オリビア・ニュートン=ジョンの『フィジカル』

オリビア・ニュートン=ジョンの名曲『フィジカル』が運動とかエキササイズの歌と思われてると聞いて驚いてしまった。というのも、歌詞を読めばそんな風には全く取れないんですよね。

この曲を知らない人・ピンとこない人向けに、以下公式ミュージック・ビデオを貼っておきます。

このクリップだけだと、オリビア・ニュートン=ジョンがレオタード着てエアロビクスしつつ、デブの男たちを鍛えてる様に見えますが・・・

『glee/グリー』版『フィジカル』

そして、ミュージカル・ドラマ『glee/グリー』でも、この曲は取り上げられていて、オリビア・ニュートン=ジョンとジェーン・リンチ扮するスーが番組内で一緒に歌ってますけど、そちらでもマッチョな野郎どもと一緒にエクササイズするパターンです。でも、これは全て綿密に計算されたカモフラージュなのです(笑)

『glee/グリー』で、オリビア・ニュートン=ジョンとスー扮するジェーン・リンチが『フィジカル』を歌う
Glee [Credit: Fox]

『Physical』和訳

以下、『フィジカル』の英語歌詞の行間を逐次日本語に訳しながら読んでいき、隠されたメッセージを解き明かしていきましょう。

I’m saying all the things that I know you’ll like

私が知ってるあなたが気に入ること全てを私は言ってるの

「私」と「あなた」という二人が登場。なんでも、私は相手が気に入ることを言い続けてるようですね。二人の関係はなんでしょう?

Making good conversation

(無理に)面白い話をしているの

以前も記事にしたように、make conversationは礼儀として会話するの意味。無言じゃ悪いから何か話をしてるんですね。逆に言えば、二人の関係はそこまで深くないことが窺えます。

I gotta handle you just right

あなたをきっちり正しく扱わないとね

gottaはhave got toの略で「〜しなければならない」。「私」が相手をなんとか誘導してる感じ分かるでしょうか? 耳障りの良いことを言ったり、会話を無理やり盛り上げたりして。

You know what I mean

私の言いたいこと分かるでしょ?

「私」は必死に何かを匂わしてるんですね(笑)

I took you to an intimate restaurant

私はあなたをくつろげるレストランに連れて行った

「intimate」はダブル・ミーニング。「場所がくつろげる」の意味の他に「性的関係を持つ」。「私」の意図がだんだん分かってきました。

Then to a suggestive movie

それから示唆に富む映画へ

「suggestive」もダブル・ミーニング。「示唆に富む」の意味の他に「性的に挑発的な」。ここまでくれば「私」の意図は明らか。「私」は相手と今晩一夜を共にしたいのです(笑) 今までそこまで行ってなかったのですね。だから、デート中相手の気持ちを盛り上げようと必死に努力してきたのです。

There’s nothing left to talk about

もう何も話すことは残ってない

映画が終わってもう何もすることがない二人

Unless it’s horizontally

横になる以外は

「horizontally」は水平の意味なので横。つまり、「寝る」ってことを暗に言ってるんですね。

Let’s get physical, physical

I wanna get physical

Let’s get into physical

肉体関係を持ちましょう、肉体関係よ

私は肉体関係が持ちたいの

肉体関係にのめり込みましょう

ここまでくれば、physicalの意味が「体」ではなく「肉体関係」なのは一目瞭然ですね。

Let me hear your body talk, your body talk

Let me hear your body talk

あなたの体がどう反応するか私に教えて、あなたの体の反応

あなたの体がどう反応するか私に教えて、

「let me」で「私に〜させて」の意味。体はtalkしないので、ここでは比喩的に(私のムーブに)どう反応するか教えてと言っているんですね。

I’ve been patient, I’ve been good

私はずっと我慢してきた、ずっと良い子にしてきた

二人の関係がずっとプラトニックだったのが現在完了形で分かります。

Tried to keep my hands on the table

手を出さないように頑張ってきた

英語では、両手をテーブルの上に置いているということは、いかがわしい・やましいことはしなかったってこと。正々堂々。逆にunder the tableは不正や違法の意味合い。

