班との通信も雑音が入りよく聞き取れない状況。周囲にいる人質は地面に身を伏し出します。主人公のあなたは、もう一か八かでコードを切るしかありません。その色とは、赤か青か・・・?

いろいろなコードが出てる時限爆弾
Image by Hawksky from Pixabay

時限爆弾の色付きコードを切るお約束

この「時限爆弾の色付きコードを切るお約束」は様々な映画・海外ドラマで出てくるお約束ですよね。筋書きの鉄板中の鉄板なので、一度も見たこと・読んだことない人は、若い頃から刑務所に服役してたか記憶喪失かを疑われるレベルです(笑)

このお約束には様々なバリエーションがありますが、最終的に残り数秒の状況で、主人公が何色のコードを切ればいいのか分からず、BGMの緊張が高まる中、ランダムに切って事なきを得るというのが典型パターンでしょうか。実は主人公属性があるので、どの色を切っても結局問題ないんですけどね(笑)

次のTV Tropesの記事「コードのジレンマ」がこのお約束を説明しています:

Wire Dilemma

フィクションの世界では、どんな爆弾にせよ解体することは正しいコードを正しい順序で切ることに集約される、通常各々のコードは見分けの付く色が付き、助手が手順書を読み上げる「赤いコードを切って、青いコードを切る。それから黄色・・・」。予期されることは一般的に、誤ったコードを切ると即座に爆弾は爆発し、解体している本人と爆発半径内に居る者を殺す。絶対正しい選択をしなくてはいけないことと爆発の時間が刻一刻と迫る緊迫の状況の組み合わせが、劇的緊張感を高めるために使われる。もちろん、手順書通り従うのは容易ではない。通常何かしらの邪魔が入って、緊迫感をさらに高める。

In fiction-land, disarming just about any bomb is a matter of cutting the right wires in the right order — usually each wire will be given a distinctive color, and an assistant will read from a manual: “Clip the red wire, then the blue wire, then the yellow wire…” The implication is generally that if the wrong wire is cut, the bomb will explode instantly, killing the person disarming it and everyone else in the blast radius. Combines Race Against the Clock with the need to make absolutely sure you’re making the right decision for dramatic tension. Of course it’s never as easy as just following the manual — generally some kind of subversion is used to heighten tension.

とあって、古今東西、爆弾解体に色が付いたコードはつきものなんですね。

個人的に昔からの疑問が、なんで異なる色のコードを爆弾製作者は使うんだろうという点。同じ色のコード使えば良くない? なんか、解体してくださいというフラグになっている気もするんですけどね(笑) まあ、爆弾製作者自身が万が一の時に解体できないという可能性の考慮があるのかもしれませんけど。

なお、上記記事には続きがあって、このお約束の様々なバリエーションも書いてあります。その中に私の持つ疑問もw:

Wire Dilemma

知られたバリエーション:

  1. 指示された色のコードが存在しない
  2. すべてのコードの色は同じ
  3. 数百本のコードが爆弾にある
  4. コードを切ることは引っ掛け
  5. 主人公は色盲
  6. 手順書を読む助手が気持ちをコロコロ変える「うーん、赤かな、青かな・・・緑のコードってある?」
  7. 爆弾解体者が知らない色が使われる(例:モグラ色、オークル色、ターコイズ色、アンバー色等)
  8. 手順書を読む者がこんな事を言う:「手順書によれば、青いコードを切る・・・」(チョッキン)「赤いコードを切った後に」
  9. 誤った色のコードを切ることは爆発には繋がらないが、タイマーの速度を速める
  10. 手順書を読む者が爆弾の形状を尋ね主人公は正確に回答する。しかし、手順書の男は聞き間違いをし、誤った手順を主人公に教える

とあって、これらのバリエーションは既に手垢が付いているみたいですので、ご自身のストーリーテリングでこの「時限爆弾の色付きコードを切るお約束」を使いたい方は違ったアイデアを出したほうが良さそうですね。それにしても、主人公が色盲まで使われているとは・・・(笑)

『ダイ・ハード3』の例

なお、このお約束が出てくるいちばん有名な作品といえば『ダイ・ハード3』でしょうかね。小学校に設置された超巨大時限爆弾を解体するという緊張の場面。意想外の結末なのですが、詳細は実際の映画で。

『ダイ・ハード3』で、時限爆弾を解体するためコードを切る
Die Hard with a Vengeance [Credit: 20th Century Fox]

