「Double Down」のイディオム的意味とは?

Double Down」はギャンブルのブラックジャックから来たイディオムだそうです。掛け金を倍にする代わりに、もう一枚カードを引く権利が得られるのだとか。

Always double down on a pair of aces.

Desperate Housewives

エースのペアなら手札の合計は2か12のどちらかですから、もう一枚引いたほうが絶対お得です。21を超えることはないのですから。つまりダブルダウンするべきシチュエーション。

次は『ブレイキング・バッド』で、ウォルターがブラックジャックの練習をしている場面。手札の合計が11なので「double down」すべき状況。

ウォルター: Next decision is whether to double down or not.
スカイラー: Which you should be doing.
ウォルター: On an 11, yes. Double.
『ブレイキング・バッド』で、ウォルターとスカイラー夫妻はブラックジャックの練習
Breaking Bad [Credit: AMC]

ギャンブルでの意味には難しいところはありません。

さて、このイディオムが面白いのはもう一つの意味の方。

それを説明するため、たとえ話をさせて下さい。

歴史学者が自分の理論を述べるとします。そうですね、ここでは邪馬台国近畿説としましょう。「邪馬台国は近畿にあった」とテレビで主張した後、中国内で新たな古文書が発見されたとします。その古文書には邪馬台国までの行き方が正確に述べられていたとして下さい。学者がその通り辿ってみると、なんと九州にたどり着いたではないですか! つまり、学者の信じる邪馬台国近畿説が否定されてしまいました。でもこの歴史学者はそこで降参しないで、近畿説を更に強く主張(double down)するんですね。例えば、「当時の中国の測量技術は未熟だから、書かれているルートはデタラメ。偶然が重なって九州に行っただけ!」とか。ちょっと主張が苦しいのですが、何が何でも自説を絶対取り下げないで、逆に更に入れ込むのです。これも実は「Double Down」なんです。

賭けから降りずに更に掛け金を上げてしまうこの状況って、日常生活でもよくありますよね(笑)

上記ニュース記事にこの意味での「Double Down」が使われています。トランプ大統領が国境の壁予算を求めて政府をシャットダウンしている状況で、世論調査では有権者はトランプから離れていってしまいます。しかし、大統領は国境の壁に更に固執して行くのでした・・・。結果は、皆さんご存知の通り

さらにもう一つ別の例。

I jumped to conclusions too when the first carefully edited clip of the confrontation emerged but it’s one thing to render judgment rashly and regret it and another to double and triple down after evidence to the contrary emerges

この記事では「triple down」まで使われていますね。3倍賭け。自説を絶対譲らない感じです。ちなみに、この記事は以前紹介したことのあるネイティブ・アメリカンの老人とトランプ派の若者の対立の話ですね。当初公開された数分バージョンとは違い、後日長時間バージョンのクリップが出てきて、「若者たちも被害者だった」と判明したんです。しかし、最初に若者グループを非難したネットユーザー達は意見を撤回せずに、更に若者への批判を強めていったことを指しています。殺害予告までなされたとか。

海外番組での「Double Down」の例

実は海外ドラマでは、ブラックジャックのダブルダウンはよく出てきますが、そこから派生した自分の主張を更に押し通す的な意味でのダブルダウンって何故かあまり出てこないんですよね。

そんな中、次の『モダン・ファミリー』のシーンでの「double down」は比較的わかりやすいと思います。

ジェイは自分独自のサンドイッチを作りますが、その具が塩っぱくてすごい。グローリアが具の内容に驚くと、ジェイは「アンチョビでdouble down」と更に上乗せした感じです(笑)

グローリア: Turkey, bacon, Swiss cheese, red peppers, anchovies on wheat?
ジェイ: Most people stop after salty bacon, but I double down with anchovies.
『モダン・ファミリー』で、ジェイは自分独自のサンドイッチを開発
Modern Family [Credit: ABC]

最後に

今回はブラックジャックの倍掛けから派生したイディオム「double down」の紹介でした。

このイディオム「double down」は政治家の舌三寸に対してよく使われますが、それ以外でも「自説に更に乗っかかって」れば誰でもOK。日本人にはリアルでdouble downする人はあまりいない気がしますが、ネット上だと匿名がそうさせるのかdouble downしがち。自戒の念を込めて注意したいですね。それでは〜