福沢諭吉の片手落ち

英語を勉強してると次第に理解することの一つに「日本語のカタカナでは英語のすべての音が表現できない」という事実があります。これは、なんとなくは知っていたことなんですが、いざ勉強すると如実に実感できるもんなんです。

ただし、普段日本語の中で暮らしている分には、例えば「ライト」の最初が/l/なのか/r/なのかは分からないし、ぶっちゃけるとどうでもいいのも事実。日本語上では違いは全くないのですから。しかし面白いことに、英語を勉強してると、逆に日本語の「ライト」が発音できなくなる自分がいたりします。/l/なのか/r/なのか分からないと発音ができない体になってしまうのです。その瞬間、我々の持つカタカナの限界に気づくのですが・・・(ひらがな・カタカナは日本語の音を表すために作られたので、英語の音が表せなくても当然なんですけどね)。

その昔、このカタカナの限界に気づいた日本人がいました。それが福沢諭吉です。彼はカタカナの「ウ」に濁音「゛」を合成して「ヴ」を生み出し、/v/の発音に当てることにしたのです。この発想は非常に素晴らしく、個人的には国民栄誉賞ものだと思うんですけど、どうでしょうか? 最低でも、紙幣の肖像かなんかにはしても良さそうな気がします。

ただし、問題が深いのはこの表記が日本国民に周知徹底されなかった点です。それもそのはず、外国人が「violin」と発音した時に、日本人的にはそれが「バ」なのか「ヴァ」なのかは分からないのです。だって、我々の世界にその音は存在しないのですから。そのため「バイオリン」。せっかく諭吉お父さんが発明した「ヴ」も中途半端に使われているのが実態。

だから『SUITS/スーツ』の主人公Harveyが「ハーヴィー」だと思ったら、

『SUITS/スーツ』で、ハーヴィーの初登場シーン
Suits [Credit: USA Network]

『スト2』の敵キャラは「バルログ」ではなく「ガ」なのです(このネタは分かりにくい(笑))

『ストリートファイター2チャンピオンエディション』で、リュウとバルログの対戦画面
Street Fighter 2 Champion Edition [Credit: Capcom]

つまり、「ヴ」に関しては SNAFUなメッチャクチャな状況、かえって混乱してるんですね。多分このために、福沢さんに国民栄誉賞が授与されなかったのかもしれませんね。

あれ?「ヴ」以外は?

ちなみに、もっと言わしてもらうと、冒頭であげた「ライト」の例のように、日本語で表現できない音は/v/以外にもたくさんあるわけです。諭吉っつあんには、どうせならカタカナを魔改造ならぬ魔拡張してもらい、/l/や/r/だけでなく、/s/や/ʃ/等まで表現できるように広げてくれたら良かったのにと思うんですよね。だって、いつもシチュエーション・コメディの略語「シットコム」と書くと微妙な響きになってしまう気がしてるんです(笑)

ちなみに「ラ゜」はあったとのことですね。使われていませんが。

でも、英語の音だけにホーカスしていいのかという別の問題もあったりして、結局現在は「ヴ」だけがあやふやに使われているのが実態。

Child Shitting on the Floor

さて、こんなことを考えるきっかけとなったのが、Redditにあった「この冬はマスクしないといけないかもね」という記事。

Face masks may return amid holiday ‘tripledemic’ of covid, flu and RSV

この中で、Reddit住人は自分達の周りのマスク着用率を報告してるんですが、その中の一人のユーザーのコメントが問題でした:

I was pretty surprised when I went to Wal-Mart and maybe 20% of people had masks on. That means Target probably has like 40% since I’ve never seen a child shitting on the floor over there

dog2dogs

つまり、「ウォルマート」で20%のマスク着用率と自分の経験を話してから、別のスーパーストア「ターゲット」では40%ではないかと予測するんです。なぜなら「ターゲット」では床でshittingする子供を見たことがないから。つまり、「ターゲット」のほうが格が上ってことですね。

ただし、問題はこの動詞のshitです。

別のユーザーが「君はウォルマートでshittingしてる子供を見たことあるのか?」と驚きます:

Wait, you have seen a child shitting on the floor at a Walmart?

Shufflebuzz

そう、スーパーでありがちな床に「座り込む(sitting)」子供のことを指していると思ったら、なんと床で「うんこする(shitting)」子供のことを言っているのでした(笑)

これは明らかに最初のコメント氏の言葉遊びですが、シットでもシットでも両方で意味が通じる文にしてるのが秀逸ですよね。

なお、アメリカンシットコム『スーパーストア』には、実際床でshitする子供が出てきます。だからシットコム。

『スーパーストア』で、床で糞するガキ
Superstore [Credit: NBC]

最後に

というわけで、この記事には結論らしいものはないのですが、こんなブログをやってるとカタカナが不便だと感じることが多いので、なんとかならないかなーという話でした。よく、正しい表記は「プログラマ」か「プログラマー」かみたいな本当に糞どうでもいい話がありますが、こっちの嫉妬問題のほうが解決しがいあるよと個人的には言いたいです。みんな、don’t give a sitなのかもしれませんけどね。それでは〜


piece of shitなら・・・?↓