It’s gettin’ hard this holdin’ back

これを抑制するのが難しくなってきた

ここのthisは自分の気持ちですね。だから、デートをしてる今日こそは行動を起こそうと躍起になっているのです。

If you know what I mean

私の言いたいこともし分かるのなら

I’m sure you’ll understand my point of view

私の考えを分かってくれるはず

We know each other mentally

精神的にお互いのことは知ってる

You gotta know that you’re bringin’ out The animal in me

あなたは知るべきね あなたが私の中の獣を引きずりだしたことを

ということで、この歌『フィジカル(physical)』は今までおとなしくしてきた女の子が今日こそは二人の関係を前進させようとしている曲なのでした。

ほらね、 エクササイズの曲じゃ全然ないでしょ(笑)

“Physical” by Olivia Newton-John

夜を通して、彼女は彼に「肉体関係」を持ちたいとヒントを送り続ける。そして、そのレベルで彼に心を奪われている彼女は、根本的に彼に飛び掛かりたい衝動を抑えねばならない。実はこの曲が最も際立つ要因は、これに共感したのが女性だったのだ。

Throughout the night she is sending him hints that she indeed wants to get “physical”. And she is so attracted to him on that level that she has to refrain herself from basically jumping on top of him. Indeed perhaps one of the most-striking elements of this song is that it is actually a female who is relaying these sentiments.

いくら現在は性に開放的なアメリカといっても、当時は1980年代初頭、女性が主導的に肉体関係を求めるはちょっとしたタブー。しかし、『フィジカル』を聴いた当時の女の子たちは、心の底でこの曲を密かに支持したのでした。ある意味、この曲はそういった潮流を作った魁と言っても過言ではないかもしれません。

そして、その刺激的内容の歌詞故、一部の地域ではこの曲は禁止されてしまったらしいですね:

Physical (Olivia Newton-John song)

この曲の示唆的な歌詞、それは一部市場で禁止された、はニュートンジョンの長く続いた清潔感のある印象を変えるのに役立っだ、セクシーで積極的な人格、それは続くヒット曲『ムーヴ・オン・ミー』と『運命のいたずら』で強化された。

The song’s suggestive lyrics, which even caused it to be banned in some markets, helped change Newton-John’s longstanding clean-cut image, replacing it with a sexy, assertive persona that was strengthened with follow-up hits such as “Make a Move on Me”, “Twist of Fate” and “Soul Kiss”.

『フィジカル』トリビア

なお、今回調べていて興味深かった事実を以下列挙:

Physical (Olivia Newton-John song)

この曲は当初ティナ・ターナーに提供されたが、彼女はこれを辞退

The song had also been offered to American singer Tina Turner by her manager Roger Davies, but when Turner declined

そのままティナ・ターナーだったら、どうなっていたのか?

Physical (Olivia Newton-John song)

ニュートンジョンの当時のマネージャーがこの曲を偶然耳にした時、彼は即座に彼女にこの曲を送った。しかし当初、彼女はこの曲を歌いたくなかった、というのもこの曲があまりにも「cheeky(生意気)」だったから。

When Newton-John’s then-manager Lee Kramer accidentally heard the demo, he immediately sent the song to her, but initially she did not want to release the song because it was “too cheeky”

と、オリビア・ニュートン=ジョン本人も当初拒否っていたのでした(笑) まあ、確かに、時代背景と女性主導の内容を鑑みれば「生意気」に感じるのかもね。

“Physical” by Olivia Newton-John

しかし、次第に彼女はマネージャーの強い勧めに屈服することとなる。最終的には、この曲『Physical』はオリビアの歌手人生の中で代表作に落ち着いたのだ。

However, she did eventually give in to the urgings of her manager. At the end of the day, the song ended up becoming the signature song of Olivia’s career.

と、マネージャーが更にプッシュしてくれたおかげで今日があるようです。あとは知っての通りですね。

最後に

今回はオリビア・ニュートン=ジョンの『フィジカル』が運動の歌ではないことを示したくて記事にしちゃいました。

You know what I mean?

それでは〜


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