『コブラ会』の宣伝

いやー、海外ドラマとか今まで全く見たことなかったんですけど、YouTubeに偶然行ったら『コブラ会』とかいうアメドラを勧められて、ちょっとだけ見てみたんです。だって題名が日本語で謎だったし、更に最初のエピソードは太っ腹にも無料だったんで。そうしたらこれが面白いのなんの。『ベストキッド』って昔の映画知ってる? それの続編らしいんだけど、これが『ベストキッド』知らなくても楽しめるのよ。アンチヒーローモノって言うのかな。通常のドラマって正義と悪が戦って最後に正義が勝つってのが典型的なストーリーだよね。でもこの作品は、その後の悪が這い上がるところを描くの。酒浸りでどん底の生活から。そして、主人公のジョニーの心情が痛いほど伝わってくるの。視聴者はジョニーに感情移入しまくり。さすがに空手の実演シーンは50のおっさんなのでキレはないけど、生徒の子どもたちがド派手な演舞を披露してくれるから、純粋なアクションモノ好きな人でも楽しめるはず。さらには、字幕も英語・日本語すべて揃ってるから、英語勉強にもなるっぽい。自分はTOEIC300点の英語大嫌い人間だったけど、試しに英語字幕で『コブラ会』見てみたら、英語フレーズすんなり覚えられちゃった。Let me tell you somethingって感じ。こんな素晴らしいのに、更に今ならすごい特典があるみたいなの。初めに最初のエピソードだけ無料って書いたけど、いまYouTube Premiumに入会すれば三ヶ月無料で見放題なんだよね。自分も実際全エピソードタダで見ちゃったしw しかもYouTube Premiumは『コブラ会』だけじゃなく、他の色々なオリジナルビデオまで見放題。クドいようだけどもう一回言わせてね、三ヶ月間無料で。登録時クレジットカード人質に取られるけど、三ヶ月経ったら解約すればいいんだし。これってオトクすぎない? しかもだよ、なんとYouTube Premiumは音楽視聴サービスまで付いてくるんだって。うひょー。三ヶ月過ぎたとしても、月たった1,180円。こりゃ入会するしかありませんぜ、皆の衆。

皆さんが上記のようなレビューを見たらどう感じるでしょうか? ステマ? 業者? サクラ? だいたいそんな感じですよね。偶然サービスを知った風に書かれていますが、そんなの嘘八百。明らかにすべてを事前に知った上で、隠れた意図を持って宣伝しています。

「Shill」の意味

こういった行為や人物を英語で「shill」と言うんですね。日本語で言えば「さくら」。

shill

商品を好意的に支持する雇われの人、公平であるふりをしつつ。

A person paid to endorse a product favourably, while pretending to be impartial.

/ʃɪ́l/、シル、汁とは日本語的にはアホな響きだけど、ネット上では頻繁に奏でら(使わ)れます。そういう意味ではネットスラングと言っていいかもしれません。

「Shill」の語源

ところで「shill」の語源を調べると、カーニバルの従業員が客のふりをしてたってことみたいです(笑):

shill

語源

不明。この単語は「carny」経由で英語に入った、元は見世物小屋(カーニバル)で働く人で、呼び物への興味を引き出すため観客の振りをした。

Etymology

Unknown; The word entered English via carny, originally denoting a carnival worker who pretends to be a member of the audience in an attempt to elicit interest in an attraction.

ネットと「Shill」

ただ、カーニバル経由とは言っても、近頃は匿名で活動できるネットとの相性が非常に良いので、ネットで頻繁に聞く単語です。

ちなみに、このshillは商品広告の宣伝だけに限らず、裏の意図があれば幅広く使われます。例えば政治的プロパガンダ。自分がひいきにする政党のことを隠し中立を装って議論に参加し、最終的にひいき政党を擁護するなんかも立派なshill。

逆に、議論相手をshill扱いして非難するのもよくあります。実際、ネット大手掲示板のredditの/r/politicsでは、スレッドの一番最初に次の注意書きがstickyで毎回掲載されるほど:

Personal insults, shill or troll accusations, hate speech, any advocating or wishing death/physical harm, and other rule violations can result in a permanent ban.

shillの決めつけはbanの対象なんです。ちなみに、その横のtrollは「荒らし」の意ですね。

海外ドラマでの「Shill」

海外ドラマでも当然「shill」は登場しますね。

『HOMELAND』から

精神病院に強制入院させられたキャリーはクスリの服用を拒みます。「CIA shill」からは受け取らないと強い言いよう。ここは、裏でCIAに通じている医者ってことですね。

キャリー: I have worked out with my actual doctor, not some CIA shill
『HOMELAND』で、キャリーは精神病院に入れられる
Homeland [Credit: Showtime]

『神話クエスト』から

オンラインゲームが舞台の『神話クエスト』では、ゲームストリーマーが裏で企業から金をもらってゲームをやっていたのがバレて「corporate shill」呼ばわり。さらにdoxまでされます。

『神話クエスト』で、ゲームストリーマーがshillとばれる
Mythic Quest [Credit: Apple TV+]

最後に

今回は「shill」の意味と語源を見てみました。日本語では「さくら」ってことですね。

でも思うんだけどさ、ネット上の意見なんて多かれ少なかれshillだと思う私は、世界を悲観的に見すぎているのかな?

だって、何の裏も意図もない風を装って、更に深い意図が隠されているとか、よくありません? 最近だと、構造が多段になってたりもします。例えば、何の裏もない風を装って、さらに一段深い意図もオープンにしてそれ以上本当に何の裏もない風を装いつつ、その奥底には真の隠れた意図があるとか。こうなると、もうよく分かりませんね(笑)

いずれにせよ、このブログがshillになる可能性は 今の所ないのでご安心を。純粋に「海外ドラマで英語を勉強しよう」ってだけで、それはopen book(容易に知れる)のはずです。

ちなみに、この記事だけは当然shillですよw

というのも、

『コブラ会』の架空サクラレビューを例に「shill」を説明すると称して『コブラ会』を宣伝しようとする隠れた魂胆があります

ほら、多段構造(笑) それでは〜