『名探偵モンク』の例

海外ドラマ『名探偵モンク』では、モンクが時限爆弾のコードを切ることになります。爆弾解体班からの指示は「何色でもいいからとにかくコードを切れ」。つまり、この場面、色は全く関係ないのです。でも、モンクは性格上そんな優柔不断なことができず、時間が刻々と迫る中、赤と青のコードの間で悩みまくります(笑)

『名探偵モンク』で、モンクは時限爆弾のコードが切れない
Monk [Credit: USA Network]

こう見ると、爆弾解体のお約束も様々なバリエーションが生み出されており、その可能性は尽きませんね。

なお、『名探偵モンク』はYouTubeに公式チャンネルがあって、そちらでこのシーンが取り上げられていました。

青いコードを切るのを人々は好む?

なお、海外ドラマ『NCIS』に非常に興味深いセリフが。人々はコードを切るのに「青色」好むんだとか。本当かな? 無理やり理由をつければ、赤は危険な感じがするのかもしれませんね。この辺は多分、心理学者が既に研究してると思う。

見て学ぶんだ、友よ。ほらね、多くの人は青色のコードを好むんだ。

Watch and learn, my friend. You see, most people prefer the blue wire.
NCIS

Wire or コード?

ちなみに、ここまで出てきた英文を読んでこられた方なら既にお気づきかと思いますが、英語ではこのお約束で切られるものは「wire」なんですね。

すると、日本人的に「wire(ワイヤー)」と「cord(コード)」の違いって何なのか疑問が出ますよね。一応ググったところ、下記のスレッドがそのものでした。簡単言えば、コードはアメリカ英語で、wireは1本なのに対し、cordはwireが何本もまとまって束になってるもの。だから、このお約束では切るものは1本の線なので、wireが正しいんですね。

「時限爆弾の色付きコードを切るお約束」の起源

ところで、このお約束がどこから由来しているのかを調べてみたんですけど、確固たる回答はないみたいなんです。

一応、次のMovies Stackexchangeスレッドが題名「”青いコード、赤いコード”の爆弾解体を最初に導入したのはどの映画?」で、それっぽいと思います:

What was the first movie to introduce “blue wire or red wire” bomb disposal?

回答

多くの人々が、『ジャガーノート(Juggernaut)』が「コードのジレンマ」のお約束を使った最初の映画と思ってるようだね。僕は色んな所でこの言及を見つけたよ、アマゾンのレビューからラップの歌詞まで。

Answer

A lot of people seem to think Juggernaut is the earliest film to use the “wire dilemma” trope. I found references to it everywhere from Amazon reviews to rap lyrics.

ということで、1974年公開映画『ジャガーノート』が起源と相成りました。

といっても、そんな映画知らないって人が多いかもね。YouTubeに『ジャガーノート』の爆弾解体のシーンがあったので貼っておきます。

なお、上のスレッドには別回答に面白い情報が書いてあって:

What was the first movie to introduce “blue wire or red wire” bomb disposal?

回答

D・W・グリフィスの1915年の無声映画『The Birth of a Nation(國民の創生)』の「削除シーン」に赤いコード青いコードの爆弾の解体のジレンマがあったんだよ。でもシーンは削除されてしまった、なぜなら白黒映画では色の問題をうまく伝えられなかったんだ

Answer

One of the “deleted scenes” in Griffith’s 1915 silent The Birth of a Nation had a red wire/blue wire bomb defusing dilemma. The scene was cut because the color issue didn’t work in a B&W film

とあって、これが本当なら、アイデア自体は既に白黒映画時代にあって、実際撮影されていたんですね。グリフィスのおっさん、すげー。

最後に

今回は「時限爆弾解体で、赤か青か色付きコードを切る」お約束の大調査でした。それは、ヒーロー達と爆弾魔達との天地開闢から連綿と続く死闘の歴史でもありましたが、目下のところ、赤なのか青なのか(たまに緑も)、ヒーロー側はこの究極の2択を毎回残り数秒のところで辛くも掻い潜ってきているようにも思えます。それがこの先も続くのか、はたまた爆弾魔側の起死回生の秘策が飛び出るのか、今後もこのお約束から目が離せませんね。

次回、映画・海外ドラマでこのお約束が出てきたのなら、白黒映画のために泣く泣く該当シーンを削除した監督が100年前に居たことに思いを馳せてあげてください。それでは〜


カットはカットでも、映像をカットすると・・・↓